新たな治療の選択肢「磁器刺激治療」の有効性と治療におけるこだわり

経頭蓋磁気刺激治療けいずがいじきしげきちりょうは「TMS治療」の名前で知られている新しいうつ病治療の選択肢のひとつです。

よく電磁波と考えている方もいらっしゃいますが、磁石です。
修正型電気けいれん療法(mECT)とも原理はまったく異なります。

日本では保険適応はないため、行っている施設はかなり限られておりさらに治療費も自費になります。

効果については、薬物抵抗性うつ病(薬で効果がいまいちなうつ病)に対して特に有効です。

当院のTMS治療

薬を使わない最新うつ病治療機器「磁気刺激治療」とは?

正式には経頭蓋磁気刺激治療けいずがいじきしげきちりょう(Transcranial Magnetic Stimulation; TMS)といいます。

磁気刺激治療は、2012年にNHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」で、アメリカのクリニックでのTMS治療が報道され一躍有名になりました。
残念ながら日本ではまだ保険適応はなく、この治療を受けることができるのは限られた施設のみで自費診療の扱いになっています。

どんな治療か想像もつかない方、英語の動画になってしまいますがご確認いただければと思います。

実際の治療風景は1分58秒くらいから見れます。

この動画はニューロスター®というTMSの治療機器のデモビデオです。
簡単に動画で何を言っているか解説しますと、


  • TMSは医師による処方が必要で、1回の治療は約37分、外来治療で行えるものです。約30セッションを行い、治療には麻酔なども必要としません。
  • 最初に磁気を当てて治療する部位を探ります。これは脳の運動野と呼ばれる顔や体、手足の筋肉を動かす指令をしているところで、ここに磁気を単発で当てて親指が動くところを探します。このときどの程度の磁器の強さで当てればいいかも測定します。
  • 治療部位はそこから約5㎝ほど前方です。
  • 1回の治療で磁気を3000ショット照射します。
  • 治療後はそのまま帰宅できます。

磁気刺激治療(TMS)の特徴-長所と短所-

長所短所
薬物療法に反応しない患者さんにも効果が期待できる治療である通院が必要である
抗うつ薬にみられる副作用がない磁気刺激時に痛みを伴う事がある
認知機能の改善が期待できる現在国内では、健康保険を利用できない(自費診療)
電気痙攣療法ECTのような、静脈麻酔や筋弛緩薬などを必要としない
再発率が少ない
効果を実感しやすいことが多い

磁気刺激治療(TMS)の長所

磁気刺激治療(TMS)は、薬物療法に効果が出ないうつ病の患者さんにとって効果が期待できる治療法で、抗うつ薬による副作用で十分な投与量を服薬できない患者さんにとっても有効です。

たとえば、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬)などに伴いやすい一般的な副作用(眠気・悪心・嘔気)や三環系抗うつ薬に見られやすい副作用(眠気・口渇く・便秘・起立性低血圧・尿閉など)、薬を中断・減薬したときに起こる離脱症状は、磁気刺激治療(TMS)では起こることはありません。

このように、副作用以外にも肝機能・腎機能に関する障害があって薬物療法の使用に制限があるような患者さんには、磁気刺激治療(TMS)が治療の選択肢としては有用性があると言われています。
また磁気刺激治療(TMS)はうつ病の改善だけでなく、認知機能の改善にも効果的であるという報告があります。

磁気刺激治療(TMS)の短所

もちろん磁気刺激治療(TMS)が万能というわけではありません。

個人差はあるものの磁気刺激治療(TMS)は、刺激時の痛み(きつつきにつつかれるような?)が生じる場合があります。
これは頭痛というよりも、磁気刺激の直接的な作用による神経刺激や筋収縮に伴う症状と理解されています。

痛みを伴ったとしても、ほとんどの患者さんが我慢できるレベルであり、治療を繰り返していく中で刺激時の痛みは徐々に緩和し、違和感は慣れてくると言われています。

他には、磁気刺激治療(TMS)は外来通院型の治療ですので、時間的な負担が伴います。
現在の標準的な治療の方法は、一回あたりの治療時間が約37分、週5回の連日のスケジュールで4~6週間の治療期間を要することになっています。

薬の治療であれば、1日に要する時間はさほど負担にはならないので、今後の課題としては、治療時間や治療にかかる期間を短縮し、さらに大きな治療効果が期待できる刺激の方法を見出すことが挙げられています。

一般的な磁気刺激治療(TMS)でのプロトコール(治療計画のこと)は週5回で行うことになっており、このことがかなりネックになりそうですが、治療に要する日数によらず効果があったとする報告もあるのでどうやらこの限りではなさそうです。

最後にまだ日本においては保険適応がないことが挙げられます。現状行うとすれば保険適応外で自費で行うことになるため経済的負担も伴います。

磁気刺激(TMS)機器の現状

磁気刺激治療TNS製品の認可状況

磁気刺激治療(TMS)は2008年にニューロスター®がFDA(米国食品医薬品局)に認可されたのを皮切りに目覚ましく発展してきています。

現在は各国から様々なTMS機器が登場しFDAが認可しています。
韓国製品のTAMASは、韓国のMFDSという韓国国内の医療承認を取得しています。

わが国ではMagstim(英)・Magvita(デンマーク)・TAMAS(韓国)が検査装置としての使用の承認を取得しています。
NeuroNetics社・Brainsway社はうつ病治療専用機器として開発された装置であるため、検査機器としての承認は取得していません。

うつ病治療医療装置「TMS」ようやく承認されたが・・・

過去に、国政モニターで「うつ病治療医療装置TMSが認可されないのはなぜか」という質問が挙げられました。
これに関して厚労省の回答もありますのでご覧ください。

うつ病治療の医療装置TMSをアメリカFDAが認可したのは2009年、EUでは2011年、NHKスペシャルで同装置が紹介されたのは2012年2月である。
日本への早期導入が期待されたが、厚労省の「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」において審議されるも未だに認可されていない。
同検討会は2013年以降ほぼ年1回しか開催されておらず、2015年以降は厚労省のHPで議事録が公開されていない。
以下厚労省に質問したい。

  1. 年1回の開催で同検討会の目的を果たせるのか。
  2. 直近3回分の議事録がHPに掲載されないのはなぜか。
  3. アメリカとEUで既に認可済みの装置が日本で速やかに認可されない理由は何か。

この状況から察するに、製薬会社の反対と、医療費を削減したい厚労省の思惑が合致し認可を遅らせているのではないか。過去に厚労省が何度も起こしてきた薬害問題と同根の「悪意ある無作為」を感じる。

引用元: H28年度国政モニター:経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)によるうつ病治療装置について

これに対する厚労省の回答は以下の通りです。

厚生労働省では、未承認又は適応外の医療機器等について、欧米での承認実績や論文等で公表された優れた試験成績等のエビデンスに基づいて、我が国の医療ニーズの高いものを迅速に医療現場へ導入するため、「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会(以下「検討会」という。)」を開催しています。

昨年度に、より効率的な検討を進めるため、検討体制、開催回数等の見直しを行い、今後は年4回を目処に検討会を開催することとしています。過去に開催した検討会の議事録は、準備が整い次第、順次掲載します。

ご指摘の経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)によるうつ病治療装置は、平成24年11月14日及び平成25年8月9日に開催した検討会において、2品目が医療ニーズの高い医療機器にそれぞれ選定されました。これを受け、関係企業に対し開発要請が行われ、企業側で製造販売承認申請の検討を進めていただいています。

なお、欧米との承認までの時間差「デバイス・ラグ」は、承認申請時期の差「開発ラグ」と審査期間の差「審査ラグ」からなりますが、後者(審査ラグ)は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の体制強化等により、ほぼ解消されており、課題となっている開発ラグについては、治験計画策定等に関する助言を行う相談事業の充実などにより、その解消に向けて取り組んでいます。

引用元: H28年度国政モニター:経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)によるうつ病治療装置について

Neurostar TMS治療装置の承認

平成29年7月14日の医療機器・体外診断薬部会(医薬・生活衛生局-医療機器審査管理課)の審議でアメリカNeuronetics社のうつ病に対するTMS治療装置「Neurostar®」が高度管理医療機器、特定保守管理医療機器に条件付きで承認されました。

その条件とは以下の通りです。

  1. うつ病に関する十分な知識・経験を有する医師によって、関連学会が策定した適正使用指針を遵守できる医療機関で本品が使用されるよう、必要な措置を講ずること。
  2. 本品が 1 に掲げる医師により適正に使用されるよう、講習等の必要な措置を講ずること。

要は乱用を避け、適切に治療適応を選んでしかるべき医師がしかるべき施設で行いなさいということですね。
しかしながら、保険適応になったわけではなくこの段階ではまだ何ら患者側にとってのメリットはありません。
いちはやく保険適応が進むことを願うばかりです。

当院におけるTMS治療

TMS治療で何をどう治療するのか

TMS治療は、年々多くの論文が発表されてきておりその効果はうつ病にとどまらず多くの状態を改善させます。それは紛れもない事実です。

しかしTMS治療だけが先に売り出されてしまって、しっかりとした方針なくやられていることも多いのが現状でもあります。

私は単純に、「うつ病を治す治療」としてとらえるべきではないと考えております。そもそもうつ病が何たるかもあいまいです。

しかし間違いなく「脳の状態を改善させる」ことは言えます。

「完璧思考、べき思考、ぐるぐる思考」

これらが改善したとき、生きやすさが生まれます。これまで生きづらさを強く感じ、小さなことでも過敏に反応していたのであればそこから解放させることができる治療なのです。

TMS治療の考え方を以下に示します。


  • 治療の前提として、うつ病などの精神疾患は“脳の機能不全”があるということを想定しています。
  • TMS治療は、頭皮の上から磁気を発生させる装置を用いて、反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)で直接脳の神経細胞に働きかけ、脳の神経回路を調節し、強固になってしまった脳神経の可塑性(柔軟性のある働き)を回復させる治療法です。
  • 治療部位は頭部にある左右の背外側前頭前野(DLPFC)です。正確に治療部位を測定して、効率よく治療を行う必要があります。
  • 刺激には高周波と低周波があり、高周波は神経興奮を高め、低周波は神経興奮を抑制します。症状や状態を見極め、それに合った刺激によって適切に治療を進めていきます。

TMS(経頭蓋磁気刺激)治療が効かないとき、理由は必ずある -TMSが効かない4つの理由-

1、それは本当にうつ病ですか?

TMSは元々、薬物療法に抵抗性のうつ病に対しての新しい治療法としてアメリカで2008年にFDA(アメリカ食品医薬品局、日本の厚生労働省にあたる機関)で認可された方法です。

うつ病では、不安や恐怖、悲しみなどを司る扁桃体という部位を制御する役割を持つ脳の左側の背外側前頭前野(DLPFC)の機能が低下していると言われており、この部位に磁気刺激の中でも高頻度刺激(活性化の方向に働く)と言われる刺激を当てることで低下しているDLPFCの機能を活性化させるというのが、いわゆるFDAで認可されたTMSのうつ病に対する治療プロトコールになっています。

つまり、あくまでこのプロトコールでの治療は大うつ病性障害(Major depressive disorder)に対しての治療であり、その中でも抗うつ薬が効かないタイプのものに対しての治療法ということになります。

ところが、「薬物療法に抵抗性のうつ病」と言われているものの中には、通常の大うつ病性障害だけでなく、双極性障害や発達障害がらみのケースが数多くあります。(詳細は以下の記事を参照)

>>薬物抵抗性うつ病とは?

当然のことながら、患者さんたちは通常「私は双極性障害です」と訴えてくるのではなく、「気分が落ち込んだり、不安で何も気力が出ない状態が続いています。」など症状ベースで訴えてくるわけですので、まずはしっかりと大うつ病性障害であるということを診断した上で、TMSの適応の仕方を判断していくべきだということになります。

双極性障害に対して左DLPFCへの高頻度治療を行うなど、適応の仕方を間違えると治療効果が出ないばかりか、逆に悪化することもあり得ます(双極性障害に対しては右DLPFCへの高頻度が適切であるということが言われています)。

2、ちゃんと必要な回数をやっていますか?

アメリカのTMSのガイドラインでは30回の治療+4ヶ月間は必要に応じてメンテナンス治療(再発のケアの為)というやり方が推奨されています。カナダのガイドラインでも最低20回以上の継続治療が推奨されていますので、「ちょっと3回くらいやってみて、効かなかったらやめよう。」というやり方では結局治療効果がしっかり出ない、もしくは再発してしまうことになります。

3、治療部位、強さは正確ですか?

1の項でも書きましたが、うつ病に対してのTMSの治療ターゲットとなる部位は左の背外側前頭前野(DLPFC)になります。この部位は約3㎝²程度の大きさであるため、それだけ正確な治療部位測定が必要になります。

正しい治療部位にコイル(磁気刺激の装置)を当てる一番正確な方法としては、MRIナビゲーションシステムと言われる、MRI画像を撮影して行う方法ですが、そもそもMRIを撮るためには大きな病院に行かなければならず、費用も時間も要することになります。

そのため、簡便な測定技術が今まで開発されてきましたが、その中の一つに一般的に使われている「5㎝ディスタンスルール」という技術があります。この方法は、脳の運動野と言われる側頭付近を刺激し、手指が動いた場所から5㎝前方にDLPFCが存在しているであろうという仮説によるものです。しかし、男女差や国籍間の差、頭のサイズや形状も個々人で異なるため、現在では不正確な技術であるとされています。刺激部位がずれてしまうと、当然のことながら治療効果も悪くなってしまうということになります。また、磁気刺激の強さについても、MT(運動閾値)を筋電図を用いて測定し、治療に適切な強さをしっかり患者さんごとに設定しないと確実な治療は行えないため、重要なポイントになります。

治療部位及び強さがしっかりと事前に測定されていて、しかもそれが正確であること、それがTMS治療が効力を発揮するための条件となります。

4、環境因子、本人自身のストレス適応へのケアはされていますか?

TMSは一言で言えば、脳の機能を回復させる治療法です(薬物療法も一緒ですが)。当然のことながら、本人の置かれている環境、ストレス要因そのものを変えることはできない訳です。

ところが、うつ症状が改善しないことの背景に環境要因、ストレスが絡んでいるケースは数多いため、これらへの対策がなされないまま、ただ漫然とTMS治療を重ねていっても「結局ストレス負荷は変わらないから、うつの症状も変わらない。」ということになりかねません。

もちろんすべての環境要因とストレス要因を排除できるわけではありませんが、治療を進めていく中で、どの環境をどのように調整すればより改善する方向に向かいそうか、本人がストレスに思っている問題についても、とらえ方や考え方次第で軽減できる部分はないか、などのビジョンは提案していきつつ、本人自身の適応を図っていくアプローチがないと、結局はTMSを30回やったけど変わらなかったということにもなりかねません。

TMSでの治療経過を見ると同時に患者さんへの適切な指導、場合によっては家族や職場を含めた環境調整なども行っていける体制が、治療効果を十分に生かすために必要になります。

以上、「TMSが効かない4つの理由」と題してお話ししてきましたが、当院ではこうした要因をできる限り最小限に抑える体制を取っております。もし、今までにTMS治療を受けてうまくいかなかった(もしくは今治療中だがうまくいっていない)経験のある方は、是非ご相談下さい。

Q&A

家内がうつで苦しんでいます。薬は心療内科から十分な種類と量が出ているようですが2年近く改善しません。TMSを試す価値はあると思いますが、経済的に不可能です。保険適用になる可能性はあるのでしょうか。
動画で紹介されているNeuronetics社というアメリカの会社が2014年ごろからうつ病に対するTMS治療が保険適応になるようには動いていますが、医療費の観点からすぐには難しいかもしれません。

とはいっても女性の尿失禁治療に対して使用される磁気刺激治療はすでに保険適応があります。
またパーキンソン病治療に対するTMS治療は東京大学や福島県立大学の神経内科グループが積極的に取り組んでおり、こちらが先に保険適応になるかもしれません。

精神科領域のTMS治療が保険適応になると非常に良いのですが、残念ながら未知数です。
しかしクリニックでもTMSを導入しているところは増えており、仮に自由診療であっても価格競争によって安価になる可能性はあるでしょう。

非常に高い治療ですが、新宿にあるクリニックでTMS治療をはじめました。
双極性障害と診断されており、光トポグフィーでも同様の結果でした。
治療30回のうち、現段階で7回治療を終えましたが、あまり効果が感じられず、不安です。
保証はできないとは思いますが、双極性障害の私に期待ができる治療でしょうか?
お願いします。
TMS治療は自費診療であることを除いて悪い治療ではないと思います。
私自身の経験としても、電気けいれん療法をたびたびやらないと再燃を繰り返していた患者さんがTMS後に電気けいれん療法が不要になった方もいらっしゃいますし、パーソナリティ障害の診断だった方が丸くなり家族とトラブルが減った方もいました。

TMSは通常「大うつ病」に対して用いられる、有効性が証明されている治療です。
しかしながら私自身通常のうつ病には抗うつ薬が効くとも思っています。
つまり抗うつ薬が効く単極性のうつにわざわざ自費診療のTMSを使用するメリットがどの程度あるのかというのが私自身考えているところです。

それよりも、抗うつ薬が効かない薬物抵抗性といわれるうつ病(私も経験しました電気けいれん療法を手放せなかった患者さんやパーソナリティの問題とされていたりする方も含んでいるかもしれない)に対しての選択肢だと思います。

双極性障害も、最近は薬物抵抗性のうつをそのように診断していることが多いなとも思います。
光トポグラフィーで双極性障害パターンにでてもそれが100%双極性障害なのかも甚だ疑問です。
どちらかと言えば、通常の薬物治療に反応しづらいことを確認しただけにすぎないのかもしれません。

さて本題に戻りますが、TMSが双極性障害に効くかでしたね。
ここまででお分かりいただけると思いますが、効果を出せる可能性は十分あります。
もちろんTMSは一般論的には「大うつ病」用の治療機器です。

しかし、薬物抵抗性と言われている精神疾患にTMSを用いた研究は散見されており依存症、発達障害、薬物抵抗性うつなど論文は多数あります。
正式にFDAが認可するほどの論文は出ていませんが、確かに効果があった文献も多数見受けられます。

そして日本では精神疾患以外にも東大ではパーキンソン病に、慈恵医大ではリハビリの補助に使用されていたりもします。
双極性障害が脳の機能異常であるなら、脳の機能を治療することに現段階最も近いTMS機器が、双極性障害と呼ばれている疾患に効果をもたらす可能性は十分あります。

ただし、それが大うつ病に有効とされる左高頻度治療(左の前頭部に10-20Hzで数秒刺激を与える方法)ないしは右低頻度治療(右前頭部に1秒に1回刺激を与える治療)で良いかは疑問があります。
1つの論文では双極性障害に逆の右高頻度治療が有効であったとするものもありますし、依存症や強迫的思考、フラッシュバックなどPTSDがあれば左低頻度が有効であったなどの報告もあります。
このあたりは主治医の先生の経験や見解をよく聞いてみるのはいかがでしょうか?

また、TMSは自身の神経の調整をさせる治療法ですから回数は必要なのだと思います。
ある程度の回数までは何の変化もなく非常に不安だったという声は聞きます。

弊会の病院(神経内科)で導入を検討しています。脳疾患、脳障害の後遺症による身体の運動、言語リハビリまでが主な患者さまになります。うつ、認知症以外の領域でも効果は期待できるでしょうか?
厚労省が先日、米国のNeuronetics社のNeurostarをうつ病の治療機器として承認しました。
これからTMSはうつ病の治療機器として認知されてくると思います。

「TMS=うつ病」のイメージは強いのですが一方で、尿失禁についてはTMSが薬事承認されています。

東大や福島県立医大の神経内科グループはパーキンソン病に対するTMSの研究を進めていますし、阪大は慢性疼痛に対するTMSの有効性、東京慈恵医大は運動麻痺にTMSを用いてリハビリテーションの助けに使用しています。

TMSは薬が触ることのできない神経可塑性(しんけいかそせい)という神経伝達物質とはまた違う部分に影響を与えて脳の機能を調整させることができます。

ご質問通り、すでに運動麻痺には健常側の半球に抑制性信号をいれることで麻痺側との脳機能バランスを取ってリハビリの補助に使えることがわかっていますし、言語野に関しても医療機関であるようですので臨床研究をすすめていくのも多くの人にとって役立つのではないかと思います。

TMSは爆発的な改善を示す治療機器ではなく、ゆっくりとした改善なのでリハビリテーションとの相性は非常に良いのではないかと思います。

私は、交通事故で頭を強打し、頭痛が続き、部署異動 後、うつ病を発病。10年近く抗うつ薬と睡眠薬を飲み続け、2度目のうつを発病し、復職して現在に至ります。完治は難しいのかも知れませんが、子供の為、頑張って仕事しています。
TMSという治療が効果があればぜひ試したい。しかし、家族を養う私にとって自由診療の、値段は高くて無理そうです。
頭を強打しているので、3年後とにMRIを取っています。こんな私がTMSを保険適用で受けれるチャンスはあるのでしょうか?
あと、何年待てば治療を受けれますか?
それとも望み薄ですか?
早く認可される事を望んでいます!
慢性のうつ病に対してTMS治療は有効性はあると思いますが、自由診療であることはやはり抵抗があると思います。
一般的にTMSの禁忌事項として、ペースメーカーや脳内に金属が入っている場合などが挙げられますがMRIが撮れればおそらく治療を施行することは可能かと思います。
頭部外傷ですので、けいれん発作がないことも大事です(TMSでけいれん発作が誘発される可能性は低いもののゼロではありません。)

先日、うつ病治療に対し米国Neuronetics社のNeurostarというTMS機器が日本で医療機器として承認されたばかりです。
今後、TMSの競合他社も承認される流れも出てくるでしょう。

保険診療に入るかどうかはまだ未知数ですが、TMSの競合が増え安価で提供可能になればおそらく認められると思いますが何年くらいかかるかはさすがにわからないですね。

私は46歳の小児科医で、香川県に在住しています。実母が10年前に若年性認知症になり、介護から大うつ病になり、3ヶ月の入院で日常生活には支障ない程度に回復したのですが、不眠症が続き、身体がきついです。
抑うつ症状は、ほとんどありませんが、不眠症の改善にTMSは、効果的でしょうか?

うつ病患者のほとんどで睡眠障害(不眠や場合によっては過眠)を認めます。
基本は薬物治療(SSRIやSNRIなどの抗うつ薬)によってうつ病が改善するとともに睡眠障害も改善するか、場合によっては睡眠薬との併用で対症療法を行います。

ただし、注意すべきこととしてときに抗うつ薬が不眠の原因になっていることがあります(特にSNRI)。
この場合は抗うつ薬の内服タイミングをずらしてみるのもありかと思います。

さて、大うつ病と診断されているお母様の不眠症状がTMSで改善するかですが、ポイントは2点あります。
1つはTMS治療を大うつ病の治療として受けられた場合です。
薬物治療も同様ですが、うつ症状の改善とともに睡眠も良好になる例が多いです。

もう一つは2014年の論文からですが、これは慢性疼痛をもつ不眠患者に通常大うつ病に行われるTMS照射方法ではなく、それとは異なるTMSの照射方法が睡眠に有効であった例が報告されています。

このように不眠が大うつ病の付随症状としてでているのかそうでないか、抗うつ薬の副作用であるかなどで対応は変わるかと思います。

TMS自体が睡眠に有効かというよりは、TMSにより何を改善させることで睡眠状態を良好にできるかがポイントになりそうです。

30才の長男が、2014年に鬱と診断され、抗うつ剤を使わずに休養で回復途中、復職の為の必要で抗うつ剤が開始となりました。
復職はできましたが、復職後服用を2ヶ後位から躁転し、再び休養が必要となり、秋に双極性障害(統合失調感情障害)と診断を受けました。
現在は、気分安定剤と向精神薬の併用で、治療中です。

昨年夏には再度職場復帰したのですが、今年5月頃から、軽躁状態が出始め、向精神薬の増量で症状を抑えるという状態を繰り返しています。
こんな状態が今後も長期間に亘り続くのかと思うと、本人は勿論、家族も将来が不安でたまりません。
TMS治療は、2型双極性障害にも期待はできそうと’かっくん’様へのお返事に書いておられましたが、双極性障害といっても統合失調感情障害という病気にも効果は期待できるのでしょうか?

統合失調感情障害とは、妄想や幻覚など統合失調症で現れやすい症状とともに、抑うつ症状や躁症状など気分の障害が同時に認められるもののことをいいます。
これらの症状は、同時に現れるのはもちろん、気分障害が寛解した後もしばらく精神病様症状が続くことがあります。

統合失調感情障害で現れやすい精神病症状には妄想や幻覚などがあります。
「自分の考えが誰かに伝わってしまっている」といった妄想、あるいは「自分の行動を逐次コメントする声が聞こえてくる」といった幻聴などが現れますが、これらの症状は統合失調症で現れやすい症状でもあります。

また、気分障害の症状には、抑うつ症状から気分がハイになる躁症状、場合によっては抑うつ症状と躁症状がミックスしたような状態(混合状態)が現われることもあります。

これによって統合失調感情障害は4つの型に分類されます。

1.双極型
2.躁病型
3.混合型(イライラや焦燥感がメインで自殺衝動などもしばしば認められます。)
4.抑うつ型

今回、息子さんはもともとうつ病の診断がされ、その後躁状態が確認されたこと、また幻覚や妄想などの症状が現れ双極型の感情障害を示したことから「統合失調感情障害」と診断されたと推測されます。

もうひとつのとらえ方もできるかもしれません(もちろん診察していないのであくまで勝手な鑑別です)。
実はストレス下で精神病症状を起こしやすいものに広範性発達障害というものがあります。

いわゆる発達障害とはアスペルガー症候群(自閉症スペクトラム障害)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などをいいますが、背景にこの状態がある方が高ストレス下におかれるとときに精神病症状を起こすことがあります。
発達障害の方は気分の変動性が大きく、そこに精神病症状が目立てば当然統合失調感情障害と診断されてもおかしくはないでしょう。

さて、息子さんのこの状態にTMSが効くかという質問ですね。
統合失調感情障害のTMSの有効性を調べる大規模な研究はないので効果があるかどうかは明確には答えられません。

ただし、各症状に個別に対応していくことはできるかもしれません。

例えば、前者の双極型の統合失調感情障害であった場合、気分障害の成分にTMSは有効性を示すかもしれません。
逆に精神病症状には抗精神病薬を使用する必要があるでしょう。
(TMSが幻聴に有効であった報告もありますが・・・。)

また後者の発達障害+精神病症状であった場合、Lindsayらの研究ではTMSの左側に抑制性信号を照射することで発達障害の過敏性(気分の変動性と関連?)を改善させた報告もあり、これにさらにストレス因子を除外できれば改善できるのかもしれません。

明確な回答はできませんが、改善できる可能性はあるかもしれないが答えです。
(この状態に対して一般的なTMS治療法が確立されているわけではない)

ただ、TMSは現在のところ研究レベルや症例発表レベルでは様々なものが報告されていますが、一般的にはまだ大うつ病に対してTMS治療というのが共通の見解ですから、TMSを所持している医療機関が治療を受け入れてくれるかどうかもわかれるかもしれません。

介護鬱から8年前に内服治療を受け、一年程で回復し、現在はほとんど抑うつ症状は認めませんが、不眠症状が残り辛いです。抗鬱剤の使用はせず、レンドルミン、ベルソムラを服用していますが、なるべく薬を頼らず自然な睡眠を得られる方法を探しています。TMSは、長い不眠症に有効でしょうか?ちなみに、私は先天性心疾患、心室中隔欠損症で胸骨固定のワイヤーが入っていますが、TMSは可能でしょうか? 何度も、申し訳ありません。どうか宜しくお願いします。
TMSによる不眠治療に関しては文献も出てきております。

一般に、TMSはうつ病治療がメジャーですが、不眠症、強迫性障害、双極性障害などへの治療についても研究が進んできています。
通常のうつ病治療が左背外側前頭前野に対する高頻度刺激治療が一般的ですが、ある文献では慢性の不眠に対して、左低頻度刺激の有効性が言われております。

私の経験(臨床研究)でも左低頻度刺激による不眠の改善があります。
有効である可能性はあるとはいえると思います。

首より下の金属は問題ありません。

50歳の主人が2年前からうつ症状です。不眠のため受診しうつと診断され最初から複数の抗うつ剤と睡眠薬を出されました。その後良くなったと伝えましたが薬は増え続け、半年ほど経って無性に買い物がしたいと主人が訴えると医師は一気に薬を減らし、ほどなく主人は不調を訴え始めました。すると今度は短期間で急激に薬を増やされました。益々不調になり薬でおかしくされると思い転院しましたが、転院の際「双極だと思いますが紹介状には書きませんね。」と言われました。薬が怖くなり転院先で減薬をして今は断薬後半年になりますが、症状は良くなく、夜も眠れず、うつ状態や怒りを繰り返し、手足が強張り老人のような歩き方になっています。今の状態がうつからくるものなのか双極か、または急激なくすの増減からくる症状なのかはっきりとわからないまま本人も家族も苦しい毎日を送っています。このような状態でTMS治療を受けられるのか、教えていただければと思います。
うつ病と診断され、抗うつ剤が効かない(もしくは抗うつ剤により悪化した?)ため双極性障害に診断を切り替えた例ですね。
これは精神科診療でもいくらかみられるパターンです。

参考:「なぜ双極性障害に診断が変わったか?」

ここで抗うつ剤を一気に減らすと、離脱症状も起こるため事態は悪化します。

そもそも双極性障害は躁状態とうつ状態の二相性の症状がでる病態です。
躁状態というのは、明らかにテンションが高まり、ときには攻撃性などが強まったり、イライラやじっとしていられない症状だけがメインのこともあります。
ここにうつ症状が合わさると通常のうつ病より症状は深刻になりがちです。

しかし、軽い躁症状は判断しにくいため、明らかな躁症状がないと双極性障害と診断書に書きづらいという現状もあります。

転院後は、抗うつ剤が効きにくかったというエピソードから、おそらく抗うつ剤 → 抗精神病薬(エビリファイ、クエチアピン、ジプレキサなど)に変更しているのでしょうか?
このお薬では手のこわばりが出やすい副作用があります。

さてこの状態におけるTMSですが、結論的に効果を出すことは可能と考えます(このパターンに対しての経験があります)。
ただし、通常のTMS治療刺激では抗うつ効果がメインで、衝動性などの症状をコントロールできないばかりかかえって悪くなることがあります。

抗躁効果、抗衝動性効果をターゲットにTMS治療を行うのが望ましいかもしれません。

自律神経か、初期のうつかもしれません。まだ、治療を、始めたばかりです。tmsは、きになりますが、値段も高いですし、あの、音がきにねります。2回しましたが、もう、受けたくないです。とちゅうで、やめても、いいのでしょうか。
TMSは確かに音が気になるかもしれません。
実際には慣れてしまうと全くに気にならなくはなるのですが、最初のうちはそれでも耳栓は必須でしょう。

またTMSは自由診療の扱いですので値段も高価なものになります。
磁気刺激治療のやり方(当てる部位や磁気照射のパターンなど)によっても効果はかわります。

途中でやめることは全く問題ありませんが、もしうつでお困りなようであればTMSに関しても他の医師の意見を求めてみるのはいかがでしょうか?
TMSは思っている以上に奥が深く、治療パターンも数多く存在しています。

とても深い知見をこちらで拝見し、学ばせていただいています。

私は、とあるクリニックでTMS治療を受けています。
双極性障害で、リーマス・セロクエル・ラミクタールを数年間服用しており、減薬を目的にしています。

現在の施術は、右高頻度と左低頻度であり、一般的な左高頻度と右低頻度との違いを、正しく整理したいと思っています。
左高頻度は、背外側前頭前野に亢進的に作用させること、右低頻度は梁下野や前頭葉眼窩野などの腹内側前頭前野に抑制的に作用させる、というメカニズムで理解しています。

その反対の右高頻度、左低頻度は、どのような機序が考えられますでしょうか?

また、高頻度の照射も、以前の20Hzから、最近は50Hzで行われているようで、この点についてのご見解もお伺いできたらと思います。

よろしくお願いいたします。

TMSによるうつ病治療は基本的に左背外側前頭前野への高頻度刺激(通常10Hzから20Hz)で行います。
この方法が、最初にFDAで承認された治療法となります。

高頻度刺激はシナプス結合を強める方向(専門的には長期増強)に作用し、低頻度刺激では逆に弱める(長期抑圧)方向に作用します。
長期増強、長期抑圧はどちらも大事な神経結合調整における役割を果たします。この調整を行うことを神経可塑性(しんけいかそせい)と言い、神経可塑性異常がうつ病をはじめパーキンソン病、認知症との関連が言われております。

左側に高頻度を当てるか、右側に高頻度を当てるかは様々な論文がありますが、基本的に左側に高頻度をあてることでうつ症状を改善させることが一般的です。右側高頻度刺激では、逆に躁症状(気分の高まりだけでなく、イライラやじっとしていられない感覚、強い不安感)を安定させます。イメージ的には左=アクセル、右=ブレーキ(ブレーキといってもマイナスなイメージではなくコントロールの中枢のイメージ)ととらえると良いと思います。

アクセルは通常通りなのに、ブレーキ機能が作動しておらず衝動やイライラなど暴走気味なときには右高頻度をメインに行うと良いと思います。
また感情の認知機能も右側が大事と考えられ、無感情症(本当に感情がないというよりも感情の動きが鈍い、現実感がない)においても右高頻度は有用です。

Hzは高ければ高いほど、長期増強作用をもたらす可能性が強くなり、低頻度刺激も1Hz未満である方が長期抑圧作用をもたらす可能性が強まります。つまり1Hzでも高頻度と同等な作用をしてしまうこともあるということです。

難しい説明になってしまいましたがなんとなくご理解いただけましたでしょうか。


(平日10:00-18:30・土日祝日は休診)

メール相談

MAP

JR赤羽駅「南口」より徒歩2分
(セブンイレブンのあるビルの5階です。)


〒115-0044 東京都北区赤羽南1丁目4-8 赤羽南商業ビル5階

当院が運営する精神科情報サイト

医者が教えない精神科のこと

Doctor’s file