ワイパックスは1978年に発売されたベンゾジアゼピン系というタイプに属する抗不安薬(不安を抑える作用を持つお薬)です。
抗不安薬は「マイナートランキライザー」「安定剤」「精神安定剤」などとも呼ばれます。
ワイパックスは強い抗不安作用を持つことから精神科ではよく処方されるお薬です。
抗不安作用が強い分、「クセになりやすい」「依存しやすい」という面もあります。
ワイパックスについてご紹介しましょう。
Contents
ワイパックスの特徴
まずはワイパックス錠の全体的な特徴をかんたんに紹介します。
ワイパックスは「ベンゾジアゼピン系」という種類のお薬で、以下の4つの作用があります。
- 抗不安作用(不安を和らげる作用):強
- 催眠作用(眠くなる作用):中
- 筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす):中
- 抗けいれん作用(けいれんを抑える):弱
抗不安作用(不安を抑える作用)に優れ、筋弛緩作用(筋肉の緊張を緩め肩こりなどにも有効)もまずまずあるのがワイパックスの特徴になります。
メリット
- 抗不安作用が強い
- 即効性がある
ワイパックスのメリットは不安を取る作用は強いところです。
デメリット
- 効果は実感しやすいが、その分依存形成も起こしやすい
- 筋弛緩作用により、特に高齢者でふらつきや転倒が生じやすい
効果の良さと依存の起こしやすさは隣り合わせです。
良く効くお薬は、つい頼ってしまうため依存しやすいという特徴があります。
後述する「ワイパックスの副作用」で詳細を解説します。
ワイパックスの強さ
抗不安薬には、たくさんの種類があります。
それぞれ強さや作用時間が異なるため、患者さんの状態によって、どの抗不安薬を処方するかが異なってきます。
抗不安薬の中でワイパックスの不安を改善する作用(抗不安作用)は強めです。
また作用時間(半減期:血液中の濃度が半分になってしまうまでの時間)も短すぎず長すぎずといった感じです・
抗不安薬 | 作用時間(半減期) | 抗不安作用 |
---|---|---|
グランダキシン | 短い(<1h) | + |
リーゼ | 短い(~6h) | + |
デパス | 短い(-6h) | +++ |
ソラナックス コンスタン | 中(14h) | ++ |
ワイパックス | 中(12h) | +++ |
レキソタン セニラン | 中(20h) | +++ |
セパゾン | 中(-21h) | ++ |
セレナール | 長い(56h) | + |
バランス コントール | 長い(-24h) | + |
セルシン ホリゾン | 長い(50h) | ++ |
リボトリール ランドセン | 長い(27h) | +++ |
メイラックス | 超長時間(-200h) | ++ |
レスタス | 超長時間(-190h) | +++ |
ワイパックスの適応疾患
添付文書を見るとワイパックスは以下の疾患に適応があるとされています。
- 神経症における不安・緊張・抑うつ
- 心身症(自律神経失調症、心臓神経症)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつ
心身症とは、症状は身体症状なのです、その主な原因が「こころ」にある病気のことです。
例えばストレスで胃潰瘍になったり、血圧が上がってしまう、喘息の発作が出るなどは心身症になります。
もちろんストレスからくる身体症状だけでなく、様々な不安感に対して使用すると効果が実感できやすいです。
疾患で言えば、パニック障害や社交不安障害などの不安障害圏、強迫性障害などの疾患には良く使います。
うつ病や統合失調症などで不安が強い場合も補助的に使用されることがあります。
また、ワイパックスには筋弛緩作用(筋肉をほぐす作用)もありますので、肩こりや筋緊張性頭痛などにも効果が期待できます。
ワイパックスはこんな方におすすめ
ワイパックスは優れた抗不安作用を持つお薬ですので、不安、緊張が強い方には向いているお薬になります。
飲んでから血中濃度が最大になるまで約2時間かかりますが、体感としては内服後20~30分ほどで効果を感じられ、即効性に優れるお薬と言えます。
ワイパックスの半減期(お薬の血中濃度が半分に下がるまでにかかる時間で、作用時間を反映するともいえる)が12時間程度です。
そのため、1日中効かせるためには1日に2~3回内服する必要があります。
ある特定の時間だけ不安を取りたい頓服による使用であれば1日1回の内服で構いません。
1日中と通して不安を取りたいのであれば、ワイパックスを1日2回以上に分けて内服しましょう。
用法
成人1日ロラゼパムとして1~3mg(0.5mg錠:2~6錠、1mg錠:1~3錠)を2~3回に分けて経口服用する。
緊急時の舌下内服について
通常のお薬の飲み方の場合、胃から腸へ流れていき、腸管から吸収されて血管に薬効成分が入り、脳へ運ばれて効果が発現します。
舌下投与というのは、文字通りワイパックスの錠剤を舌べらの下に置く事です。
舌べらの下に置く事で、舌下の粘膜の血管や口腔粘膜の血管からお薬が直接吸収されます。
血管に直接吸収されるため、即効性があるというのが舌下投与のメリットです。
- 通常の飲み方だと「口→胃→腸管→血管→脳」
- 舌下投与だと「口→血管→脳」
経由部位が少なくなるため、舌下投与の方が早く効くことが分かると思います。
本来、舌下投与は「すぐに効いてほしい」という場合に用いられる方法です。
実は、舌下投与というのは特殊な裏技というわけではありません。
狭心症などの心臓発作時などにニトログリセリン舌下錠という舌下投与専門のお薬が使われます。
舌の下に置いておくだけで身体に吸収されますので、服薬の際に「水がいらない」というのも舌下投与のメリットです。
ワイパックスの舌下投与の意義について
ワイパックスのような抗不安薬に即効性を求めて舌下内服をするのであれば、予期不安(不安が起こりそう)のときではなく、すでに「不安発作が起こっている時」「死ぬかもしれないとパニックになっているとき」でしょう。
ただしワイパックスは販売会社であるファイザーのデータによると、舌下投与も普通の投与方法も効果発現の時間(血中濃度の上がり方)は変わらないと言われています。
実際は、「舌下投与は早く効く!」という患者さんはいらっしゃって、これはおそらく思い込み(プラセボ)からきているものかもしれません。
不安発作中は本人は「このまま死んでしまうかも」という強い恐怖を感じています。
これを一刻も早く抑えるのであればたとえプラセボであっても舌下内服には意味があると思います。
「発作が起こっても舌下投与すればすぐ効くから大丈夫!」という安心感が得られれば、それは普段の不安の改善にもつながり、病気の治りだって良くなる可能性が十分あります。
また、発作時に常に水を持っているとは限りません。
水なしでも身体におくすりを吸収させることのできる舌下投与は、外出先など不意の状況で発作が起こったときに有効かと思います。
ただしワイパックスの舌下投与は、公に推奨されている方法ではありません。
ファイザー社のデータでは血中濃度の上昇に変わりなしとしていたとしても、急激に血中濃度が上昇しふらつきやめまい、健忘などの副作用症状が起きる可能性は0%ではありません。
発作時に限り、「舌下投与は自分にとっては即効性がある」と感じられるのであれば知っていてもよいかもしれませんね。
ワイパックスの作用機序
ワイパックスは「ベンゾジアゼピン系」という種類のお薬です。
ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体という部位に作用することで、抗不安効果、催眠効果、筋弛緩効果、抗けいれん効果を発揮します。
ギャバとはチョコレートでも「ストレス社会」をうたっているあれです。
過剰な脳の活動を落ち着かせる作用がある神経伝達物質の一つです。
ベンゾジアゼピン系薬は、基本的には先に書いた4つの効果が全てあります。
この中でワイパックスは以下のような特徴を持ちます。
ワイパックスの副作用
ワイパックスはベンゾジアゼピン系抗不安薬に属するお薬です。
長期・大量に服薬を続けていると「耐性形成」「依存性形成」が生じる可能性があります。
耐性とは身体が慣れて効きがだんだん悪くなってしまう事をいいます。
また依存性とは、飲まないと落ち着かない、いても立ってもいられなくなってしまうという状態です。
ワイパックスは抗不安作用が強い反面、特に注意する必要があります。
ワイパックスの持つ作用からみた副作用症状
もう一度ワイパックスの作用を確認してみましょう。
ワイパックスには以下の4つの作用があります。
- 抗不安作用(不安を和らげる作用):強
- 催眠作用(眠くなる作用):中
- 筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす):中
- 抗けいれん作用(けいれんを抑える):弱
耐性や依存以外にもワイパックスの副作用は、これらの効能に関連した症状が生じます。
具体的には、催眠作用によって眠気やふらつきが生じたり、筋弛緩作用で筋肉に力が入りづらいことで、ふらついて転倒しやすくなるなどです。
Ⅰ.耐性・依存性形成
ワイパックスを飲むうえで、長期的には「耐性」と「依存性」が一番の懸念すべき点です。
- 耐性:身体が徐々に薬に慣れてしまい、通常の量では効果を感じにくくなってしまう。
- 依存性:ワイパックスなしではいられなくなる状態。
耐性・依存性はアルコールと切っても切れない関係性があります。
まずアルコールには強い耐性と依存性があります。
アルコールも飲んでいると徐々に強くなって次第に飲む量を多くしたり、アルコール量を多くしないと酔えなくなってしまいます。
またこのように飲酒量が多くなると、常に飲酒していないと落ち着かなくなり、朝から飲んでしまう状況にもなてしまうことがあります。
このようにアルコールにも耐性・依存性がありますが特に問題となるのはワイパックスとの交叉耐性です。
通常はワイパックスを飲んでいると聞きずらくなることを耐性といいますが、実はアルコールに耐性ができるとワイパックスにも耐性ができてしまうのです。
これを交叉耐性と言います。
さらにアルコールと抗不安薬を一緒に飲んでいると、耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。
Ⅱ.眠気、倦怠感、ふらつき
ワイパックスには催眠効果(眠気をもたらす作用)、筋弛緩効果(筋肉の緊張・収縮を弱める作用)があるため、ときに日中の眠気やだるさを感じてしまうことがあります。
対処法
飲み初めの場合でその症状が軽ければ様子をみることで徐々に改善してしまうことがあります。、
様子を見れる程度の眠気やだるさなのであれば、1~2週間様子をみて下さい。
それでも眠気が改善しないという場合、「ワイパックスの服薬量を減らす」ことになります。
一般的に量を減らせば作用も副作用も弱まりますが抗不安作用も弱まってしまいます。
Ⅲ.物忘れ(健忘)
ワイパックスは頭がボーッとしてしまい物忘れが副作用として出現することがあります。
適度に心身がリラックスし、緊張がほぐれるのは良いことですが、日常生活に支障が出るほどの物忘れが出現している場合は、お薬を減薬あるいは変薬する必要があるでしょう。
※ベンゾジアゼピン系を長く使っている高齢者は認知症を発症しやすくなるという報告もあります。
頓服としての使用
頓服とは、不安の発作時や出そうになった時だけ、ワイパックスを服薬することをいいます。
例えば痛い時だけ、痛み止めを飲むというのが頓服です。
頓服とは対照的に、毎日決まった時間に飲む定期内服もありますが、定期的なおくすりの服薬は一時的な作用は強くはありません。
しかし、一日を通して症状をコントロールしてくれるメリットがあるわけです。
一方、普段症状がない方が対象で、発作をしのぐ方法ということになります。
ワイパックスは、即効性があり効果も強いため、不安発作や予期発作を抑える頓服薬としては向いているのです。
以下のような場合に頓服します。
- パニック障害などの患者さんが、不安発作が出た時に使う
- 電車などの人ゴミが苦手な人が、電車に乗る前に使う
- 上がり症の人が、人前でのスピーチや発表の時に使う
- 会食が苦手な人が、会食の前に使う
- 落ち着きのなさ
- イライラ
- 緊張
- 頭痛
- 肩こり
- 吐き気・悪心
- 動悸
- 震え
- 発汗
- 半減期が短い
- 効果が強い
- 量が多い
- 内服期間が長い
- ソラナックス(半減期14時間、効果は中)
- バランス・コントール(半減期-24時間、効果は弱)
- 抗不安作用(不安を和らげる)
- 催眠作用(眠くする)
- 筋弛緩作用(筋肉の緊張を和らげる)
- 抗けいれん作用(けいれんを抑える)
- ワイパックス錠 0.5mg:5.8円
- ワイパックス錠 1.0mg:9.7円
- ロラゼパム錠 0.5mg:5円
- ロラゼパム錠 1.0mg:5.6円
ワイパックスは、内服してから約2時間後に血中濃度が最大となり、そこから約12時間で半減期を迎え(血中濃度が半分に減り)効果が薄れていきます。
効きが最大になるのは2時間かかりますが、実際には内服後15-30分ほどで効果は実感できます。
例えば不安発作が起こりそうな予感があればその30分前には飲むのが良いでしょう。
頓服としての使用量
通常の用法は以下の通りです。
成人1日ロラゼパムとして1~3mg(0.5mg錠:2~6錠、1mg錠:1~3錠)を2~3回に分けて経口服用する。
頓服として使用する量は人それぞれですが、だいたい1回0.5mg~1mgを内服します。
2mg、3mgといった高用量を1回で飲むのは、副作用の眠気やふらつきが強くなる可能性があるため、注意が必要です。
ワイパックスの離脱症状
ワイパックスに限らずベンゾジアゼピン系の抗不安薬はすべて、依存形成を起こす可能性を持っています。
ワイパックスは抗不安薬の中でも効果が強く、実感しやすいため、頼ってしまいやすお薬でもあります。
ひとたび依存が形成されると無理にやめたり減らすと以下のような症状が出てしまいます。
過度に恐れないでほしいのですが、依存や離脱症状は、ワイパックスを飲むと絶対起こすわけではありません。
効果を実感しやすく、勝手に自分で量を決めて飲み続けていると危険です。
必要な期間のみ、必要な量のみの内服であれば起こさないことがほとんどですが、長い間、ワイパックスを多めに服用しているとこのような問題が発生します。
ワイパックスは離脱症状を比較的起こしやすい
一般に離脱症状は以下の特徴を持つお薬が起こしやすいことが知られています。
ワイパックスの半減期(血中濃度が半分になる時間)は12時間と比較的長くはあるのですが、不安を抑える効果が強いため離脱症状を起こす頻度はやや多い部類に入ります。
離脱症状を起こさないために
離脱症状を起こさないためには、離脱症状を起こしにくいお薬も逆にあることを知っておくことは重要です。
すなわち離脱症状を起こしにくい特徴とは、
半減期が長めで、抗不安効果はマイルドで、内服量が少ないのが良く、長期間は服用していないことが重要です。
つまりある程度症状が落ち着くならやめたり、より半減期が長く抗不安作用が弱めの薬に変えていくのが良いのです。
などが候補にあがりますは、実際効果がないと感じてしまうこともありお薬の切り替え(スイッチ)は以外にも難しいのです。
服薬量が多く、服薬期間が長いほど、依存形成や離脱症状につながりますので、定期的に「ワイパックスの量を減らせないか?」と主治医の先生と相談したり自身でも意識しておくことは重要です。
抗不安薬でおさまらない不安は、抗うつ剤や抗精神病薬が必要になるのです。
すべて抗不安薬でコントロールしようとするとこのような事態に陥りがちです。
離脱症状への対処法
ワイパックスの減薬時に離脱症状は注意すべき症状です。
離脱症状が起きた場合、「様子をみる」か「元の量に戻す」かで症状はコントロールできます。
基本的に元の量に戻せば症状はコントロールできます。
様子を見る場合でも、個人差はありますが離脱症状のピークは1週間程度で、これを過ぎると徐々に軽くなります。
ただし、中にはピークがおさまってもその後3か月間症状が続くなどのケースもあります。
お薬を元に戻すのは最も早くて確実な改善法ではあります。
おくすりを減らしたのが原因なので、おくすりの量を戻せば離脱症状は改善します。
問題はどうやって再び離脱症状を起こさないようにできるかになります。
Ⅰ.ゆっくりと減薬する
例えば、ワイパックス3mgから半分の1.5mgに減薬したときに、もし離脱症状が出現したのであれば、こんどはいきなり半分に減らすのではなく2mgや2.5mg経由してから1.5mgに減らすようにしてください。
また、期間も重要です。
例えば、1週間ペースで減薬していって離脱症状がでてしまうのであれば、2週間や4週間ペースに伸ばしてみましょう。
Ⅱ.半減期の長い抗不安薬に切り替えてから減薬する
半減期(血中濃度が半分になるまでの時間)の長い抗不安薬の方が離脱症状を起こしにくいのです。
そのため、半減期の長いおくすりに一旦切り替えてから減薬すると上手くいくことがあります。
例えば、ワイパックス(半減期12時間)からコントール(半減期10-24時間)に切り替える方法で考えてみます。
ワイパックス1.5mgを1日に服薬していたとしたら、同程度のコントールだと30mgくらいになりまので、コントール30mgへ切り替えます。
コントールに慣れるため1-2週間は様子をみます。
その後、コントールを20mg、10mgとゆっくり減らしていけば抗不安薬をやめることができます。
ワイパックスと酒・アルコールの併用はなぜいけない?
酒・アルコールとの併用についてはこのように記載があります。
【相互作用】
(併用注意)アルコール(飲酒)
臨床症状・措置方法:眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下を増強することがある。
機序・危険因子 :相互に中枢神経抑制作用を増強することがある。
ワイパックスとアルコールとの併用は「禁忌」にはなってはいませんが、「併用注意」となっております。
「お互いに中枢神経の働きを抑えてしまうため」それによって「眠気や注意力低下などが起きやすくなるため」です。
ワイパックスもアルコールも、どちらも脳を落ち着かせる作用があり、これらを併用することで、お互いの作用を強めあってしまい脳を過剰に眠らせてしまうことがあり得るのです。
問題はそれだけでなく、ワイパックスとアルコールを併用を続けていると、長期的にも大きな問題を引き起こします。
それは「耐性・依存性形成」の問題です。
耐性とは、ある物質を摂取し続けると次第に身体が慣れてきて、効かなくなってくる事です。
交叉耐性といって、アルコールに耐性ができあがると同時にワイパックスにも耐性ができてしまいます。
また依存性とは、ある物質を長期に摂取し続けていると、次第にその物質なしではいられなくなることをいいます。
我が国のアルコール依存症患者は80万人、アルコール依存症予備軍は440万人と言われており、アルコール依存は社会的にも大きな問題となっています。
ワイパックスにも、アルコールよりは弱いものの依存性があるのです。
そしてアルコールと抗不安薬を併用する事で、お互いの作用が強まり合い、より急速に耐性や依存性が形成されてしまうという事です。
つまり、抗不安薬とアルコールを一緒に飲んでいると、アルコール依存や薬物依存になりやすくなりこれが問題なのです。
ワイパックスと酒・アルコールの併用実例
ワイパックスとお酒を一緒に飲んでしまうと、実際はどうなってしまうのでしょうか?
短期的にはお酒や抗不安薬が残りやすくなるために、眠気やだるさが強くなります。
また普通量のお酒を飲んだだけなのに二日酔いになったり、寝坊・遅刻してしまったりすることがあります。
また先述した通り、長期的に見ると、耐性や依存性が形成されやすくなります。
耐性が形成されると、効きが悪くなるため、抗不安薬の量が増えていきます。
それでも併用を続けていると、次第にどの抗不安薬も効かなってしまう可能性もあります。
効くおくすりがなくなってしまうと、打つ手が無くなるため患者さんは非常に苦しむことになります。
酒・アルコールを飲みたくなったら
基本、飲むならワイパックスを飲まない事
飲酒はしないことが望ましいのですが、どうしてもお酒を飲まなくてはいけないときはアルコールを摂取する前後にはワイパックスは内服しないでください。
そうすれば、短期的にはつらいかもしれませんが、耐性や依存性形成、
翌朝の倦怠感や過鎮静などのリスクを低くすることができます。
眠気の副作用に困ったら
ワイパックスは「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」という種類のおくすりで、ベンゾジアゼピン系は、GABA-Aという受容体を刺激し、脳を休める方向に作用させます。
先にも説明しましたが、これによって次の4つの作用があらわれます。
この中で、抗不安作用のほかに催眠作用があり、この作用によって眠気をもたらしてしまいます。
眠気の起こしやすさは比較的強い
抗不安薬には多数の種類がありますが、これらの中で眠気の起こりやすさは以下のようになります。
抗不安薬 | 作用時間(半減期) | 抗不安作用 | 眠気 |
---|---|---|---|
グランダキシン | 短い(<1h) | + | + |
リーゼ | 短い(~6h) | + | ± |
デパス | 短い(-6h) | +++ | +++ |
ソラナックス コンスタン | 中(14h) | ++ | ++ |
ワイパックス | 中(12h) | +++ | ++ |
レキソタン セニラン | 中(20h) | +++ | ++ |
セパゾン | 中(-21h) | ++ | ++ |
セレナール | 長い(56h) | + | + |
バランス コントール | 長い(-24h) | + | + |
セルシン ホリゾン | 長い(50h) | ++ | +++ |
リボトリール ランドセン | 長い(27h) | +++ | +++ |
メイラックス | 超長時間(-200h) | ++ | + |
レスタス | 超長時間(-190h) | +++ | ++ |
基本的には、作用(不安を和らげる強さ)が強いほど、副作用(眠気など)も多くなる傾向があります。
ワイパックスの眠気の作用は、「中程度」の強さがあります。
眠気が生じたときの対処法
ワイパックスを服用して、生活に支障が出るくらい困る日中の眠気が出てしまったらどうすればいいしょうか?
基本的には様子をみるのが第一です。
身体が慣れると、自然に改善する可能性があるからです。
1-2週間も待てないということであれば、減薬したりより眠気作用の弱い抗不安薬に切り替えることになります。
様子をみる
1-2週間様子をみてみると、身体がおくすりに適応してくるため、眠気が徐々に軽くなってくることがあります。
なんとか耐えられる程度の眠気なのであれば、少し様子をみてみるのは良いでしょう。
服薬量を減らす
内服する量を減らせば、眠気の程度は軽くなります。
量が減れば効果も弱くなってしまいますが、眠気に困っている場合は検討せざるを得ないでしょう。
服薬時間を変える
服薬する時間を変えることで眠気が起こる時間をずらすことが可能です。
例えば、ワイパックス0.5mg錠を1日3回、毎食後(1.5mg/日)に服薬していたとしましょう。
昼すぎの眠気で仕事に使用があるのであれば昼食後の服薬を中止して、朝・夕食後にそれぞれ0.75mgずつ服薬にしてみるのも良いでしょう。
(昼の分の0.5mg錠を半分に割って、朝夕に振り分ける)
昼食後のくすりがなくなるため、午後の不安感の増悪は心配ですが、ワイパックスは半日ほど効くお薬でもありますので、簡単にできることもあり試してみる価値はあります。
ワイパックスから他のお薬に変える
似たような作用時間、強さの抗不安薬だと、
ソラナックス/コンスタン: 作用時間14時間、効果普通
レキソタン/セニラン : 作用時間20時間、効果強い
セパゾン : 作用時間11-20時間、効果やや強い
(ワイパックス:作用時間12時間、効果強い)
ですが、これだと同程度に眠気が出る可能性があります。
抗不安作用も若干弱く感じる可能性もありますが、比較的眠気も抑えられるとしたらリーゼ、セレナール、バランス、メイラックスなどがあります。
ジェネリック医薬品:ロラゼパム錠(ユーパン錠)
最初に開発し、承認後に発売する許可を得た新しい薬効成分を持つお薬を「先発医薬品(新薬)」といいます。
ロラゼパム錠(沢井製薬)の場合、先発医薬品は「ワイパックス(ファイザー社)」ということになります。
先発医薬品の開発には、十数年にもおよぶ長い研究期間と莫大なコストがかかります。
ほとんどが海外メーカー含め大手の医薬品メーカーに限られてしまいます。
先発医薬品を開発した企業は、医薬品の構造や製造方法、用途について特許権を取得し、特許期間中の20年間はその薬の製造・販売を独占することができます。
先発品の特許が切れ(開発中に特許を取得するので、販売後10年前後で特許切れになることが多い)、他の医薬品メーカーがその技術を借りて製造・販売したものを「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」といいます。
ジェネリックの3つの特徴をみてみましょう。
1.薬価が安い
先発品に比べてジェネリック医薬品の方が薬価が安いというメリットがあります。
通常は先発品の半額以下ということも多いですが、ロラゼパムの場合、特に0.5mg錠においてはそこまで変わりません。
処方箋の「後発医薬品に変更不可」の欄にチェックと医師のサインがされてなければ、自動的に薬局でジェネリックに変更されて出されることが多いはずです。
クリニックによってもしくは医師によってジェネリックに対する考え方に違いがありますが、今は基本的にジェネリック医薬品を可としていることが多いと思います。
(2018年4月改定)
2.成分は同じでも製造方法は違う
ジェネリック医薬品は先発品と成分は同一ですが、コーティングが異なるので苦みの感じ方や飲み安さが異なることがあります。
ただし同じ薬効のはずなのですが、ジェネリックに切り替えることであまり調子が良くなくなったとか、副作用が出たということもなくはありません。
これはお薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
もちろん先発品と同じように効果の試験をクリアし、血中濃度の変化(薬物動態)も同等になるように設計はされています。
もちろん同じ成分であっても、「ジェネリックで大丈夫なのかな?」と精神的な影響もあるとは思います。
本当に同じ成分・同じ薬効?
ワイパックス錠とロラゼパム錠は本当に同じ薬効なのでしょうか?
先発品の持つ特許のうち、新しい成分に与えられる「物質特許」、その成分に対する新しい効能・効果に対して与えられる「用途特許」の2つの特許が切れてジェネリック医薬品を製造・販売することができるようになります。
ところがあくまでその成分の存在と効能の特許技術を利用するのみであり、先発品が持つ他の特許(例えば製造方法に与えられる「製法特許」、薬を製剤する上での工夫「製剤特許」など)も存在します。
有効期間が残っている場合もありますし、ここまで技術を借りるとジェネリック医薬品なのに先発品と変わらない価格になってしまうかもしれません。
とすれば製造方法や薬のコーティング部分に使われる添加物などを完璧に先発医薬品と同じにすることが実はできないのです。
同じ主成分が同じ量だけ入っていたとしても、実際には薬が吸収される速度や、有効成分が分解される状態が先発品とは多少異なる可能性があるのです。
これによって「効果」や「副作用」の違いが出うるのです。
それでもジェネリック医薬品が先発医薬品と変わらない効果をうたっています。
「有効性の試験」において統計学的に15%の差は「差が無い」としているので、厳密には10%前後の差異があるものとみなした方がよいのです。
3.間違えやすいお薬名
外来で飲んでいる薬のことをたずねると「アメルです!」とお答えいただきますが、「アメル」はジェネリック医薬品の販売メーカー名であり、お薬の名前ではありません。
ワイパックスのジェネリック「ロラゼパム」の場合には沢井薬品ですので「ロラゼパム錠(サワイ)」と表記されています。
旧:ユーパン錠からロラゼパム錠に名称変更
ロラゼパム錠は以前は沢井製薬から「ユーパン錠」として販売されていましたが、2014年にロラゼパム錠(サワイ)に改名されました。
基本的に、ジェネリック医薬品名は先発薬品の成分名+会社名と統一されたためです。