リーゼ

リーゼ錠は田辺三菱製薬から発売されている抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)です。

リーゼは安定剤として、軽度の不安を持つ方に良く使われるため精神科・心療内科以外でもよく処方されるお薬の1つです。

リーゼの効果や特徴、副作用などをご紹介しましょう。


リーゼの強さと特徴

リーゼは、数ある抗不安薬の中では効果が最も弱めのお薬の1つです。

効果が弱い反面、副作用が目立たないのも特徴です。

不安症状が強い場合には、リーゼでは効果がないこともあるかもしれません。

抗不安薬作用時間(半減期)抗不安作用
グランダキシン短い(<1h)
リーゼ短い(~6h)
デパス短い(-6h)+++
ソラナックス
コンスタン
中(14h)++
ワイパックス中(12h)+++
レキソタン
セニラン
中(20h)+++
セパゾン中(-21h)++
セレナール長い(56h)
バランス
コントール
長い(-24h)
セルシン
ホリゾン
長い(50h)++
リボトリール
ランドセン
長い(27h)+++
メイラックス超長時間(-200h)++
レスタス超長時間(-190h)+++

リーゼの適応疾患

添付文書では以下の適応疾患があげられています。

効能又は効果

  • 心身症(消化器疾患,循環器疾患)における身体症候ならびに不安・緊張・心気・抑うつ・睡眠障害
  • 下記疾患におけるめまい・肩こり・食欲不振
  •  自律神経失調症

  • 麻酔前投薬

最初にある「心身症」とは、精神的なストレスによって身体の病気の症状がでてしまうものをいいます。

代表例としては胃潰瘍や喘息、狭心症などがあり、何らかの精神的ストレスで胃がやられたり、喘息発作がでてしまったり、胸が痛くなるなどの症状がでてしまうのです。

いずれも身体に疾患があるのですが、精神的ストレスによって誘発されたものとして心身症といいます。

例えば、心身症としての胃潰瘍であればピロリ菌だけが原因になるのではありませんので、必要であれば除菌したり胃薬で治療はするものの抗不安薬も併用したりするわけです。

次に、肩こりへの有効性ですが、これはリーゼには筋弛緩作用きんしかんさよう(筋肉をほぐす作用)があるため、凝り固まった首や肩の筋肉をほぐしてくれます。

最後の麻酔前投薬とは、手術前に内服することで手術の緊張を和らげる目的に使用します。

リーゼの用法と半減期

まずは添付文書を確認してみましょう。

用法及び用量
用量は患者の年齢,症状により決定するが,通常成人にはクロチアゼパムとして1日15~30mgを1日3回に分けて経口投与する.
麻酔前投薬の場合は,就寝前または手術前にクロチアゼパムとして10~15mgを経口投与する.

基本的に一日に3回に分けて内服するお薬になりますが、これはリーゼの半減期(血液中の濃度が半分に減ってしまうまでの時間)が約6時間であり24時間にわたって効能を示すわけではないためです。

逆に不安発作時のみの頓服とんぷくとしても良いでしょう。

頓服の場合には、不安発作がでてしまってからよりは、予期不安(不安が起こりそうと感じること)のあったときに飲むことで発作を防ぐことが可能かもしれません。

リーゼ錠の規格「5mg錠、10mg錠」

リーゼには5mg錠と10mg錠の規格があります。

リーゼの用法は「15mg~30mgの量で使用する」のが添付文書による使用方法ですがもちろん少なくて悪いということはありません。

ただし、効果の実感がわきやすい、平均的な使用量としては15mgです。

安定剤、抗不安薬は副作用として眠気やだるさがでることもありそれが心配な場合には15㎎以下(例えば10㎎錠)で開始して徐々に増やすのも良いでしょう。

用法の最大量30㎎を超えて内服している方がまれにいらっしゃいますが、効果がないばかりでなく耐性や依存形成のリスクを伴うのでこの場合には不安に対して抗うつ薬や抗精神病薬をベースに治療をした方がよいでしょう。
主治医と再度相談することをおすすめします。

参考:リーゼの作用機序

リーゼは「ベンゾジアゼピン系」の抗不安薬であるため、チョコレートにもありますGABAへの作用を介してストレスに対して効果を発揮します。

具体的にはGABA受容体ギャバじゅようたい <リーゼの作用>

  • 軽い抗不安効果
  • 非常に軽い筋弛緩効果
  • 非常に軽い催眠効果(睡眠薬としての作用はほぼない)
  • 抗けいれん効果はほとんどない

リーゼの副作用

リーゼの副作用と離脱症状
リーゼはベンゾジアゼピン系抗不安薬の中でも弱めの作用ですので、副作用は基本的に目立ちずらいのも使用のしやすさであります。
以下に代表的な副作用を示します。

眠気、だるさ、ふらつき、めまい

リーゼには弱い催眠効果、筋弛緩効果があるため、眠気やだるさ、ふらつきを感じてしまうことがあります。

基本的には飲み初めに多くしばらく飲み続けていると慣れてきてそのうちきにならなくなってしまうことが多いです。

それでも改善しない場合、リーゼの量を減らすことで対応できます。

初期投与量は15㎎からなのですが、10㎎からに一度減らしてそこから1,2週間後に15㎎にすることで気にならなくなる可能性があるでしょう。

耐性・依存性

耐性とは同じ量を飲んでも効果が出にくくなってしまい、次第に同じ抗不安作用を得るためには量を多くのまなくてはいけなくなることをいいます。

一方依存性とは、リーゼに依存してしまい、なしではいられなくなってしまうことをいいます。

基本的には用法を守って飲んでいれば問題になることはあまりないのですが、自己調整しやすいお薬であるため用法を無視して1日に何度も飲んだり大量服薬していたり、アルコールもたくさん飲む方の場合には問題になります。

服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。

物忘れ(健忘)

飲んだ後、ぼーっとしてしまいその後の行動を忘れてしまうことを健忘といいます。
数時間で効果が切れてくると元に戻りますが、リーゼなどベンゾジアゼピン系のお薬を長く使っている高齢者は認知症を発症しやすくなる、という報告もあります。

リーゼの副作用まとめ

主な副作用

倦怠感、眩暈、歩行失調、霧視、頭痛、頭重、手足のしびれ、耳鳴、血圧低下、立ちくらみ、頻脈

重大な副作用

譫妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想、離脱症状、肝機能障害、黄疸、AST上昇、ALT上昇、γ−GTP上昇、LDH上昇、Al−P上昇、ビリルビン上昇、薬物依存、痙攣発作

上記以外の副作用

悪心、嘔吐、食欲不振、胃痛、便秘、口渇、発疹、皮膚かゆみ、易疲労感、脱力感、筋緊張低下症状、筋痛、関節痛、眠気、ふらつき、舌のもつれ、浮腫

添付文書「副作用」

総症例数14,032例(糖衣錠、顆粒)中692例(4.93%)883件の副作用が報告されている。主な副作用は眠気390件(2.78%)、ふらつき109件(0.78%)、倦怠感57件(0.41%)等であった(国内文献及び効能追加申請資料[自律神経失調症]等の集計−再審査対象外)。
1.重大な副作用
1).依存性(まれに:0.1%未満、ときに:0.1〜5%未満):連用によりまれに薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し慎重に投与する。また、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、まれに痙攣発作、ときに譫妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想等の離脱症状が現れることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行う。
2).肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明):肝機能障害(AST上昇(GOT上昇)、ALT上昇(GPT上昇)、γ−GTP上昇、LDH上昇、Al−P上昇、ビリルビン上昇等)、黄疸が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行う。
2.その他の副作用
1).精神神経系:(5%以上又は頻度不明)眠気、ふらつき、(0.1〜5%未満)眩暈、歩行失調、霧視、頭痛・頭重、振戦、手足のしびれ、(0.1%未満)舌のもつれ。
2).循環器:(0.1〜5%未満)耳鳴、血圧低下、立ちくらみ、頻脈。
3).消化器:(0.1〜5%未満)悪心・嘔吐、食欲不振、胃痛、便秘、口渇。
4).皮膚:(0.1〜5%未満)発疹、皮膚かゆみ。
5).骨格筋:(0.1〜5%未満)易疲労感・倦怠感、脱力感等の筋緊張低下症状、筋痛、関節痛。
6).その他:(0.1%未満)浮腫。

リーゼの離脱症状

長期間、大量にリーゼの内服を続けていると、無理にやめようとすると気分が悪くなったり、イライラしたり、頭痛や震え、発汗が出現したりと様々な症状が起こることもあり、これを離脱症状といいます。

離脱症状とは?

リーゼは抗不安薬の中では依存を起こしにくいのですが、絶対に起こさないわけではありません。

依存形成された状態で無理にやめたり減らしたりすると以下のような離脱症状を起こします。

離脱症状

  • 落ち着きのなさ、イライラ、緊張
  • 頭痛、肩こり
  • 吐き気、悪心、動悸、震え、発汗

ただし必要な期間のみ、必要な量のみの内服であれば起こさないことがほとんどです。

リーゼは離脱症状の頻度は低め/h4>
離脱症状は、お薬の特性によって起こしやすさが決まっています。

以下のようなお薬は離脱症状を起こしやすくなります。

  • 半減期が短い
  • 効果が強い/li>
  • 量が多い
  • 内服期間が長い/li>

リーゼは、半減期は6時間ほどと短いものの、効果は弱いため離脱症状を起こす頻度は少ないはずです。

基本的にたくさんのリーゼを長期間飲むのでなければ問題はないでしょう。

離脱症状の対処法

離脱症状がが疑われる場合、でも基本的には様子をみていればおさまることがほとんどです。

離脱症状のピークは1-2週間程度です。

離脱症状の程度が軽くて日常生活に支障を来さなければ経過を見るのが良いでしょう。

もし日常生活に支障をきたす場合には、もともと飲んでいた量を服薬することでおさまります。

その後、ゆっくり減らしていく工夫をすることで離脱症状を起こさず減薬は可能です。

リーゼのジェネリック医薬品「クロチアゼパム」

クロチアゼパム
最初に開発し、承認後に発売する許可を得た新しい薬効成分を持つお薬を「先発医薬品(新薬)」といいます。

先発医薬品の開発には、十数年にもおよぶ長い研究期間と莫大なコストがかかります。
ほとんどが海外メーカー含め大手の医薬品メーカーに限られてしまいます。

先発医薬品を開発した企業は、医薬品の構造や製造方法、用途について特許権を取得し、特許期間中の20年間はその薬の製造・販売を独占することができます。

先発品の特許が切れ(開発中に特許を取得するので、販売後10年前後で特許切れになることが多い)、他の医薬品メーカーがその技術を借りて製造・販売したものを「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」といいます。

ジェネリックの3つの特徴をみてみましょう。

1.薬価が安い

先発品に比べてジェネリック医薬品の方が薬価が安いというメリットがあります。
処方箋の「後発医薬品に変更不可」の欄にチェックと医師のサインがされてなければ、自動的に薬局でジェネリックに変更されて出されることが多いはずです。

クリニックによってもしくは医師によってジェネリックに対する考え方に違いがありますが、今は基本的にジェネリック医薬品を可としていることが多いと思います。

リーゼ・クロチアゼパムの薬価

リーゼ細粒10%:98.9円

  • リーゼ錠5mg:6.3円
  • クロチアゼパム錠5mg:5.6円

  • リーゼ錠10mg:10.9円
  • クロチアゼパム錠10mg:8.1円

2.成分は同じでも製造方法は違う

ジェネリック医薬品は先発品と成分は同一ですが、コーティングが異なるので苦みの感じ方や飲み安さが異なることがあります。

ただし同じ薬効のはずなのですが、ジェネリックに切り替えることであまり調子が良くなくなったとか、副作用が出たということもなくはありません。

これはお薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
もちろん先発品と同じように効果の試験をクリアし、血中濃度の変化(薬物動態)も同等になるように設計はされています。

もちろん同じ成分であっても、「ジェネリックで大丈夫なのかな?」と精神的な影響もあるとは思います。

本当に同じ成分・同じ薬効?

先発品の持つ特許のうち、新しい成分に与えられる「物質特許」、その成分に対する新しい効能・効果に対して与えられる「用途特許」の2つの特許が切れてジェネリック医薬品を製造・販売することができるようになります。

ところがあくまでその成分の存在と効能の特許技術を利用するのみであり、先発品が持つ他の特許(例えば製造方法に与えられる「製法特許」、薬を製剤する上での工夫「製剤特許」など)も存在します。

有効期間が残っている場合もありますし、ここまで技術を借りるとジェネリック医薬品なのに先発品と変わらない価格になってしまうかもしれません。

とすれば製造方法や薬のコーティング部分に使われる添加物などを完璧に先発医薬品と同じにすることが実はできないのです。

同じ主成分が同じ量だけ入っていたとしても、実際には薬が吸収される速度や、有効成分が分解される状態が先発品とは多少異なる可能性があるのです。

これによって「効果」や「副作用」の違いが出うるのです。

それでもジェネリック医薬品が先発医薬品と変わらない効果をうたっています。

「有効性の試験」において統計学的に15%の差は「差が無い」としているので、厳密には10%前後の差異があるものとみなした方がよいのです。

3.間違えやすいお薬名

外来で飲んでいる薬のことをたずねると「アメルです!」とお答えいただきますが、「アメル」はジェネリック医薬品の販売メーカー名であり、お薬の名前ではありません。



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