精神科・心療内科への受診を迷っている方へ

原因不明の体調不良が続いている場合、真っ先に「うつ」または「うつ病」という病名を思い浮かべる方は少なくないでしょう。

少し前になりますが、うつ(うつ病)は「こころの風邪」と言われ、今やうつ(うつ病)は誰もがかかる可能性がある国民的な病気となりつつあります。

「うつ(うつ病)」とはどのような病気なのでしょうか?

確実に言えることは、それが「脳の病気である」ということです。

しかしながらうつ(うつ病)の診断においては、脳の状態からではなく、起こっている現象(=症状)から病名がつけられます。
今のところ、残念ながらうつ(うつ病)の根拠となるバイオマーカー(診断のための生体内の状態を示す指標)はありません。

では、うつ(うつ病)ではどのような症状が表れるのか以下にまとめてみました。

うつ病・うつ状態では段階によって症状が異なる

1.うつ(うつ病)の初期段階は身体症状が現れる ~自立神経バランスの崩れ~

よく眠れない・朝早く起きてしまう・夢ばかり見て熟睡できない・一日中眠い・風邪の症状が続く・微熱・動機・吐き気・頭痛・頭のしめつけ感・肩や首の凝り・身体の痛み・口の中の違和感・喉の詰まり・異様な疲れ・だるさ・めまい・汗・性欲減退・食欲減退または食欲増進・体重減少または体重増加・胃腸障害など

2.次の段階は精神症状が現れる ~脳の機能障害が進んで深刻化~

考えがまとまらない・判断や決断ができない・物忘れ・不注意・集中が続かない・文章が理解できない・言葉が出にくい・グルグル考える・朝が辛い・すぐにイライラする・すぐに涙が出る・感情がなくなる・楽しめない・興味や関心がなくなる・意欲が出ない・死にたい気持ちなど

3.最終段階では行動や生活が障害される ~周囲の人が病気に気づく~

仕事でミスが増える・家事が出来ない・趣味が楽しめない・風呂に入ることや着替えができない・電車に乗れない・会社や学校に行けない・電話に出られない・メールの返信ができない・人に会いたくない・ベッドから出られない・歩くのが遅くなるなど

以上のことからうつ(うつ病)とは様々な症状の集まり(=症状群)のことを指しており、単一の疾患ではないことがお分かりでしょう。
うつ(うつ病)に限らず精神科医療では、DSM5(精神障害の診断と統計のマニュアル第5版)やICD10(国際疾病分類第10版)といった世界的に共通の診断基準によって客観的な診断ができるようになっています。

うつ病セルフチェック

以下にうつ(うつ病)のチェック項目を挙げていますので、簡単にセルフチェックをしてみましょう。

  1. ほぼ一日中憂うつな気分で過ごしている。
  2. 仕事や趣味に興味や喜びが感じられない。
  3. 食欲が低下(または増加)している。
  4. 不眠(または過眠)がある。
  5. 動作が鈍く家事などをするのが辛か、または落ち着きがなくイライラしている。
  6. 疲れていて気力がない。
  7. 自分を強く責めたり、自分には価値がないと思ったりする。
  8. 集中力や決断力、思考力が低下している。
  9. 自分を傷つけたいとか、自殺したいという考えにとらわれる。

いくつチェックがついたでしょうか?

結果の判定は、1と2のいずれか1つと、さらにその他の項目を合わせて5つの項目2週間以上の期間ほぼ毎日続いている場合にうつ(うつ病)ということになります。

うつ(うつ病)かもしれないと分かったらどう対処したら良いでしょうか?

実のところ、うつ(うつ病)と判明したところで、現在の状態を精神科的に説明したにすぎず、根本的な問題の在り処が分かったことにはなりません。

シンプルなうつ病を除けば、うつ(うつ病)を引き起こしている根本のところはもっと複雑です。
背後に何らかの根本的な問題があると考えなければいけません。

例えばうつ(うつ病)は、背後にもっと大事な問題があるということを知らせている目覚まし時計のアラームだと捉え直してみたらどうでしょうか。
目覚まし時計を止めただけでは、アラームを鳴らした意味がありません。
アラームに気づいて次の行動に取り組んでこそ初めて意味があるのです。

うつ(うつ病)も同じです。
 
ではうつ(うつ病)の背後にある問題とは何でしょうか。
もちろん問題は単純なことではないのですが、抗うつ薬で効果があるかどうかということが、最初の判別ポイントになる可能性があります。もし効果があれば、薬の効くシンプルな“うつ病”ということになりますが、薬の効果がなければ、さらに別の問題として「発達障害」や「双極性障害」を考える必要があるでしょう。

ここで大事なことは、診断名が明らかになったとしても問題が解決したことにはならないということです。病名はいわば単なる記号にすぎないからです。いわゆる“精神的な病気”は、生物学的な要因(生まれもっての素質や遺伝的な要因など)と社会・心理的な要因(社会的な環境など)の交わるところで生じます。

車に例えれば、高性能のスポーツカーが舗装もされていないような田舎道を生活のために走ったとしても、性能が活かされないだけではなく、故障(不適応)を起こしてしまうようなものです。スポーツカーは、サーキットを高速で走ってこそ本来の持ち味が生かされるのです。

人も同じです。生まれ持っての気質や特性だけで障害や病気になるのではなく、そこに心理・社会的な要因(ストレス)が合わさって生じるのです。

 “病気”を理解するためには、個人と個人を取り巻く環境全体を視野に入れ、全体を丁寧にみていかなければなりません。さらに治療では、症状の消失だけを目標としがちですが、症状だけを見つめていては治療を誤ってしまいます。症状は結果に過ぎませんから、ある程度症状が落ち着いたらそれを引き起こすことになった原因や過程をしっかりと振り返る必要があります。

特に、家族関係や夫婦関係の問題のような“心理・社会的な要因”には目をつぶりたいような現実が詰まっていることが多く、これをひも解くことは、心理的な抵抗が生まれたりして困難になりがちですが、治療では特に大事な部分になります。

うつ(うつ病)の背後にある問題とは何でしょうか?

問題の特徴についてよくみていきましょう。

  • 過去のことをグルグル考え続け、そのことから離れられない。[強迫性]
  • 小さなことにも敏感に反応する。[過敏性]
  • 些細なことにもイライラして怒りっぽい。[過敏性]
  • 人目が異常に気になる。[過敏性]
  • 何事にも被害的である。[自己批判]
  • 何事も極端に悪く考えてしまう。[思い込み]
  • いつまでも一つのことに拘り、切り替えが苦手である。[強迫性]
  • 将来を悲観的に考え、不安に思ってしまう。[先読み]
  • 現実を歪んで捉え、時に妄想的になる。[深読み]
  • 一方的に~に違いないと思い込んでしまう。[深読み]
  • 行動や思考に強迫的な傾向がある。[強迫性]
  • 物事の理解が極端である。[白黒思考]
  • 曖昧さが苦手で、物事をはっきりさせたい。[白黒思考]
  • ~すべきと強固に考えて自分に負荷をかける。[べき思考]
  • 他人のちょっとしたミスや不正が許せずに異常に腹が立つ。[べき思考]
  • 同時に複数のこと(マルチタスク)ができずに混乱する。[シングルフォーカス]

いかがでしょう?

何事においてもネガティヴで、視野が狭く、過度で、徹底的になっていることにお気づきでしょうか。

ストレスが増大するにつれ、このような傾向は次第に強固になり、仕事や人間関係といった外的な環境への適応が難しくなるのと同時に様々な症状が現れるようになるのです。

この時、多くの方が「自分の性格が良くないから」「やる気がないから」などと自分自身を責めてしまいがちですが、思考や行動など、私たちに現れている現象のすべては脳内の神経活動の結果ですから、脳の働きが柔軟性を失ったことが原因で状況にふさわしい対応が取れなくなっていると考えてみてはいかがでしょうか。

問題は、一方づいてしまった脳の動き方(脳の機能不全)であって、決して自分自身を責めるようなことではないのです。

どう治療するのか

一般的な治療の多くは、薬物療法、認知行動療法に代表されるような心理カウンセリングの手法、SST(ソーシャルスキルトレーニング)、環境調整などを組み合わせて行われます。
最近ではマインドフルネスという第三の認知行動療法も盛んに取り入れられているようです。

一方で、精神科医療はこの10年ほどの間に大きな変化を遂げました。

その一つにTMS療法(経頭蓋磁気刺激療法)があります。
TMS治療が2008年にFDA(アメリカ食品医薬品局)に認可を受けたことで、確実に治療法の選択肢が増えました。

TMS療法は、磁気刺激で直接脳の神経細胞に働きかけて、強固になってしまった脳の神経の可塑性(柔軟性のある働き)を回復させる治療法です。
薬物療法で効果のなかった方にとっては、この新しい治療法は、回復が期待できる新たな治療の可能性です。

当院では、従来の薬物療法やカウンセリングに加えこのTMS治療も取り入れており選択することが可能です。
TMS治療の経験豊富な医師が、治療の適応かどうかをしっかりと見極め、治療方針についても納得できるように説明します。


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