抗不安薬(不安をおさえる作用を持つ)デパス(ジェネリック:エチゾラム)は、飲んでから比較的すぐに効果を実感できるため頓服としても用いられます。
「頓服」または「頓用」というのは、症状が出た時や不安の発作時だけワンポイントで服用する飲み方です。
デパスの頓服ついて紹介します。
頓服とは
頓服(頓用)というのは、「症状が出た時や発作時だけお薬を服用すること」です。
逆に、普段から朝昼晩と飲んだり、朝だけ毎日など定期的に内服することを「常用」と言います。
例えば痛い時だけロキソニンやバファリンなど痛み止めの薬を飲むのは頓服です。
一方で、毎朝血圧の薬を忘れずに飲むのは常用です。
定期的に服薬する方法は、即効性はあまりなく、症状が強いときにぱっと効かせるような一時的な作用は強くはありません。
しかし、一日を通して確実に症状を抑えてくれるという特徴があります。
その場しのぎではない、根本的な治療となるものも少なくありません。
頓服には、「即効性があること」「効果・作用が強いこと」が期待されます。
デパスは、服薬してから血中濃度が最大になるまでには3時間かかるのですが、それよりも早い時間で効果を実感できるため、頓服としても用いられているのです。
デパスの頓服は「不安発作」「肩こり」「不眠」に効果あり
デパスは基本的には「不安が強くなってしまった時」「不安が強くなる事が予測される時」に頓服として使用します。
<デパスを頓服する状況の例>
- パニック障害で不安発作が出たとき・出そうなとき
- 電車が苦手な人が電車に乗る前に
- あがり症の人が人前でのスピーチ前に
- 会食が苦手な人が会食の前に
またデパスには筋弛緩作用(筋肉を緩める)があるため「肩こりが強いとき」、「肩こりによる頭痛が強いとき」に、催眠作用(眠くする)もあることから「睡眠薬として不眠時に」頓服として使用することもあります。
内服のタイミングについて
デパスは、内服してから約3時間で血中濃度が最大になり、その後6時間ほどで半減期(血中濃度が半分に減ってしまうまでの時間)を迎え作用は減弱していきます。
血中濃度が最大になるのは内服後3時間程度してからですが、実際には内服後20-30分ほどで効果を感じ始めることが多く、即効性が期待できます。
ただ、血中濃度のことを考えれば不安が高まる前に飲んでおくのが頓服としてのベストな使用方法でしょう。
スピーチや発表、会食の前に予防的に飲むのであれば、ベストはイベントの少なくとも1-3時間前に服薬しておくのが良いと思います。
頓服としてのデパスの使用量
頓服として使用する量は1回0.5mgが一般的です。
0.5mgだと不十分な場合は1.0mgを、反対に0.5mgだと効きすぎてしまう場合(副作用で眠気やだるさがくる場合)は、0.25mgなど低用量で使っても問題はありません。
1.5mgや3.0mgといった高用量を1回で飲むことが絶対にダメというわけではありませんが推奨はされません。
副作用の眠気やふらつきが強く出てしまう可能性がありますし、何よりも高用量の服薬は耐性・依存性が生じるのを早めてしまうからです。
多く使えば強くは効きますが、副作用や依存などの害も大きくなることを忘れてはいけません。
デパスの副作用や依存性については下記の記事にて解説しています。
デパスの頓服が効かないとき・・・
デパスを頓服として使用しても十分な効果が得られないという場合はどうすればいいでしょうか。
いくつかの可能性を考えましょう!
効果が出るまでに時間がかかる可能性
まず考えて欲しいのは、効かないのではなく、時間が経たないと効かない可能性があるということです。
最大血中濃度になるのには3時間かかります。
効果は早くに感じられることが多いのですが、個人差がかなりあることを認識してください。
デパスは服薬してから効果が最大になるまで3時間かかり、薬物動態的には決して即効性に優れるお薬ではありません。頓服として使われることが多いのは、その即効性が評価されているわけではなく、効果が全体的に強いためです。
そのためにイベント前の1-3時間前までに服用することが大事なのです。
量が足りていない可能性
量が足りないこともあります(これをすぐに考えがちですが、まずは飲んでから最低1時間置きたいところです。)
先述しました通り、デパスを頓服として使用する際の内服する量は1回0.5mgが一般的です。
そして0.5mgでは不十分な場合は1.0mgに増薬します。
つまり0.5mg錠を内服して1時間しても効果が出ない場合にさらに0.5mg錠を内服するのです。
ではどのくらい1回の頓用で内服して良いのでしょうか?
以下は添付文書における定期で内服する際の使用量です(頓服ではありません)。
神経症, うつ病の場合
通常, 成人にはエチゾラムとして 1 日 3 mgを 3 回に分
けて経口投与する.心身症, 頸椎症, 腰痛症, 筋収縮性頭痛の場合
通常, 成人にはエチゾラムとして 1 日1.5mgを 3 回に
分けて経口投与する.睡眠障害に用いる場合
通常, 成人にはエチゾラムとして 1 日 1 ~ 3 mgを就寝
前に 1 回経口投与する.なお, いずれの場合も年齢, 症状により適宜増減するが,
高齢者には, エチゾラムとして 1 日1.5mgまでとする.
うつ病や不安神経症には1回1mgで1日3回、肩こりなどには1回0.5mgで1日3回、睡眠薬としては1回1-3mgとしています。
これに準じると、不安に対しては1回1mg、肩こりは1回0.5mg、睡眠薬としては1回1-3mgとなります。
(睡眠薬としては連用しがちなので依存のリスクからは個人的に1.5mgまでを推奨します)
即効性のあるお薬に切り替えるのも手段
例えば、即効性に優れると報告されている抗不安薬には次のようなものがあります。
【リーゼ(クロチアゼパム)】
抗不安作用:弱い
最大血中濃度到達時間:約1時間
【レキソタン(ブロマゼパム)】
抗不安作用:強い
最大血中濃度到達時間:約1時間
【セルシン(ジアゼパム)】
抗不安作用:中等度
最大血中濃度到達時間:約1時間
【ソラナックス(アルプラゾラム)】
抗不安作用:中等度
最大血中濃度到達時間:約2時間
【ワイパックス(ロラゼパム)】
抗不安作用:強い
最大血中濃度到達時間:約2時間
デパスは良いお薬ですが効果が強力であるため、依存性やふらつきなどの副作用も軽視できないお薬です。効かない場合は、安易に増薬するのではなく、「なぜ効かないのか」「効くまでに時間がかかるのではないか」を必ず検討してください。
安易な増薬は、依存形成につながり、後々離脱症状などに苦しむことになってしまいます。
デパスはお薬通しの相互作用を起こしにくいお薬ですが、アルコールには注意が必要で、お酒を飲む方にとってはお薬が効きにくい場合があります。
まとめ
デパスの頓服は、効果実感が速いことと効果が強いことから不安発作時はもちろん肩こりや睡眠薬としての使用にも有効です。
常用よりははるかに依存性のリスクが低いのも頓服が好まれる理由ですが、ときに効果を実感しづらく結局連用してしまう例も多くあります。
連用しがちな時はかならず私(主治医)にご相談いただけると助かります!
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