デパス(ジェネリック医薬品名:エチゾラム)はベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類され、不安を和らげる作用があります。
デパスの依存性については有名で多くの方が心配されておりますが、飲めば必ず依存になってしまうわけではありません。
必要な期間のみ正しく使えば依存を過度に心配することはないのです。
デパスの依存性について、また依存にならないために気を付けることについて解説します。
Contents
デパスは依存性が強い
デパス(エチゾラム)に限らず、このベンゾジアゼピン系抗不安薬には全て依存性があります。
その依存性の強さはお薬によってそれぞれ異なります。
デパスの依存性はベンゾジアゼピン系の中でも「強め」です。
そのため、デパスといえば依存というくらい有名で、とにかく依存にならないよう注意しながら服薬をする必要があるのです。
依存というのは、それが無いと落ち着かず耐えられなくなってしまい、常に求めてしまう状態です。
デパスへの依存状態とは、デパスが手放せず、飲まないでいると逆に不安が強くなり、服薬を止められない状態のことです。
デパスはなぜ依存になりやすいの?
一般ににベンゾジアゼピン系抗不安薬における依存の生じやすさは、以下のことで決まります。
- 抗不安作用が強い
- 半減期(=お薬の作用時間の目安)が短い
- 服薬している期間が長い
- 服薬している量が多い
抗不安作用が強ければよく効いている感じがあって、「飲めば大丈夫!」「飲まないとまずい…」となりやすく感覚的に依存になりやすいのはわかりやすいと思います。
半減期とはお薬の濃度がある濃度から半分になってしまうまでの時間のことで、効いている時間(作用時間)と思ってください。作用時間が短いとお薬がすぐに身体から抜けてしまうので、結果的に服薬する回数が多くなり依存しやすくなってしまいます。
また、服用歴が長いほど、1日に飲む量が多いほど、身体がどんどん薬に慣れきっていくため、依存に至りやすいのです。
デパスは、抗不安作用が強く効いている感じが出やすいお薬です。
一方で半減期(作用時間)は約6時間前後と短めです。
一般に抗不安薬は1回の通院で30日分までしか処方が出来ないという処方制限があります。
ところがデパスは90日まで処方できるため、長期間の服用になりやすい傾向があります(医師側からも出しやすいお薬です)。
これらの特徴から、デパス依存は発生しやすいのです。
漫然と飲み続けないように注意が必要なのです。
デパスの依存症状とは
デパスの依存性が出来上がると、減らしたりやめようとしたときに離脱症状が生じます。
<デパスの離脱症状>
- 不安
- 恐怖
- 不眠
- 吐き気
- 目のまぶしさ
- 耳鳴り
- 頭痛
- 筋肉のけいれん
これらの症状には個人差があり、症状の種類や程度はまちまちです。
症状が少なく薬を簡単にやめられる程度の身体依存の方もいれば、重い離脱症状に苦しむ人もいます。
残念なことに、離脱症状の存在を医師も「気のせい」と切り捨ててしまうことがあります。
長期に服用することで、新たに引き起こされた症状(離脱症状や副作用)が断薬後も長く残ることを示唆した報告はいくつもあります。
アルツハイマーのリスクも上がる!
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の服用は、服用しない人よりもアルツハイマー病の発症リスクが1.5倍高いことが報告されています。
特に半年間を超えると1.8倍とリスクは飲まない場合の倍近くなります。
もちろん抗不安薬が直接アルツハイマーの原因であると確定したわけではないのですが何らか不都合はありそうです。
デパス依存の克服法と依存にならないためにどう気を付ければよいか?
依存はひとたび形成されると、簡単には抜けられません。
依存になる前は自分は大丈夫と思いがちなのですが、危険なのはいつのまにか陥ってしまっていることがよくあることなのです。
アルコール依存症の方が、アルコールをやめるのは本当に大変です。
何とかやめれたとしても、多くの方はしばらく経つとまたアルコールを飲んでしまいます。
一度依存になってしまうと、いったんやめてもいつのまにか再度求めてしまっているのです。
依存にならないように注意することが本当に必要なことなのです。
残念ながら処方する側にも問題はあるのですが…。
さて、依存にならないためにはどんなことに注意すればいいのでしょうか?
もう一度依存性を決める薬の特徴を見てみましょう!
- 抗不安作用が強い
- 半減期(=お薬の作用時間の目安)が短い
- 服薬している期間が長い
- 服薬している量が多い
つまりこの要素の反対のことを意識すれば、依存は生じにくいのです。
つまり、「効果が弱めの抗不安薬」「半減期が長めの抗不安薬」「服薬期間はなるべく短く」「服薬量をなるべく少なく」ということです。
効果が弱い抗不安薬へ変える
抗不安薬の中で、効果のあるものの中で出来る限り弱いものを選ぶことはとても大切なことなのです。
デパスは強めの抗不安薬である意識が大切です。
強い不安感がある時に、デパスを飲むことは間違いではありません。
多くの場合、他の向精神病薬(抗うつ剤や気分安定薬など)と一緒に処方されています。
これらのお薬が効いてきて不安が軽くなってきているのに、いつまでもデパスを続けるのは良くありません。
定期的に「デパスからより弱い抗不安薬に変えられるか」を意識して相談することは重要なことなのです。
半減期が長い抗不安薬へ変える
半減期とは、お薬が代謝排泄されて血中濃度が半分になってしまうまでの時間のことをいいます。
作用時間のイメージです。
この半減期が長いお薬の方が依存にはなりにくいのです。
デパスの半減期は約6時間と、抗不安薬の中でも短い部類になります。
一般的に半減期が短い(作用時間が短めの)お薬というのはすぐに効いてくれます。
どちらかというとときどき不安発作があったときだけ飲むのに向くお薬とも言えます。
効いてきた実感を得やすいので、つい頼ってしまいやすくもあります。
しかし、すぐに効果が消えてしまうため、発作ではなく不安がずっと続くような場合には1日に何度も服用してしまいがちです。
反対に半減期の長いお薬は、ゆっくり効いてきて、ゆっくり身体から抜けます。
じわじわ効いてくるためあまり効かない感じがしてしまうのがデメリットですが、依存は形成されにくくなります。
特にデパスから半減期の長いお薬に変えると効かない印象はとても強く感じることでしょう…
それでも即効で不安が薄くなる感覚ではなく徐々に効く感覚をそういうものだとして徐々に半減期の長い抗不安薬に切り替えていけると、依存にはなりにくくなります。
具体的には
半減期の長いベンゾジアゼピン系抗不安薬には、ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)があります。
ジアゼパムの半減期は20-80時間と長い(デパスは6時間)ので、ジアゼパムに置き換えてから減らす方が理論的には離脱症状が出にくくなります。
置き換えるといっても、為替のレートと同じで等価で変えなくてはいけません。
ジアゼパム等価換算 デパス1.5mg = ジアゼパム5mg
例えば、デパスの0.5mg錠を1日3回飲んでいる場合(1日量は1.5mg)は、ジアゼパムを1日に5mgに置き換えることができます。
セルシンやホリゾン5mg錠を朝に0.5錠、夕に0.5錠飲めば同じような効果が期待できるというわけです。
服薬期間が長くならないようにする
抗不安薬は漫然と飲み続けてはいけません。
わかっていてもこれが難しいのですが・・・
デパスを含むベンゾジアゼピン系は早ければ1か月で依存性が形成されると考えられています。
もちろん個人差や飲み方にもよるので一概には言えませんが、数か月以上飲めば依存形成が生じやすくなるのは間違いありません。
抗不安薬が必要だと判断される一番症状が強い期間に服薬をするのは問題ありませんし、それが正しい飲み方だと思います。
しかしデパスは血圧や高脂血症のお薬ではないのです。
内科で処方されるような健康維持のお薬ではなく、いったん薬の力を借りるイメージが必要なのです。
しかしいつの間にか「なんとなく・・・」「やめるのが不安・・・」と服薬を続けてしまいがちです。
これは飲む側だけでなく、処方する医師側もその気持ちになります。
何度も言いますが、基本的に抗不安薬はずっと飲むものではありません。
「量を減らせないだろうか?」と常に検討する必要があるのです。
この判断は非常に難しいですし、あと1か月あと1か月とあとまわしにすればするほど量は減らせなくなるジレンマも存在しています。
服用量の減らし方
教科書的には最低でも10週間(3か月弱)以上かけて少しずつ減らし中止します。
量が少なければ(具体的に1日量でデパス3mg以下)なら離脱症状はそこまで出ないでしょう。
まずはデパス3mgまで減らせるかが最初の勝負になります。
離脱症状が出やすいのはデパス3mg以上(ジアゼパム換算10mg以上)の方で、まずは3mgまで本当に慎重に慎重に減らしていかなければいけません。3か月以上どころか6か月~1年以上かかる場合もあります。
もちろんデパスを半減期の長いジアゼパム(セルシン・ホリゾン)に等価交換で置き換えていく工夫も大事です。
個人差はあるものの一般に精神状態が安定している人、お酒を飲まない人などはベンゾジアゼピンを減らしても離脱症状が出にくく減らしやすくはあります。
服薬量をなるべく少なく
不安でそわそわしてしまうと、つい「デパスを飲んで楽になりたい」「早く不安発作をおさえたい」とお薬を飲みたくなります。
しかも効きがいまいちなかんじがするともう少し飲んでみようかと考えてしまいます。
しかし、服薬量が多ければそれだけ依存になりやすくなります。
服薬量は、必ず主治医が指定した量を守ってください。
とはいってもこれがとてつもなく難しいのですが・・・
せめてどれだけ飲んでしまっているかは主治医に申告はしましょう。
本当にたまにある不安発作の方を除いて、抗不安薬はそれ単独で治療作用のあるお薬ではありません。
あくまで対症療法であり、不安そのものの治療は向精神病薬のお仕事なのです。
多量に服用しなければならない状態であれば、増やすべきはデパスではなく抗うつ剤や気分安定薬、抗精神病薬の方なのです。
とは言いつつも依存を過剰に怖がる必要はない
抗不安薬や睡眠薬の依存は社会問題にもなっておりメディアでもしばしば取り上げられます。
「依存が怖いから精神科のお薬は飲みたくない」と言う方も多いように感じます。
精神科のお薬を飲むと絶対に依存になるわけではありません。
注意をする必要があるだけです。
一番いけないのは漫然と念のため飲み続けることです。
医師側にも問題はあって、とりあえず「そのままお薬だしておきますね!」になってしまっているのです。
医師の指示通りの量を決められた期間だけ服薬していればいいのですが、医師によっては依存性のことをいつの間にか忘れてしまう場合もありますので自身でも減らせるか、やめれるかを考えながら飲むことが大事なのです。
依存になりやすいのは以下のパターンです。
- 勝手に量を調節する
- 「薬をやめるのが不安」と現状維持をやみくもに希望する
- 他の方が薬を取りに来る
アルコールに依存性があることは皆さんご存知かと思います。
でもアルコールは依存にはなる可能性がある物質だけど、適度な飲酒を心掛けていれば依存になることはないということも知っています。
そしてほとんどの人は節度を持った飲酒が出来ており依存にはなりません。
アルコールとベンゾジアゼピン系抗不安薬のどちらが依存性が強いか、というのは研究によって様々な結果が出ていますが、おおむねの印象としては「ほぼ同等か、アルコールの方が若干強い」と思われます。
デパスもアルコールだと思ってください。
一日中飲んでいたらおかしいですよね?
不安症状をお酒の力で飛ばすのと同じ(と言ったら怒られそうですが)と考えると、これに頼っていてはいけないと考えられますね。
デパスを正しく服用することが大事なのです。
それは、デパスは漫然と飲み続ける薬ではないことを自身でもしっかり認識しておくことです。
向精神病薬が一緒に処方されているはずなので、そちらをメインにコントロールしてできれば数か月以内に減らしていく処置が必要になります。
飲んで効いたかどうかを気にするとデパス以外のお薬に変えていったり量を減らしたりできなくなってしまいます。
お酒と同じで、いつもほろ酔いの気持ちいい感覚を求めてはいけませんよね。
効いたか効かないかわからないけど前よりは少しいいかも程度を意識していきましょう。
依存から抜け出すのはかなり難しく、予防が最重要なのです。
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