ジェイゾロフト(セルトラリン)の効果と副作用、減薬時に注意すべき離脱症状(シャンビリ)とは?ジェイゾロフトの副作用で太るの?痩せるの?さらに眠気と逆に不眠になることも・・・。

ジェイゾロフト錠

ジェイゾロフト(ジェネリック医薬品:セルトラリン)は抗うつ剤の1つで、SSRIという種類に属します。
(海外:1991年発売 / 日本:2006年発売、2014年にOD錠(口腔内崩壊錠)登場)

ジェイゾロフト(セルトラリン)が飲み始めてどのくらいで効果がでてくるのか、副作用(太る?・痩せる?・眠気)、減薬時に問題になる離脱症状など、このお薬のあらゆる情報をわかりやすく紹介します。


Contents

ジェイゾロフトはどんな抗うつ剤?

ジェイゾロフト(セルトラリン)はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という種類に属する抗うつ剤です。

SSRIはセロトニンを増やすことで抗うつ効果を発揮する「第一選択の抗うつ剤」です。

ちなみにSSRIという種類の抗うつ剤には、ジェイゾロフト以外にもいくつかあります。


<SSRIに属する抗うつ剤>

  • ルボックス/デプロメール
  • パキシル(パロキセチン)
  • ジェイゾロフト(セルトラリン)
  • レクサプロ

その中でジェイゾロフトは「抗うつ効果もあり、安全性も高い抗うつ剤」というバランスのよいお薬なのです。

抗うつ作用という「強さ」「キレ」だけを見ると、同じSSRIの中では「パキシル(パロキセチン)」の方が強いのですが、逆にパキシルは副作用が目立ちます。

ジェイゾロフトはそれに比べて、副作用が他のSSRIや抗うつ剤と比較すると軽めで少ないのです。

またジェイゾロフトは女性に特に効きやすいという報告がありますので女性にジェイゾロフトを検討する医師もいらっしゃるでしょう。

うつ病に対しては、効果と副作用のバランスから最も処方されやすい抗うつ剤の1つと考えていただくと良いと思います。

適応疾患

ジェイゾロフトの適応疾患として添付文書には以下のものが挙げられています。


<ジェイゾロフトの適応疾患>

  • うつ病、うつ状態
  • パニック障害
  • 外傷後ストレス障害(PTSD)

上記以外にも、社会不安障害や全般性不安障害、強迫性障害や摂食障害(過食症・拒食症)など抗不安作用を狙って用いられます。
実際不安が強い方に使用されることが多いでしょう。

双極性障害のうつ状態に

一方、双極性障害(躁うつ病)のうつ状態に使用されることがあります。

双極性障害では抗うつ剤よりも気分安定薬が主に使用されることになるのですが、うつ状態があまりにも強いとSSRIが選択されることがあります。

ただし、双極性障害に対してジェイゾロフトを飲む場合、躁状態そうじょうたいになってしまうことがあります(躁転そうてん)。

躁状態というと、楽しくなってハイテンションのイメージが強いのですが必ずしもこの状態だけでなく「イライラ」「落ち着かない」「そわそわする」「攻撃的になる」といった不快な症状も躁状態といいます。

用法 -効果はいつから実感できる?-

通常、成人にはセルトラリンとして1日25mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し、1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により1日100mgを超えない範囲で適宜増減する。

最初は25mgからはじめ、1週間以上の間隔をあけて25mgずつ増量していきます。
1日の最大量は100mgとなります。

抗うつ剤は十分量を十分な期間投与することをガイドラインで示されています。
可能な限り増量し、症状の改善があったらすぐに減量せずにそのまま9か月以上続ける必要があります。

症状の改善が認められるまでは最低でも2-4週間はかかります。

これはジェイゾロフト(セルトラリン)に限った話ではなく抗うつ剤全般にタイムラグがありますので注意してください。

飲み始めてすぐに効くわけではないこと、増量していく必要があることがポイントです。
SSRIの中では比較的副作用がでにくいのが特徴ですが、副作用が出た場合には減薬も検討します。
しかし基本的には十分量を長期にわたって飲む必要があります。 

水がなくても飲めるOD錠が存在

ジェイゾロフトのOD錠(口腔内崩壊錠)オーディーじょう(こうくうないほうかいじょう)が2014年に剤型追加されました。

OD錠は水がなくても唾液で溶けるお薬の事です。
ほとんどの方はOD錠でも水で飲むのでしょうが、飲み込む力が弱い高齢者にも向いています。

よくある副作用

ジェイゾロフト(セルトラリン)はSSRIという抗うつ剤のクラスの中では副作用は少ないのですが、抗うつ剤はそれでも一般のお薬に比べて副作用が目立ちますので油断はできません。

実際にジェイゾロフトを服用する上で問題となる事の多い副作用や、特に注意すべき副作用などを中心に紹介しましょう。

ジェイゾロフトの副作用の特徴とは

  • 他のSSRIと比べれば副作用は少なめ
  • 性機能障害(ED、オーガズム障害)が他のSSRIと比べ多め
  • 下痢が多い(他の抗うつ剤は便秘が多い)

吐き気(セロトニン3刺激作用)

ジェイゾロフトには吐き気や胃部不快感といった胃腸障害が多く認められます。

神経伝達物質セロトニンを増やすことで抗うつ効果を発揮するのですが、残念ながら脳だけでなく胃腸にも作用してしまうことが原因です。

神経伝達物質セロトニンを受け取る神経の入り口(セロトニン受容体じゅようたい)が脳の神経だけでなく消化管にも存在するのです。

このセロトニンの受け取り口(セロトニン受容体)は11種類あり、このうち胃腸にはセロトニン3受容体が分布しており、ジェイゾロフトの内服によってこのセロトニン受容体が刺激され、吐き気が生じます。

飲み始めればまずすぐに吐き気がくる可能性があるということを念頭に置くべきです。
ですのでジェイゾロフトが処方されるときには一緒に胃薬(例えばガスモチンやソロン、ムコスタ、タケプロン、ネキシウムなど)が処方されることが多いです。

ただし幸い吐き気の副作用は1~2週間で自然に改善しますので、飲み初めだけ我慢していただく副作用となります。

吐き気について詳細

性機能障害(セロトニン2A刺激作用)

ジェイゾロフトは性機能障害の副作用の多いお薬です。

性機能障害とは以下のような症状です。


<性機能障害>

  • 勃起障害
  • 射精障害
  • 性欲低下
  • オーガズム障害

性機能障害はジェイゾロフトを含むSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)に多い副作用です。

一方で抗うつ剤の中でも「四環系抗うつ剤」や「NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)」は性機能障害をほとんど起こしません。

SSRIの中でも、ジェイゾロフトの性機能障害は頻度が多いとされています。

性機能障害は相談しずらいことかもしれませんし、まさかお薬の副作用とも思っていないかもしれません。
しかしよくある副作用でもあるのでご相談いただければと思います。

具体的な対処法としては、ジェイゾロフトを減量したり、NaSSA(レメロンやリフレックス)など性機能障害を起こしづらいお薬にするなどの対方法があります。
男性であればバイアグラなどED薬を使用するのも有効です。

便秘、口渇、尿閉(抗コリン作用)

ジェイゾロフト(セルトラリン)は抗コリン作用を起こすことがあります。

抗コリン作用というのは、「副交感神経」の働きを活発にさせて自律神経バランスを崩してしまう作用です。

多くの抗うつ剤が持つ作用で便秘や口が渇く、胃腸の動きを活発にさせてお腹の不快感や吐き気、ときにおしっこが出づらくなったりといった症状があらわれます。

コリンとはアセチルコリンという神経伝達物質のことを示します。
神経伝達物質を受け取る「アセチルコリン受容体じゅようたい」にフタをして、神経伝達物質アセチルコリンが伝達しづらくなり交感神経の作用を落として自律神経のバランスを崩します。

一般に、抗うつ剤以外にも花粉症などの抗アレルギー薬や風邪薬でも出ることのある作用です。

抗うつ剤の中では古い抗うつ薬である三環系抗うつ剤(商品名:トフラニール、アナフラニール、トリプタノールなど)が強く、ジェイゾロフトをはじめとしたSSRIは、三環系抗うつ剤と比べると抗コリン作用は軽減されております。

SSRIの中でもジェイゾロフトは抗コリン作用は弱いのですが、やはり口の渇きや便秘は一定数起きてしまう副作用としての認識が必要です。

ちなみに抗コリン作用が生じると便秘になります。
抗うつ剤を飲むと便秘になるというイメージはこの作用によるものですが、ジェイゾロフトは下痢を起こしやすい副作用がありこれと相まって便通に支障をきたさないこともあります。

口の渇きやおしっこの出づらさ、吐き気が長期に続くなどの場合には抗コリン作用のさらに弱いNaSSA(レメロン/リフレックス)やドグマチール(スルピリド)への変更が対処法となります。

ふらつきやめまい(α1受容体遮断作用、抗コリン作用)

ジェイゾロフトの副作用としてふらつきやめまいがあります。

これはジェイゾロフトがα1(アドレナリン1)受容体という血管の収縮に関与する神経作用をブロックし、血圧を下げてしまう(厳密には横になった状態から立ち上がる時には一時的に血管を締めて脳血流を維持するように働く作用が機能しにくくなる:起立性低血圧)ために起こる副作用です。

この副作用は、古い初期型の抗うつ薬(三環系・四環系抗うつ剤)で良く認められ、ジェイゾロフトを含むSSRIでは大分軽減されています。

SSRIの中でもジェイゾロフトのα1受容体遮断作用は少なめですので、他のSSRI(特にパキシル)と比べればさらに副作用は軽減されていると言えます。

一方でサインバルタ、トレドミンは、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)に分類される抗うつ薬ですが、その名の通りアドレナリン系の物質を増やす作用もあり、血圧を上げる方向にはたらくため、めまいやふらつきが起こる頻度は少なめです。

起立性低血圧がよく起こる場合にはSNRIへの変更が対処法として考えられます。

NaSSAやその他の抗うつ薬(デジレル・レスリン)は眠気を起こしやすい鎮静系抗うつ薬であるために別の意味でふらつきやめまいが生じることがあります。 

日中の眠気(抗ヒスタミン作用)

日中の眠気はほとんどの抗うつ剤で起こる副作用です。
ジェイゾロフトは眠気を起こす作用が強いわけではありませんが、それでも日中の眠気に困る方は一定数おります。

花粉症など抗アレルギー薬でも同じように眠気が起こりますが、抗ヒスタミン作用が抗うつ剤にもあるためです。

ジェイゾロフトを飲み初めた初期にだけ目立つこともあり、経過をみているだけでやりすごせる場合もありますが常態化するようであれば量を調整したり、眠気の置きづらい抗うつ薬(SNRIなど)に変更します。

ジェイゾロフトによる眠気について

不眠(セロトニン2刺激作用)

ジェイゾロフトを含むSSRIやSNRIは深部睡眠(深い眠り)を障害し、不眠を起こす事があります。

「眠気」と「不眠」と正反対の副作用なのですが、日中は眠気が、いざ眠ろうとしても眠れないという感覚です。

不眠の副作用はセロトニンに選択的に作用するSSRIやSNRIで多く認められます。。

抗うつ薬の中で特に強力な眠気を催すお薬を「鎮静系抗うつ剤」といい、NaSSAや四環系抗うつ剤、デジレル・レスリンが該当します。
これらのお薬で生じる眠気は困ることもあるのですが、一方で不眠を改善させてくれる事もあります。

そのため不眠が強いうつ病の方にはあえて眠気が出ることを狙って鎮静系抗うつ剤を処方することもあります。

ジェイゾロフトによる不眠について

太る・体重増加(抗ヒスタミン作用など)

ジェイゾロフトを含むSSRIは数か月内服していると体重増加が起きます。
むしろ内服し始めた初期は、食欲が抑えられるなどして逆に体重が落ちるのですが、半年以上の内服ではやはり太る方向にいくことが多いです。

SSRIの中では、ジェイゾロフトは体重増加の副作用はあまり強くはありません。

他の抗うつ剤で体重増加の副作用が顕著なのは、NaSSA(商品名:リフレックス・レメロン)や三環系抗うつ剤です。

体重増加に対する対処法は、運動や規則正しい食事などの生活習慣の改善なのは言うまでもないのですが、減薬もしないとお薬の副作用で代謝が落ちているために同じ食事量で気を付けていても太ってしまうことがあるのです。

体重増加を起こしにくい観点からはSNRI(サインバルタやイフェクサー)などが挙げられます。

ジェイゾロフトによる体重増加について

賦活症候群(アクチベーションシンドローム)

賦活症候群ふかつしょうこうぐん(アクチベーションシンドローム)とは気分が変に持ち上がってしまう症状の事です。

特に未成年者のSSRIの服用はその頻度が多いことがいわれています。

お薬の服用を始めたばかりの時期に、セロトニン濃度が急激に上昇する事で生じます。
ジェイゾロフトはセロトニンを集中的に増やすSSRIに属するため、賦活症候群の発生には注意が必要です。

うつ状態から気分が持ち上がるなら良いと考えるかもしれませんが、衝動性が高まりキレやすくなっていたり、攻撃的であったり、普段は取らないような選択をしてしまったり、ときにイライラやそわそわ落ち着かないなど不快な症状も多々あります。
またこのときに自殺することもあります。

本人は自身の調子がおかしいことに気づいていないことが多く、あとからあの時おかしかったと気づくことがあります。

原則として原因薬の中止を検討する必要があります。

またうつ病ではなく、背景に双極性障害(躁うつ病)の因子がある可能性も示唆されます。 

他の抗うつ剤との比較

抗うつ剤抗コリンめまい吐気眠気不眠性機能障害体重増加
トリプタノール
(三環系)
++++++±+++-++++
トフラニール
(三環系)
+++++±++++++
アナフラニール
(三環系)
++++++++++++
テトラミド
(四環系)
++-++--+
デジレル
レスリン
++-++-+++
リフレックス
(NaSSA)
-++-+++--+++
ルボックス
デプロメール
(SSRI)
++++++++++
パキシル
(SSRI)
+++++++++++++
ジェイゾロフト
(SSRI)
±+++±+++++
レクサプロ
(SSRI)
++++±+++++
サインバルタ
(SNRI)
+±++±++++±
トレドミン
(SNRI)
+±++±+++±
ドグマチール
スルピリド
±±-±±++

ジェイゾロフト(セルトラリン)の副作用は、他のSSRIと比べて全体的に少なめではあります。

ジェイゾロフトの副作用の特徴

  • 他のSSRIと比較して副作用は少なめ
  • 性機能障害が起こりやすい
  • 下痢が生じやすい(他の抗うつ剤は便秘になる)

離脱症状

ジェイゾロフトを減量したり中止したりするときに「離脱症状」が起こることがあります。

離脱症状ではさまざまな症状が起こるのですが、有名な症状は耳鳴りが「シャンシャン」と鳴り、 頭にビリっと電気が走ったような感覚がきたり、手足が「ビリビリ」としびれる事から俗に「シャンビリ」とも呼ばれています。

その多くは「独断で勝手にお薬を減らしてしまった」「自己判断でお薬を中止してしまった」という例ですが、飲み忘れや、中には医師の指示に従って正しく減薬したとしても、離脱症状が生じてしまうこともありえます。

離脱症状の特徴は再度元の量にお薬を戻せば改善することにあります。

ジェイゾロフトによる離脱症状について、対策や起こってしまった場合どれくらい続いてしまうのかなど解説します。

離脱症状(シャンビリ)とは?

離脱症状とはジェイゾロフトの血中濃度が急に下がったことに身体が対応しきれずに生じる反応です。

離脱症状ではさまざまな症状が起こるのですが、有名な症状は耳鳴りが「シャンシャン」と鳴り、 頭にビリっと電気が走ったような感覚がきたり、手足が「ビリビリ」としびれる事から俗に「シャンビリ」とも呼ばれています。

離脱症状は、ジェイゾロフトの減量で必ず生じてしまう反応ではありませんが割と高率に起こります。
その多くは「独断で勝手にお薬を減らしてしまった」「自己判断でお薬を中止してしまった」という例です。

しかしもちろん中には医師の指示に従って正しく減薬したとしても、離脱症状が生じてしまうこともありえます。

正式には中断症候群ちゅうだんしょうこうぐん

実は「離脱症状」というのは正式な名称ではありません。
論文などでは「中断症候群」と呼ばれています。

ジェイゾロフトからの離脱で起こるという意味では非常にわかりやすいのですが、「離脱」という言葉は「依存」や「中毒」を想定しており、アルコールや依存性のある物質(麻薬など)からの「離脱症状」と同義になってしまいます。

「抗うつ剤の離脱症状」という呼び方から、「抗うつ剤は依存性・中毒性があるもの」という誤解が生じないように、「中断症候群」として区別はしているのです。

ここではわかりやすく「離脱症状」として説明させていただきます。

離脱症状でよくあらわれる症状

基本的には減薬して3日以内にありとあらゆる症状が出現します。

  • 耳鳴り
  • 電気が走るような感じ
  • めまい
  • 発汗
  • 吐き気
  • 震え
  • 不安
  • ソワソワ感


離脱症状が生じる理由

離脱症状は、 抗うつ剤の血中濃度が急激に下がったことに身体が対応しきれない結果として生じます。
私たちの身体は急な変化に弱いのです。

そもそもジェイゾロフト(セルトラリン)は飲み始めてすぐに効果が出る薬ではありません。
だいたい2-4週間服用して徐々に抗うつ効果や抗不安作用を発揮してくるのです。

ちょうどお薬になれて副作用がおちついてくるころに作用するのです。

ところが、この慣れてきた段階からジェイゾロフトの量が急に減ると、神経から神経に情報を伝えるために増やした神経伝達物質「セロトニン」の量も急に変化してしまいます。

すると神経系のバランスが崩れて、その結果として離脱症状が生じてしまうのです。

身体をびっくりさせないようにするためには、ジェイゾロフトの血中の濃度変化は急激ではなく、徐々に減らすようにしないといけません。

実際、離脱症状は、減薬のスピードをゆっくりにすればするほど生じにくくなり、生じたとしてもその程度が軽いのです。

離脱症状が生じたときの対策 -いつまで続くの?-

※必ず主治医と相談の上、主治医の指示に従って行ってください。

ジェイゾロフトで離脱症状が生じてしまうのは「ジェイゾロフトの量を減らしたり中断してしまった場合」「飲み忘れてしまった場合」です。
減薬や中止は独断で行えばもちろんですが、医師に従って行った場合でも起こりえます。

ゆっくり減らしても起こるときは起こってしまうのです。

抗うつ剤というのは「出来れば飲みたくないもの」ですから、少し調子が良くなると「やめてみよう」「減らしてみよう」と考え、自己判断で中断してしまう方がいらっしゃいます。

そして中止した翌日くらいから、徐々に離脱症状が出現してきて、「変な症状が出る」とか「再発してしまった」と相談されるのです。
特に高用量からいきなり中止(100mg⇒0mgなど)した際はほぼ離脱症状がでてしまうことでしょう。

この場合、ジェイゾロフトを再開すれば離脱症状はすぐに(早ければ再開して数時間以内)改善していきます

もしこのまま我慢したとしたらいつまで続くのでしょうか?

基本的には少なくとも1か月は続きます。

個人差がありますし期待値が上がりすぎると不安にもなってしまいますので私は「2-6か月」と伝えております。

医師の指示のもと減薬がうまくいかない場合

では、主治医の指示のもとに慎重に減薬していたのに離脱症状が起こってしまう場合はどうでしょうか?
減らしたいのに減らせないことになってしまいますよね?

一般的には次のような対処法が取られます。

減薬をいったん見送る

一旦ジェイゾロフトを元の量に戻して離脱症状を落ち着けます。
その後、数週間~数か月後に減薬を再挑戦すると不思議とうまくいくことがあります。

今度は大丈夫なのかと不安になることもあるでしょう。

もちろん減薬スピードの調整はかけた方がよいでしょうが、しかし時期をずらすのはしばしば有効な手立てだと思っています。

減薬のペースをより落とす

離脱症状の対処法の基本は「ゆっくりと減薬する」ことです。

ゆっくり、というのはジェイゾロフトの内服する「量」と「期間」の2つに対してです。

例えば、ジェイゾロフト100mg/日からを75mg/日に減薬したときに離脱症状が出てしまったとします。

一旦ジェイゾロフトの量を100mg/日に戻して離脱症状を落ち着けたのちに、75mg/日まで一気にへらすのではなく、87.5mg/日までにしてみてこの量で離脱症状を起こさないことを確認してから75mg/日に減薬するといった具合です。

そして減薬の「期間」ですが、一般的には2週間ペースくらいで(だいたい次の外来で様子をうかがって)減量していく事が多いです。

しかしそのペースで離脱症状が出るのであれば、もっと期間を延ばして1か月してから減らすなど時間をかけてで減らしてみるのが良いでしょう。

他剤に切り替えてみる

理論的には正しいのですが、他の抗うつ剤にシフトするときにも離脱症状が起こりうるのであくまでひとつの策ということになります。

要は離脱症状を起こす頻度が低めの抗うつ剤に切り替えるということです。
もちろんジェイゾロフトもSSRIの中では離脱症状は少ないお薬ではあるのですが・・・。

離脱症状が生じにくい抗うつ剤としては、以下のようなお薬があります。


<離脱症状を起こしにくいお薬>

      リフレックス・レメロン(一般名:ミルタザピン)
      ドグマチール(一般名:スルピリド)
      トレドミン(一般名:ミルナシプラン)

ただし、抗うつ剤を切り替えれば済むという問題でもないことがあり、そもそもジェイゾロフト自体をやめたことで離脱症状が出ることがあるので私はあまりこの手法を行いません。

離脱症状はうつの再発ととらえられやすいことに注意!

抗うつ剤を減量して離脱症状が出現すると、「うつが再発してしまった・・・」「一生薬を飲み続けるしかない・・・」と落ち込んでしまう方がいます。

離脱症状として認識していればまだ良いのですが、うつの再発としてとらえて主治医に相談してしまうと「まだうつがよくないのですね」と元の量に戻されるのならまだしも、他のお薬と併用になったりさらに増量されてしまうケースすらあります。

「離脱症状」と「病気の再発」は別です。

離脱症状は、減薬・中止から3日以内、再発はもっと時間をかけて症状がでてくるものと認識しておいてください。

ジェイゾロフトの半減期と離脱症状

ジェイゾロフトは、離脱症状を起こす可能性のある抗うつ剤の1つではあるのですが、基本的に作用の強さも穏やかで、半減期も長めの抗うつ剤であるため、離脱症状が生じる頻度は他のSSRIやSNRIに比べて多くはありません。

離脱症状を起こしやすい要因は以下の要素である程度決まっています。

        

  • 抗うつ剤の作用時間・半減期(長いほど起こしにくい)
  • 抗うつ剤の強さ(作用が強いほど起こしやすい)

作用時間(≒半減期)が短く、作用が強い抗うつ剤ほど離脱症状を起こしやすいのです。

他の抗うつ剤と比較して

離脱症状はあらゆる抗うつ剤で生じ得ますが、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)で生じやすく、それに次いで初期の抗うつ薬「三環系抗うつ剤」でも生じうる事が知られています。


離脱症状を起こしやすい抗うつ剤

  • SSRI(パキシル、ジェイゾロフト、ルボックス・デプロメール、レクサプロ)
  • SNRI(トレドミン、サインバルタ、イフェクサー)
  • 三環系抗うつ剤(トフラニール、アナフラニール、トリプタノール、ノリトレン、アモキサンなど)

※その他の抗うつ剤では頻度は少なくなります。


軽度なものも含めると約20%程度の頻度で生じると言われています。

前述の通り、離脱症状は抗うつ剤の作用時間(半減期)が短く、強いものほど生じやすくなります。

これは作用の強い抗うつ剤の方が、抗うつ剤の効果が減った時の反動が大きく、作用時間が短ければ血中濃度も変動しやすいからです。

お薬の血中濃度の幅が大きければ大きいほど、身体がそれに対応できなくなり可能性も高くなるのです。

抗うつ剤の強さが強いといっても少し語弊があります。

念のために申し上げますと、抗うつ効果が強いお薬というのは漠然とした表現で、実は最初に処方される抗うつ薬(SSRI・SNRI・NaSSAに属する抗うつ剤)はガイドライン上すべて同等の抗うつ作用を持つと考えられています。

でなければ、一番作用の強い抗うつ剤しか世の中に存在できません。
各製薬会社が、こぞって副作用の少ない効果の高いお薬を出そうとしているのですからガイドライン上ではこのように示すのは当たり前です。

それでもジェイゾロフトが所属するSSRIというクラスの抗うつ剤の中では、それでも明らかにパキシル(パロキセチン)は切れがあり作用が強い(ということは副作用も多い)印象を多くの医師は持っていることでしょう。

それゆえジェイゾロフトよりもパキシルの減薬時の方が、個人的には多く離脱症状を認めていると感じています。

また作用時間についてはお薬の「半減期」という値が参考になります。
半減期はお薬の血中濃度が半分になるまでの時間の事で、そのお薬の作用時間ともとらえられます。

抗うつ剤の種類
抗うつ剤半減期
三環系トフラニール9-20h
三環系トリプタノール18-44h
三環系アナフラニール21h
三環系ノリトレン18.2-35.2h
三環系アモキサン8h
四環系ルジオミール
マプロチリン
46h
四環系テトラミド
ミアンセリン
18h
SSRIパキシル
パロキセチン
14h
SSRIルボックス
デプロメール
8.9h
SSRIジェイゾロフト
セルトラリン
22-24h
SSRIレクサプロ24.6-27.7h
SNRIトレドミン
ミルナシプラン
8.2h
SNRIサインバルタ10.6h
SNRIイフェクサー9.3h
NaSSAリフレックス
レメロン
32h
その他デジレル
レスリン
6-7h
その他ドグマチール
スルピリド
8h

ここで分かる「半減期の短さ」に加えて「作用が強い」SSRIやSNRIが離脱症状を生じやすい抗うつ剤という事になります。

具体的に言うと「パキシル(一般名:パロキセチン)」は離脱症状が多めの抗うつ剤になります。また「サインバルタ(デュロキセチン)」もパキシルほどではありませんが離脱症状はやや多いと感じます。

ジェネリック医薬品「セルトラリン錠」について

最初に開発し、承認後に発売する許可を得た新しい薬効成分を持つお薬を「先発医薬品(新薬)」といいます。

先発医薬品の開発には、十数年にもおよぶ長い研究期間と莫大なコストがかかります。
ほとんどが海外メーカー含め大手の医薬品メーカーに限られてしまいます。

先発医薬品を開発した企業は、医薬品の構造や製造方法、用途について特許権を取得し、特許期間中の20年間はその薬の製造・販売を独占することができます。

先発品の特許が切れ(開発中に特許を取得するので、販売後10年前後で特許切れになることが多い)、他の医薬品メーカーがその技術を借りて製造・販売したものを「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」といいます。

ジェネリックの3つの特徴をみてみましょう。

1.薬価が安い

先発品に比べてジェネリック医薬品の方が薬価が安いというメリットがあります。
どれくらい違うか、飲み始めに処方されるジェイゾロフト錠(セルトラリン錠)25mgで比較してみましょう。

  • ジェイゾロフト錠25mg:85.3円
  • セルトラリン錠25mg:22.9 - 29.9円
  • ※2018年4月改訂の薬価

50円以上違うので、最低容量の25mg錠でさえも1ヶ月で1500円(3割負担なら実質450円)違います。
最大量100mgともなると結構、負担額に差ががあります。

どうすればジェイゾロフトではなくジェネリックの「セルトラリン錠」として処方されるのかですが、処方箋の「後発医薬品に変更不可」の欄にチェックと医師のサインがされてなければ、自動的に薬局でジェネリックに変更されて出されることが多いはずです。

クリニックによってもしくは医師によってジェネリックに対する考え方に違いがありますが、今は基本的にジェネリック医薬品を可としていることが多いと思います。

2.成分は同じでも製造方法は違う

「セルトラリン錠」は先発品の「ジェイゾロフト錠」と成分は同一ですが、コーティングが異なるので苦みの感じ方や飲み安さが異なることがあります。

ただし同じ薬効のはずなのですが、ジェイゾロフトからセルトラリンに切り替えることであまり調子が良くなくなったとか、副作用が出たということもなくはありません。

これはお薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
もちろん先発品と同じように効果の試験をクリアし、血中濃度の変化(薬物動態)も同等になるように設計はされています。

もちろん同じ成分であっても、「ジェネリックで大丈夫なのかな?」と精神的な影響もあるとは思います。

本当に同じ成分・同じ薬効?

先発品の持つ特許のうち、新しい成分に与えられる「物質特許」、その成分に対する新しい効能・効果に対して与えられる「用途特許」の2つの特許が切れてジェネリック医薬品を製造・販売することができるようになります。

ところがあくまでその成分の存在と効能の特許技術を利用するのみであり、先発品が持つ他の特許(例えば製造方法に与えられる「製法特許」、薬を製剤する上での工夫「製剤特許」など)も存在します。

有効期間が残っている場合もありますし、ここまで技術を借りるとジェネリック医薬品なのに先発品と変わらない価格になってしまうかもしれません。

とすれば製造方法や薬のコーティング部分に使われる添加物などを完璧に先発医薬品と同じにすることが実はできないのです。

同じ主成分が同じ量だけ入っていたとしても、実際には薬が吸収される速度や、有効成分が分解される状態が先発品とは多少異なる可能性があるのです。

これによって「効果」や「副作用」の違いが出うるのです。

それでもジェネリック医薬品が先発医薬品と変わらない効果をうたっています。

「有効性の試験」において統計学的に15%の差は「差が無い」としているので、厳密には10%前後の差異があるものとみなした方がよいのです。

3.間違えやすいお薬名

外来で内服薬のことをたずねると「アメルです!」とお答えいただきますが、「アメル」はジェネリック医薬品の販売メーカー名であり、お薬の名前ではありません。

先発品のジェイゾロフトはファイザーの1社から販売されていますが、ジェネリックの「セルトラリン錠」は約20社の製薬会社から発売されております。

名称はすべて「セルトラリン錠」で、薬効成分がそのまま製剤名になっています。
これでは区別がつかなくなるために、成分薬剤名のあとに販売会社の名称が加わっています。

例えば【セルトラリン錠10㎎「アメル」】とか【セルトラリン錠20mg「サワイ」】などその錠剤のあとに容量(mg)と「 」つきでジェネリックの製薬メーカーの名前がつきます。

つまりジェネリックの数だけ「アメル」が存在することになるのですね。

ジェネリック「セルトラリン」のメリット・デメリット

ジェイゾロフトのジェネリック「セルトラリン」は基本的に成分は同じです。
ただし、製造方法やコーティングに多少の差異はあることがお判りいただけたでしょう。

薬価もジェイゾロフトの半値と安く、メリット・デメリットの天秤は「安価であること」と「効果と副作用は変わらないか」ということになります。

日本におけるジェネリック医薬品の承認基準は、他の国と比べて厳しいものとなっています。ですから日本で販売されているジェネリック医薬品は、信頼のおけるものではあるのです。

もちろん臨床試験データで15%前後の差異は認めてはいるのですが、多くの方にとってそれはあまり問題にはなりません。

薬価が安いというメリットは、長期に内服する必要のある抗うつ剤にとってはとても重要なことではあります。
最初からジェネリックであればその心配はないかもしれませんが、先発品から切り替えるときに調子を崩してしまったり、副作用がでないわけではないことは十分認識しておく必要があるでしょう。

太るの?痩せるの?

精神に作用するお薬(向精神薬)は、服用を続けていると太りやすいものが多くあり、ジェイゾロフトも太ってしまうお薬です。

ところがネット上やSNSに「ジェイゾロフトは痩せる」という書き込みがあり、太るという噂とともに痩せるという噂もあります。
これはいったいどちらが正解なのでしょうか?

実はどちらも正解なのです。

「では自分はどっちになっちゃうの?」、「痩せるならまだしも太るのは・・・・」

ジェイゾロフトの体重の変化に関する副作用について解説しましょう!

痩せもするし、太りもする

ジェイゾロフトは数か月以上長期に内服していると基本的に太る可能性のあるお薬です。

ただ、ジェイゾロフトの添付文書では体重について以下のように記載があります。

  • 体重増加(頻度:1%未満)
  • 体重減少(頻度:1%未満)

体重増加(太る)と体重減少(痩せる)の両方の報告があるのですが、これはどういうことでしょうか?

実は、一時的に痩せる事はあり、長期的に見て太るという意味なのです。
添付文書は発売後の試験データをもとに作られていますが、ある一定期間の間では痩せる人と太る人が同程度いたのです。

もちろん痩せた人もさらに内服を続ければ太った可能性があります。
むしろその可能性の方が高いはずです。

ジェイゾロフトは、飲み初め初期は「下痢」や「吐き気」を起こしやすい特徴があり、最初は痩せる傾向があるのです。

しかし長期的にみると、ジェイゾロフトは確実に太る方向(運が良くても痩せ続けることはよっぽどなことがない限りない)と考えられます。

体重減少の記載が添付文書にあるのは、下痢や食欲不振などによる一過性の体重減少をとらえたためだと思われます。

大抵の場合、抗うつ剤はある程度長い期間服用するものです。そのため一時的には痩せても、長期的みれば太る方向になることがほとんどです。

痩せるのは最初だけ

ジェイゾロフトで痩せるのは、飲み始めの頃だけ痩せることがあるというだけなのです。

長期的に見れば基本的に太る方向に向かいます。

ジェイゾロフトを飲み始めると、しばしば「下痢」「吐き気」「食欲不振」などの副作用が生じます。
下痢が続けば体重は落ちるし、吐き気や食欲不振でもまた当然痩せていきます。

飲み始めて1-2週間経つと副作用は改善します。

今度は抗うつ効果が出始めるとともに、代謝をおさえてしまいエネルギー消費の悪い身体にかわっていきます。
すると食事量も戻り、代謝が悪いために元々の食事量を摂取しても結果太っていってしまうのです。

ほとんどが現状維持が太る方向で、痩せ続けていくというケースは稀です。

なぜ太る!?その原因とは?

これはジェイゾロフトだけでなく、多くの抗うつ剤に共通するのですが、このお薬が持つ2つの作用によります。


  1. 抗ヒスタミン作用
  2. 代謝抑制作用

抗ヒスタミン作用で食欲UP!

ヒスタミンとは、セロトニンと同様に神経伝達物質の1つです。
ジェイゾロフトには抗ヒスタミン作用といって、ヒスタミンによる神経伝達をブロックしてしまう作用があるのです。

ちなみに、抗ヒスタミン作用で有名なお薬は風邪薬や花粉症などのアレルギー薬です。

神経伝達物質ヒスタミンの様々な作用の1つに「食欲を抑える」作用があります。
ヒスタミンをブロックするということは「食欲がおさえられない」ということになります。

また代謝抑制作用というのは、エネルギーの消費量が落ちるということです。
車ならうれしい作用ですが、人間にとっては余計なお世話です。

代謝が落ちれば、仮にいつもと同じ食事量でもエネルギーが余って脂肪として蓄えられてしまうのです。

他の抗うつ剤と比べて太りやすいの?

ジェイゾロフトは他の抗うつ剤と比べると太りやすい部類ではありません。

なるべく体重増加を起こしたくない場合には、良いでしょう。
もちろん絶対に太らないわけではありませんが、太りやすい抗うつ剤よりはましという意味です。

ちなみに太りやすいお薬は抗ヒスタミン作用が強い以下の3種類です。


  1. リフレックス・レメロン(一般名:ミルタザピン)
  2. パキシル(一般名:パロキセチン)
  3. 三環系抗うつ剤

第一選択になる抗うつ剤の中でそれでも太りにくいお薬は、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込阻害薬)になります。
(※SNRIに属するお薬:トレドミン、サインバルタ、イフェクサー)

SNRIはジェイゾロフトの属するSSRIとは少し異なる分類の抗うつ剤で「セロトニン」だけでなく、「ノルアドレナリン」という代謝を促進させるアドレナリン系を増やす作用があるのです。

抗うつ剤の種類
抗うつ剤太りやすさ
三環系トフラニール++
三環系トリプタノール+++
三環系アナフラニール++
三環系ノリトレン++
三環系アモキサン++
四環系ルジオミール
マプロチリン
++
四環系テトラミド
ミアンセリン
SSRIパキシル
パロキセチン
++
SSRIルボックス
デプロメール
SSRIジェイゾロフト
セルトラリン
SSRIレクサプロ
SNRIトレドミン
ミルナシプラン
±
SNRIサインバルタ±
NaSSAリフレックス
レメロン
+++
その他デジレル
レスリン
その他ドグマチール
スルピリド


体重増加への対策

「精神科のお薬」=「太る」はかなり有名なようで多くの患者さんに聞かれます。

ただ必ずしも薬だけが原因であるとは思わないで欲しいのです。

お薬でも食欲は増え・代謝は落ちるしと、たしかに太りやすい体質にはなってしまいます。
しかし、状態が不安定であればその症状によって過食になっていることもあるのです。

精神が不調な時は太りやすいというのもまた事実で、治療することで逆に過食が治まることもあるのです。

(症状としての過食であれば、気分安定薬で落ち着くこともあり、そうであればジェイゾロフトを減薬することが可能かもしれません。)

以上のことをご理解いただいたうえで、対策について解説しましょう。

飲み始めたら生活習慣に注意する

規則正しい生活、適度な運動などの代謝を改善することは重要です。
あくまで抗うつ剤は太りやすくなるというだけで、勝手には太りません。

間食に注意しつつ、軽い運動をできたら取り入れましょう。
食事も早食いはせず、よく噛むこと=太りにくさの有効性も言われています。

減薬する

状態が安定しているのであれば、減薬は有効です。
ただし、うつ治療においては十分量を十分な期間内服するという原則があります。

基本少しぽっちゃりしてきても、医師側からその期間中に減薬を支持するのは糖尿病のリスクが高まったり、高血圧が目立ったり、脂肪肝で肝障害が進行した時です。

美容目的で減薬はしません。

治療期間中で、(残念ながら?)身体が健康な場合には自助努力が促されることでしょう!

別の抗うつ剤に変更する

別の抗うつ剤に変えるは理論的に有効ですが、私はあまりやりません。
薬を変えるときに、状態が変わったり他の副作用が出たり、ときに離脱症状がでることもあるからです。
という手もあります。

薬を変える上で候補に挙がる「太りにくい」SNRIでしょうか。


  • サインバルタ(一般名:デュロキセチン)
  • トレドミン(一般名:ミルナシプラン)
  • イフェクサー(一般名:ベンラファキシン)

また、四環系抗うつ剤やデジレル・レスリン(一般名:トラゾドン)なども体重増加の副作用は少なめです。
これらは第一選択の抗うつ剤ではなく、抗うつ作用も弱いのでよっぽどなことがない限り、ジェイゾロフトをやめてまでこちらへの変更はないでしょう。

太った体重は元に戻せる?

残念ながら、減薬や中止して勝手に戻ることはありません。
生活習慣(食事と運動)を正し、ダイエットは必要になります。

もちろん過剰なダイエットは不要です。
お薬の減薬や中止によって太りやすい体質は改善します。

ただし痩せる方向に動かなければ勝手に改善はありません。

実際、患者さんからも「やめれたから勝手に痩せるものかと思ってた」と残念がられたことがあります。

吐き気はよくある副作用

ジェイゾロフトの吐き気は、内服初期に起こりやすい副作用です。

飲んで数時間経つとなんだか気持ち悪くなってくるので、不安になってしまう方も多いです。

ジェイゾロフトは「脳のセロトニンを増やす」ことによって抗うつ効果を発揮しますが、脳以外の様々な部位のセロトニンを増やしてしまい、胃腸など消化管のセロトニン受容体を刺激することで吐き気が生じてしまうのです。

※セロトニン受容体のうち、脳に存在するのは10%程未満で残り90%以上は脳以外(脳以外で一番多いのは胃や腸などの消化管)に存在しているのです。

副作用の少なさがウリのジェイゾロフトですが、「吐き気」に関して言えば多く発生してしまう副作用になります。

他の抗うつ剤との比較を表で示します。

抗うつ剤の種類
抗うつ剤吐き気の出現頻度
三環系トフラニール±
三環系トリプタノール±
三環系アナフラニール
三環系ノリトレン±
三環系アモキサン±
四環系ルジオミール
マプロチリン
四環系テトラミド
ミアンセリン
SSRIパキシル
パロキセチン
++
SSRIルボックス
デプロメール
+++
SSRIジェイゾロフト
セルトラリン
++
SSRIレクサプロ++
SNRIトレドミン
ミルナシプラン
SNRIサインバルタ++
NaSSAリフレックス
レメロン
その他デジレル
レスリン
その他ドグマチール
スルピリド

対処法
様子をみる

1-2週間で自然に改善するため経過を見るのがまずは良いでしょう。

胃薬を併用

胃薬を一緒に処方されている場合もあります。
市販薬も有効です。

抗うつ剤の種類を変える

ジェイゾロフトは吐き気が出やすいお薬ですので、吐き気が少ないものへの変更は有効です。

リフレックス/レメロンやドグマチールが候補になるでしょう。

ただし、リフレックス/レメロンは吐き気は起きませんが、体重増加や眠気など別の副作用が問題になりがちです。

ドグマチールは抗うつ剤ですが、もともとは胃薬として開発されています。
抗うつ効果もジェイゾロフトと比べると弱くなりますのでその点は注意が必要になります。

つらい日中の眠気と倦怠感

ジェイゾロフト(セルトラリン)の副作用で、日中の眠気によって仕事に支障が出てしまうことがあります。

花粉症などのお薬と同じで抗ヒスタミン作用によるのですが、お薬によって起こる眠気は我慢できるものではありませんね。
もちろん全く問題ない人もおり、かなり個人差が大きいのです。

眠気が出てしまうようならお薬を変えるしかないのでしょうか?

なぜ眠気が出てしまうの?

ジェイゾロフト(セルトラリン)は、脳の神経伝達物質を調整することで抗うつ効果を発揮する抗うつ剤です。
神経伝達物質というのは、神経細胞と神経細胞の情報のやり取りをする物質のことで、脳の活動は電気信号だけでなく物質によっても制御されているのです。

神経伝達物質にはセロトニンやノルアドレナリン、ドパミンなどがあり、セロトニンは落ち込みや不安を、ノルアドレナリンは意欲や活気を、ドパミンは楽しみや快楽に関連しています。

ジェイゾロフトは主にセロトニンに作用させる抗うつ剤ですが、セロトニン以外の余計な神経伝達にも効果を出してしまうことがあります。

これが「日中の眠気」につながってしまうのです。

具体的に眠気が生じる主な原因は、抗ヒスタミン作用によります。
花粉症のお薬や風邪薬で有名な作用ですね。

ヒスタミンも脳の神経伝達物質の1つです。
神経伝達物質「ヒスタミン」がブロックされることで眠気がでてしまうという点は、花粉症役や風邪薬と全く同じかそれ以上に感じることもあるでしょう。

抗ヒスタミン作用以外にも眠気やだだるさに関連する作用がある

抗ヒスタミン作用以外にも α1受容体ブロック作用、5HT2(セロトニン2)受容体ブロック作用などもあり、これらによっても眠気を招いてしまいます。

このために、風邪薬や花粉症のお薬よりも眠気やが強く感じられることがあります。

ジェイゾロフトの場合は抗ヒスタミン作用以外にも、だるさ(倦怠感)もでてしまうことがあります。

これには、α1受容体ブロック作用(αとはアドレナリンのこと)で、アドレナリンがブロックされると血圧が低下し、ふらついたり、ボーッとしたりします。

眠気にどう対策できる?

ジェイゾロフトは最小量で25mgから開始します。
徐々に増やしていくお薬で、初回投薬から1~2週間後には倍の50mgになると思います。

早ければ25mg時点で、通常50mgから眠気が問題になってくることが多いようです。

では眠気に対してどのように対策できるでしょうか?

様子をみる

実は飲み始めたばかりのときは、少し様子をみることが最も有効な方法です。

ジェイゾロフトの副作用は基本的に飲み初めだけのことが多いのです。
おそらくその副作用が出てから1-2週間では落ち着いてくることがほとんどでしょう。

半分以上のケースで様子を見たら副作用が大分軽くなってきたとおっしゃる方が多いので、まずは何とか様子がみれる程度であれば、少し様子をみてみましょう。

服用時間を変える

飲む時間を変えるはとても有効な手です。

実は「いつ飲まなければいけない」という記載は添付文書にもありません。
毎日同じ時間に飲めば、飲む時間は規定されていないのです。

薬袋には「朝食後」など書かれているかもしれませんが、ここは調整可能なのです。

朝飲んで眠気がくるのであれば、夕食後や眠前に飲むようにしてみてどうかを検証すればいいのです。
眠気が出ても眠る時間だったら問題ありませんよね?

薬を減薬する・増薬をいったんストップしてもらう

ジェイゾロフトは初回25mg錠からスタートします。
基本的に1-2週間ごと(次回の外来ごと)に25mgずつ増量します。

基本的に抗うつ剤は十分量を十分な期間内服するのが治療法となりますので、主治医の先生は増薬するスタンスであることを認識しておきましょう(通常50~100mgまで増量します)!

最初の25mgからすでに眠くなってしまうようであれば、いったんそのまま増薬せずに様子を見てもらうようにします。

ただし、うつ症状や不安症状が強い場合にはこの量で効くことはほとんどないでしょうから増薬が望ましいです。
もしお仕事をされていて支障がでるようなら、増薬スピードを緩めてもらいましょう(例えば、次の外来では薬の量はまだかえたくない意思を伝えてみるなど)。

抗うつ作用が出てくるのも遅くなってしまいますが、副作用の程度が軽くなるというメリットがあります。

ほとんど外にでることがないのであれば、眠気の副作用だけであれば増薬が良いと思います。

ジェイゾロフトは25mgがスタート量であることはおわかりいただいたかもしれませんが、それで眠気が強すぎるのであれば、実は半分に割って12.5mgにしてみるという手もあります。

25mg → 50mg → 75mg(1日最大量は100mg)と増薬中に眠くなる副作用が出た場合、いったん元の量に戻すことも有効です。

一緒に飲んでいるお薬や飲酒が問題なことも・・・

併用薬によっては、ジェイゾロフトの副作用を強くしてしまうことがあります。

添付文書上で併用注意のお薬は以下のものになります。

  • タガメット(胃薬)
  • トリプタン系(片頭痛薬)
  • トラムセット(鎮痛薬)
  • トルブタミド(糖尿病薬)

また、薬ではありませんがアルコールとの併用も注意が必要です。
お酒を飲んでいたら、 ジェイゾロフトの血中濃度が不安定になり、眠気が強く出る可能性があります。

肝機能・腎機能に問題はないですか?

肝機能や腎機能が悪い方は、お薬の排泄の機能が落ちているため、通常量を投与してしまうと、強く効果がですぎてしまう場合があります。

血液検査や健康診断で肝機能障害、腎機能障害を指摘されている場合、必ず主治医に伝えましょう。

定期的に採血検査を行っているクリニックも多いでしょから基本大丈夫かとは思いますが、万が一しばらく採血検査を行っていなくて副作用が強く出るときにはこのことも相談してみましょう。

薬を変える

「ジェイゾロフトから変えてみましょうか?」と提案を受ける場合もあります。

飲み初めの場合には有効な手ですが、ジェイゾロフトの抗うつ効果をすでに感じているのであれば、薬を変えてしまうのは少しもったいないかもしれません。
この場合は減薬が良いでしょう。

飲み初めで、1-2週間様子を見ても、飲む時間を変えても問題が残る場合、これではなかなか増量できない場合には抗うつ効果が期待できません。

この場合のみ薬を変えるのはありでしょう。
主治医とよく相談して決めるべきですが、「眠気が少ないもの」なら(ジェイゾロフトも該当しますが・・・)、ドグマチールやレクサプロ、サインバルタ、トレドミンあたりが候補に挙がるでしょう。

次に抗うつ薬の眠気の副作用の強さを紹介します。

他の抗うつ剤との比較

抗うつ剤の中でもジェイゾロフトは眠気の副作用が出やすいイメージのものではありません。

もちろん抗ヒスタミン作用などによって眠気が誘発されることはあるのですが、どちらかというとむしろ他の抗うつ剤で眠くなって困るときに変更するお薬の候補でもあるのです。

抗うつ剤の種類
抗うつ剤眠気
三環系トフラニール
三環系トリプタノール++
三環系アナフラニール
三環系ノリトレン
三環系アモキサン
四環系ルジオミール
マプロチリン
++
四環系テトラミド
ミアンセリン
++
SSRIパキシル
パロキセチン
SSRIルボックス
デプロメール
SSRIジェイゾロフト
セルトラリン
±
SSRIレクサプロ±
SNRIトレドミン
ミルナシプラン
±
SNRIサインバルタ±
NaSSAリフレックス
レメロン
+++
その他デジレル
レスリン
++
その他ドグマチール
スルピリド
±

ジェイゾロフトによる眠気は、一般的にはそれほど強くはないのですが、個人差によって出てしまうことがあります。

ジェイゾロフトから薬を変更する場合、基本的には抗うつ薬の第一選択(SSRI・SNRI・NaSSAの3種類)のお薬から選びます。

ジェイゾロフトはSSRIというクラスのお薬です。
この中では実はジェイゾロフトの眠気の頻度は少なめです。眠気の点で同じクラスの中から変えるのならレクサプロ一択でしょうか。

次にジェイゾロフトと異なるSNRIというクラスです。
SNRIはセロトニンだけでなくノルアドレナリンにも作用します。

ノルアドレナリンは意欲や活気を上げる「覚醒系」の物質であるため、眠気は起こしにくくなります。

SNRIのひとつ、トレドミンは効果が弱い代わりに副作用も軽いため、眠気はかなり少なくなるでしょう。
サインバルタも効果の割には眠気の頻度は少なく、個人的にはジェイゾロフトから変えるのであればSNRIならサインバルタかイフェクサーだと思います。

最後にNaSSAというクラスですが、これは鎮静系抗うつ薬と言われるくらい眠気がでやすいお薬です。
眠気の副作用で困っている方にこのクラスの抗うつ薬への変更はよっぽどなことがない限りないと思います。

不眠になることも・・・

日中の眠気の副作用もあるのに、逆に眠れなくなってしまうことがあるのです。

早朝に目覚めてしまったり、夜中に何度も目覚めてしまったり・・・

ジェイゾロフトによってもたらされる不眠とその対策についてご紹介します!

なぜ不眠になるの?

ジェイゾロフトは神経伝達物質「セロトニン」を増やす働きがあります。

神経と神経の伝達は、セロトニンをはじめとした神経伝達物質でやり取りされており、その受け取り窓口になるのが「受容体じゅようたい」です。

薬によって増えたセロトニンは、受け取り側の神経細胞の「受容体」という部分にくっついて様々な効果を出します。

その神経伝達物質の受容体(受け取り窓口)には色々あり、脳の神経に作用して「気分を持ち上げる」「眠くするもの」、胃腸の神経なら「吐き気を起こす」、自律神経なら「便秘、口渇を起こす」など様々です。

ジェイゾロフトは抗うつ剤ですから「気分を持ち上げる」だけの作用が良いのですが、そううまくはいかず実際はいろいろな受容体に作用して余計な作用が出てしまいます。

不眠が起こるのは、ジェイゾロフトによって増やされた神経伝達物質「セロトニン」が気持ちを高めてくれると同時に脳を覚醒させる方向にも作用させてしまうからなのです。

具体的には5HT(セロトニン)2A受容体を刺激するためと考えられています。

セロトニン2A受容体を刺激されると、無気力を改善させたりという良い働きもあるのですが、脳の覚醒レベルを上げるため、これによって不眠になりやすくなってしまいます。

また、脳が働いてしまうため睡眠も浅くなり夢(嫌な夢のことも)も見やすくなります。

他の抗うつ剤と比べてどうか

不眠が神経伝達物質「セロトニン」を増やすという、抗うつ作用の裏返しで起こることはご理解いただけたかと思います。

つまりセロトニンを積極的に増やす抗うつ剤(SSRI・SNRI)でよく認める症状なのです。

同じセロトニンを増やす抗うつ剤でも、SSRIやSNRIほど積極的でない三環系抗うつ剤(古い初期型の抗うつ剤)でも認められますが、SSRIやSNRIほどではありません。

不眠の副作用がほとんどない抗うつ剤も存在します。
睡眠作用が強く「鎮静系抗うつ剤」と呼ばれるもので、四環系やデジレル、Nassa(リフレックス/レメロン)が該当します。

抗うつ剤が及ぼす睡眠への影響

  • SSRI、SNRI、三環系・・・不眠になりやすい
  • Nassa、四環系、デジレル・・・強く眠気をもたらす

抗うつ剤の種類
抗うつ剤不眠の作用
三環系トフラニール++
三環系トリプタノール-
三環系アナフラニール
三環系ノリトレン
三環系アモキサン++
四環系ルジオミール
マプロチリン
-
四環系テトラミド
ミアンセリン
-
SSRIパキシル
パロキセチン
++
SSRIルボックス
デプロメール
SSRIジェイゾロフト
セルトラリン
++
SSRIレクサプロ++
SNRIトレドミン
ミルナシプラン
SNRIサインバルタ++
NaSSAリフレックス
レメロン
-
その他デジレル
レスリン
-
その他ドグマチール
スルピリド
-

不眠に対する対策

ジェイゾロフトによって「不眠」が生じてしまったときはどのような対処法があるでしょうか。

※必ず主治医と相談の上お願いします。

様子をみる

抗うつ剤の副作用においてこれは鉄則です。
なぜならほとんどの副作用が、1,2週間で改善しうることが多いからです。

不眠はいつまで続く?

飲み始めてから明らかに眠りが浅くなったという場合、飲み続けていると慣れてきて、1~2週間で不眠はよくなっていきます。

ただもともと不眠が強い方の場合には、睡眠状態がよくなるわけではないので別の対処法が必要になるでしょう。

減薬する

ジェイゾロフトをはじめ抗うつ剤は一般的に少量からスタートして徐々に(1~2週間ごと)量を増やしていきます。
急激に神経伝達物質「セロトニン」が増えると、副作用がでやすくなってしまうためです。

飲み初めは良かったのに、増やしたら急に不眠があらわれた場合、そのまま様子をみてしまうか生活に支障が出る場合には元の量に戻すのが良いでしょう。

「急に減薬したら離脱症状は大丈夫?」と心配される方もいますが最近(1-2週間以内)増やしたお薬であれば問題ありません。

離脱症状についてはこちらの記事をご参照ください。

最初のスタートから不眠が強い場合には、中止するという選択になります。
例えば、ジェイゾロフトはスタート量25mgからなのですが、それで不眠が出てしまうなら12.5mgへ減らし少し様子をみるとかしてみるわけですね。

様子を見るか、減薬・中止するかは日常生活に支障があるかどうかで選ぶことになります。
減薬・中止の場合はすぐに主治医と相談し、違うお薬に変更ということになります。

睡眠薬や、睡眠作用を持つ抗うつ剤と一緒に飲む

ジェイゾロフトとは別に睡眠薬を一緒に服用するのが一般的です。

もともとジェイゾロフトを飲む前から不眠があるようであれば睡眠作用の強い抗うつ剤を一緒に飲むと効果的です。

睡眠作用の強い抗うつ薬

  • 四環系抗うつ剤(ルジオミール、テトラミドなど)
  • Nassa(レメロン、リフレックスなど)
  • デジレル・レスリン
別の抗うつ剤に変える

飲み初めたばかりであれば変更はしやすいので、別の抗うつ剤に変えるのも手です。

睡眠作用の強い「鎮静系抗うつ剤」に切り替えるのが有用ですが、太る副作用もあるのと主治医の先生のジェイゾロフトを処方している理由などもあると思うので、このあたりは主治医の先生とよく相談してください。

※睡眠作用の強い抗うつ剤は、「日中の眠気」「倦怠感」「ふらつき」「太る」などが出やすいです。

ジェイゾロフトと同じSSRIの中での変更もありです。
特徴は理論的には似ていますが、やはり個別に少し特徴の差異はあります。

実際、同じSSRIや類似のSNRIの中での抗うつ剤の変更で副作用や場合によって抗うつ効果や抗不安効果の改善を認める例はあります。

逆に悪くなることもありますのでこればかりは飲んでみないとわかりません・・・。

未成年、妊婦、授乳婦の服用に関して

ジェイゾロフトの未成年者や妊婦さん・授乳婦さんの服用は大丈夫でしょうか?

いずれにおいても服用は可能ですが、「必要と判断される場合に限り慎重に」という考えです。

未成年者の服用

ジェイゾロフトに限らずSSRIは、18歳未満の未成年に対する有効性は確立していません。

これはパキシルでの事例になりますが、効果がないばかりかかえって衝動性を増して自殺につながるケースなども報告されています。

すくなからず一般的にすべての未成年者に有効ではないものの、一部では有効性を発揮することもあります。

ですから未成年者ではその適応は慎重に判断となるのです。
保護者も子供が飲み始めてからの様子を観察できる状況にないといけないわけですね。

妊婦の服用

妊婦さんも内服は可能ですが「必要な場合に限り慎重」という位置づけです。

ジェイゾロフトに明らかな催奇形性(薬の影響で胎児になんらかの影響をあたえてしまうこと)は報告されてはいません。

以下のようにA・B・C・D・×の5段階で危険度が示されています。

FDA分類

  • A: ヒト対照試験 危険性が だされな ヒト対照試験で、危険性がみいだされない
  • B: ヒトでの危険性の証拠はない
  • C: 危険性を否定することができない
  • D: 危険性を⽰す確かな証拠がある
  • X: 妊娠中は禁忌

薬の胎児への危険度はジェイゾロフトは「C:危険性を否定することはできない」です。
ですから絶対に服用してはいけないわけではないけど、絶対安全ともいいきれないという位置です。
飲んでも構わないけど、たぶん大丈夫という感覚なのです。

ちなみにSSRIではパキシル以外は「C」で、 パキシルのみ一段階リスクが高い「D」になっています。

薬自体の危険度以外にも、妊娠のどの時期にあるかも関連します。
一般に妊婦さんの時期による薬の服用については以下のように考えられています。

受精前(⾮妊娠時)

・体内に⻑期間蓄積されるくすりのみが問題となる

その可能性が否定されていない医薬品

  • ⾓化症治療薬 エトレチナート(チガソン®)
  • 抗C型肝炎ウイルス薬 リバビリン(レベトール®)
受精から2週間(妊娠3週末)まで
  • この時期は、多数の細胞に傷害が与えられれば胎芽死亡(流産)となり、死亡しなければ傷害は修復されその後は正常発⽣が継続できる“All-or-None”の時期といわれる
  • つまり くすりによる児の形態異常の可能性はない
妊娠4週以降12週末まで
  • 器官形成期を含み 児の形態異常発⽣に最も重要な時
  • 器官形成期を含み、児の形態異常発⽣に最も重要な時期
  • 特に、妊娠9週末までは児の⼤きな形態異常の可能性がある
  • ただし、ヒトで児に形態異常を発⽣させることが証明されているくすりは、実は少ない
妊娠13週以降
  • この時期になると、形態異常の可能性はなく、胎児の機能障害が問題となってくる
  • ただし、ヒトで児の機能障害を発⽣させることが証明されているくすりは実は少ない
授乳中の服用について

授乳中も服用自体は可能です。

ただし母乳中に数%含んでしまいますので、赤ちゃんは少なからずすごく薄いジェイゾロフトの成分を飲んでしまうことになります。

服用する際は母乳栄養は中止して人工乳栄養に切り替えるのが賢明ではあるものの、母乳が赤ちゃんに与えるメリット(母子のコミュニケーション、免疫を付与して感染にかかりにくくする)などを考慮して絶対だめとはせず、こちらも慎重にみていくことになります(例えば服用タイミングを見計らって一日1回は母乳にするなど)。

まとめ -飲み初めに知っておくべきこと-

ジェイゾロフト(セルトラリン)はSSRIに属する抗うつ剤で、神経伝達物質セロトニンを増やすことで抗うつ効果、抗不安作用を発揮します。

基本少ない量から始めて、少しずつ増やしていくお薬です。

具体的には1日25mgから始め、1週間以上の間隔をあけて25mgずつ増やしていきます。
(1日100mgまで増やす事が推奨されています。)

効果は飲み始めてからすぐに出るわけではありません。
およそ2-4週間くらいしてからとタイムラグがあるのが特徴です(すべての抗うつ剤においてそうです)。

ガイドライン上では十分な量を十分な期間服用するとされていますので、効き始めてもすぐには減薬はしません。
飲み続ける期間は9か月~13か月と1年程度飲むと認識しておく必要があります。

効果が不十分な場合は、増量あるいは他のお薬に変えたり併用したりします。

1年程度服薬を続けて、安定していることが確認できれば、その後2~3ヶ月かけてゆっくりとお薬を減薬していき治療終了です。

効果の発現は遅いのですが、残念ながら副作用は内服初期から出現します。

最初は、吐き気や胃の不快感などが多くでます。
医師によってはあらかじめ胃薬をあわせてだしてくれる場合もあります。

この症状は1,2週間で落ち着きますので様子をみていれば気にならなくなるはずです。
どうしてもつらい場合は、ジェイゾロフトの服用を中止して別の抗うつ剤に変えるという選択肢をとることもあります。

まれに、イライラしたり攻撃性が高くなったり、ソワソワと落ち着かなくなったり、自傷行為をしたり攻撃的になったりかえって服用することで不安定になることがあります。

これは躁状態の一種で、必ずしも躁状態がハイテンションになるわけではないことを知っておく必要があります。
この場合には、抗うつ薬をやめて気分安定薬を中心としたお薬に切り替える必要があるため早めに主治医にこのことを報告する必要があります。


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