お薬は通常「水と一緒に飲む」という方法が一般的ですが、「舌下内服・舌下投与」という飲み方をすることがあります。
ただし、舌下投与は公式な飲み方として推奨されるわけではありません。
しかし、ときに応じてメリットもある飲み方ですし、主治医の先生によっては緊急時にこの飲み方を教えている方もいるのでここでご紹介しておきます。
舌下投与・舌下内服とは
通常のお薬の飲み方の場合、胃から腸へ流れていき、腸管から吸収されて血管に薬効成分が入り、脳へ運ばれて効果が発現します。
舌下投与というのは、文字通りワイパックスの錠剤を舌べらの下に置く事です。
舌べらの下に置く事で、舌下の粘膜の血管や口腔粘膜の血管からお薬が直接吸収されます。
血管に直接吸収されるため、即効性があるというのが舌下投与のメリットです。
- 通常の飲み方だと「口→胃→腸管→血管→脳」
- 舌下投与だと「口→血管→脳」
経由部位が少なくなるため、舌下投与の方が早く効くことが分かると思います。
本来、舌下投与は「すぐに効いてほしい」という場合に用いられる方法です。
実は、舌下投与というのは特殊な裏技というわけではありません。
狭心症などの心臓発作時などにニトログリセリン舌下錠という舌下投与専門のお薬が使われます。
舌の下に置いておくだけで身体に吸収されますので、服薬の際に「水がいらない」というのも舌下投与のメリットです。
ワイパックスの舌下投与の意義
ワイパックスのような抗不安薬に即効性を求めて舌下内服をするのであれば、予期不安(不安が起こりそう)のときではなく、すでに「不安発作が起こっている時」「死ぬかもしれないとパニックになっているとき」でしょう。
ただしワイパックスは販売会社であるファイザーのデータによると、舌下投与も普通の投与方法も効果発現の時間(血中濃度の上がり方)は変わらないと言われています。
実際は、「舌下投与は早く効く!」という患者さんはいらっしゃって、これはおそらく思い込み(プラセボ)からきているものかもしれません。
不安発作中は本人は「このまま死んでしまうかも」という強い恐怖を感じています。
これを一刻も早く抑えるのであればたとえプラセボであっても舌下内服には意味があると思います。
「発作が起こっても舌下投与すればすぐ効くから大丈夫!」という安心感が得られれば、それは普段の不安の改善にもつながり、病気の治りだって良くなる可能性が十分あります。
また、発作時に常に水を持っているとは限りません。
水なしでも身体におくすりを吸収させることのできる舌下投与は、外出先など不意の状況で発作が起こったときに有効かと思います。
ただしワイパックスの舌下投与は、公に推奨されている方法ではありません。
ファイザー社のデータでは血中濃度の上昇に変わりなしとしていたとしても、急激に血中濃度が上昇しふらつきやめまい、健忘などの副作用症状が起きる可能性は0%ではありません。
発作時に限り、「舌下投与は自分にとっては即効性がある」と感じられるのであれば知っていてもよいかもしれませんね。
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