デパス(エチゾラム)は主に不安を和らげる作用を持ったお薬です。
リラックスさせてくれるお薬なのですが、同時に日中に眠気をもたらし生活に支障をきたしてしまうことでもあります。
眠気が生じる理由や対策についてご紹介します。
なぜ眠気が生じるのか
まずはデパスの作用についてご紹介しましょう。
デパスは「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」という種類に分類されます。
ベンゾジアゼピン系は脳のGABA-Aという受容体を刺激する作用があります。
GABAとはチョコレートでもあるあのギャバですね。
GABA-A受容体が刺激され作用が高まると、簡単に言えば脳を休息させてリラックスさせる方向に作用します。
具体的には以下の作用が認められます。
- 抗不安作用(不安をおさえリラックスさせる)
- 催眠作用(眠気をもたらす)
- 筋弛緩作用(筋肉の緊張を和らげる)
- 抗けいれん作用
デパスを含むベンゾジアゼピン系のお薬には全てこの4つの作用があります。
それぞれお薬ごとにその作用の強さが異なり、抗不安作用に優れるものは「抗不安薬」と呼ばれ、眠気を強くもたらすものは「睡眠薬」と呼ばれ、筋弛緩作用が強いものは「筋弛緩薬」、そしてけいれんをおさえる作用が強いものは「抗けいれん薬」となります。
デパスは睡眠薬ではなく抗不安薬ですが、催眠作用も強い
デパスはベンゾジアゼピン系の中で、抗不安作用が優れるために抗不安薬と呼ばれています。
ですが上記で説明した通り、筋弛緩作用や催眠作用、抗けいれん作用ももちろん持っています。
デパスの催眠作用はまずまずの強さであるため、患者さんによってはデパスを睡眠薬として利用する方もいらっしゃるほどです。
睡眠薬としても使用されるデパス
私は依存の観点から睡眠薬として使用はしませんが、デパスを睡眠薬として使用される先生もいます。
そこにはデパスの即効性という特徴があります。
不安を抑える作用も、眠気も早めにやってきます。
また理論的には飲んでから半減期である約6時間は血中濃度は維持されますので、起きてから眠気が続いてしまうことはありません。
翌日の眠気が困るという方は比較的少ないのです。
デパスの半減期については以下をご参照ください。
デパスは不安作用とともに眠気も強く出るお薬なのです。
逆に眠気や翌日に眠いだるいとなりやすくて困るのであれば、下記の表を参考に他の抗不安薬に変更することができるかもしれません。
主治医の先生と相談してみましょう!
ベンゾジアゼピン系抗不安薬における眠気の副作用比較
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の中でも、眠気の起こしやすさはそれぞれ異なります。
お薬名 | 抗不安作用 | 作用時間 (半減期) | 眠気 |
---|---|---|---|
リーゼ | + | 6h | ± |
デパス | +++ | 6h | +++ |
ソラナックス コンスタン | ++ | 14h | ++ |
ワイパックス | +++ | 12h | ++ |
レキソタン セニラン | +++ | 20h | ++ |
セパゾン | ++ | 11-21h | ++ |
セレナール | + | 56h | + |
バランス コントール | + | 10-24h | + |
セルシン ホリゾン | ++ | 50h | +++ |
リボトリール ランドセン | +++ | 27h | +++ |
メイラックス | ++ | 60-200h | + |
レスタス | +++ | 190h | ++ |
基本的には、抗不安作用が強いほど、眠気の副作用も多くなります。
デパスを睡眠薬として使用される先生もおり、眠気の程度も強いのです。
日中の眠気が強いでときどうすれば?
デパスの眠気によって日中支障が出てしまって困る場合の対策について紹介します。
※知識としてとらえ、必ず主治医と相談の上で行ってください。
様子をみる
処方されたばかりで、飲み初めであれば「少し様子をみる(経過観察)」というのは有効です。
1~2週間程度はつらいかもしれませんがデパスに身体が慣れてくることで、眠気も徐々に軽くなってくることが多々あります。
量を減らす
内服する量を減らせば、もちろん眠気も軽くなります。
抗不安作用としての効きがあまいときに量を増やして飲んだのであれば当然眠気も強くなります。
普段から何度も服用する方にとっては、0.5錠単位で増やしたり減らしたときの抗不安作用、眠気の副作用の感覚がわかっている方もいます。
基本、デパスは量の増えていきやすいお薬です。
多くは自己調整することで勝手に増やしてしまっている方が多いです。
※依存に注意してください。デパスの依存症については以下の記事をご参照ください。
飲む時間を変える
意外に有効なのがこの方法です。
服薬する時間を変えれば、眠気が起こる時間をずらしたり、まれに眠気が来なくなったという方もいます。
仮に、デパス0.5mg錠を毎食後(1日量なら1.5mg)内服していたとしましょう。
この状態で、日中の眠気で困るのであれば、昼食後の服薬を中止してみても良いかもしれません。
つまり、朝・夕食後にそれぞれ0.5mgずつ服薬するのです。
昼食後のデパスがないと午後に不安感が増悪してしまうのであれば、0.5mg錠を半分に切って内服してみるのも良いでしょう(割線がないのではさみやカッターで切る)。
抗不安薬の種類を変える
デパスは即効性を実感しやすいお薬なので、デパスをやめて他のに交換するのは渋る方が多い印象です。
私が代わりにお出しするお薬の一例をあげますと以下のお薬になります。
抗不安作用もそれなりに強いですので比較的変更はしやすいと思います。
もちろんデパスより眠気が出てしまったなんてこともないわけではありませんが・・・
- ワイパックス(作用時間12時間、効果強め)
- レキソタン/セニラン(作用時間20時間、効果強め)
- セパゾン(作用時間11-20時間、効果やや強め)
- ソラナックス(作用時間14時間、効果は中等度)
翌日も眠気が残って困る
半減期も6時間と長くはないので、通常は翌日に残ることはあまりありません。
寝る前の服用量が多いのであればそれを少なくしなくてはいけません。
この感覚をお持ちの方はたいてい不安で眠れないために多めに服用していることがあります。
またお酒を一緒に飲むなどもよくありません。
不安やお酒が必要とあれば、向精神病薬についても検討した方がよいかもしれません。
デパス0.5mg錠を1錠のむだけで翌日残る場合には、他の抗不安薬に変更するのが良いでしょう。
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