発達障害
これまで一般的に「発達障害」と称されたアスペルガー障害を含む広氾性発達障害(PDD)診断基準は、DSM-5に改訂されてからは「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と定義されるようになりました。これはASDの特徴は誰にでも少なからず存在するものであるとして、健常者から重度の自閉症者までを連続体(スペクトラム)と捉える考え方です。
ASDは、知能レベルは比較的高いのにもかかわらず、対人コミュニケーションや対人関係の維持が困難であることから、場の空気を読むことや言外のニュアンスを汲むことが苦手で、興味・関心の限局や独特のこだわりがあり、刺激には敏感で変化を嫌い、規則性を好み柔軟性に乏しいというような特徴があります。時に優れた能力が突出していることも少なくありません。
さらに一般的には、注意欠陥多動性障害(ADHD)も含めて「発達障害」と言われる場合もありますが、ADHDはその名の通り、注意の障害と多動・衝動性の障害を併せ持つ障害です。疾患名における「注意欠陥」は、注意力が欠落しているということではなく、興味がある事柄には過集中である一方で、肝心なことへの注意が不足してミスをしたりするという、注意力のバランスに大きな偏りがあることが特徴です。そして「多動・衝動」とは、文字の表す通り、多動性・衝動性にまつわる問題で、落ち着きがなく、多弁で失言が目立ち、感情が高ぶりキレやすく、浪費などの衝動的行動が多いというものです。
これまでは、ASDとADHDのどちらが優勢であるかということを見極めて診断していましたが、DSM-5の診断基準では、ADHDはASDとの併存が認められ、重複診断が可能になりました。しかし、いずれにしてもうつ病などのその他の疾患とは違い、発達障害の特徴や傾向が認められただけでは「障害」とは言えません。診断のためには、それが日常生活や学業や仕事などの妨げになっているということがポイントになります。
双極性障害
これまでうつ病をはじめ、双極性障害(躁うつ病)と呼ばれていたものは、すべて気分障害(感情障害)に分類され、気分の波にうつの周期しかないものをうつ病、躁の周期が認められれば双極性障害と診断されていました。
躁の状態とは抑うつの状態とは対極にあります。気分は高揚し、万能感が高まり、あらゆることに関心や興味が湧き、寝る間を惜しんで精力的・意欲的に活動します。口数も多くなり積極的に人と関わろうとしますが、過剰に厳格で、しつこさや攻撃性も増すので対人トラブルに発展することも多々あります。時に衝動的に高額の買い物をしてしまうような逸脱行為がみられることがあります。
問題は、本人に病識や問題意識が乏しいので、周囲の人が困っているのにも関わらず、受診につながりにくいということです。
さて、この気分障害ですが、DSM-5では、2つは「抑うつ障害群」と「双極性障害および関連障害群」というように別々のカテゴリーに分類されるようになりました。2つは抗うつ薬の効果の違いもありますが、臨床的にも別々の疾患である印象を受けます。
躁うつ病はうつ状態に限らず躁状態も存在し、最近は「双極性障害」といわれます。Ⅰ型Ⅱ型の2タイプが存在し、うつ病との区別も難しくしばしば混乱している方もいます。双極性障害についてその特徴や診断について詳しく説明します。
双極性障害Ⅰ型とⅡ型について
双極性障害(躁うつ病)の治療の中心は気分安定薬と非定型抗精神病薬です。うつ状態と躁状態の波もあり状態によって薬を使い分けていく必要があります。
双極性障害の治療について詳細はこちら
ところで「双極性障害かもしれない。」長らくうつ病として治療していたところに主治医からこのように言われることがあります。誤診ではなく、潜在していた双極性障害は当初はうつ病のように見え、実際多くの双極性障害は初期にうつ病として見えるのです。うつ病として治療していたのに双極性障害に診断が変わるのはなぜでしょうか?
うつ病 ⇒ 双極性障害へ診断がかわるのは何故?