マイスリー(一般名:ゾルピデム)は非ベンゾジアゼピン系というタイプの睡眠薬です。
睡眠薬の本来の目的である「眠らせる作用」のみを発揮し、その他の余計な作用がなるべく出ないように工夫したものです。
マイスリーをはじめとした非ベンゾジアゼピン系は、高い安全性が大きな特徴ですが副作用が無いわけではありません。
ふらつきや健忘、耐性や依存性などは起こる可能性があり、注意して服用する必要はあります。
マイスリーに多い副作用とその対処法についてご紹介します。
またマイスリー服用中にお酒を飲むと副作用が出やすくなる可能性があります。
こちらについても解説しています。
マイスリーのよくある副作用
マイスリー(ゾルピデム)よく見られる副作用を中心に紹介します。
Ⅰ.眠気
マイスリーは睡眠剤ですので「眠気」を起こす作用があります。
夜にマイスリーを飲んで、眠くなるのは問題なにのですが、これが朝まで持ち越して「起きる時間になってもまだ眠い」「日中眠くて仕事に集中できない」となることがまれにあります。
日中まで睡眠薬の効果が残って眠気だけでなく、だるさや倦怠感、ふらつき、集中力低下なども生じます。
マイスリーは効果作用時間の2時間程度しかないお薬ですので持ち越し効果で困ることは本当にまれです。
ただし、明け方近くにマイスリーを飲んで出勤しようとすると持ち越してしまう事はあります。
最低でも3-4時間睡眠時間を確保できるようにして内服するのが無難でしょう。
対処法:マイスリーの服薬量を減らすよりは・・・
マイスリー10mgを内服しているのであれば、5mgに減量すればと考えるかもしれません。
確かにそれも有効で、持ち越すリスクも減りますが、効果も弱くなるので飲んだけど全然効かないとなってしまう可能性があります。
ベッドに入る直前に内服するのではなく、その30分前に内服して眠くなってからベッドに入るようにすると良いでしょう。
睡眠時間をしっかりと確保するようにすれば持ち越しリスクは減ります。
Ⅱ.耐性・依存性形成
非ベンゾジアゼピン系でも耐性や依存性が形成される可能性があります。
ここが重要です。
マイスリーなら依存性ができないと考える方もいますが、非ベンゾジアゼピン系はベンゾジアゼピン系と比べると、耐性・依存性は起こしにくいとは言われてはいますが、絶対に起きないわけではありません。
耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまう事をいいます。
最初は1錠飲めばぐっすり眠れていたのに、だんだんと身体が慣れて1錠飲んでも効かないという状態です。
依存性というのは、次第にその物質なしではいられなくなる状態をいいます。
たまに「睡眠薬は依存が怖いから」といってアルコールを飲んでで眠ろうとしている方がいますが、睡眠薬よりお酒の方が依存性は高いのでご注意ください!
対処法
睡眠薬で耐性・依存を形成しないためには、服薬量に気を付けることが重要です。
アルコールも睡眠薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。
効かないからと勝手に倍の量飲んだりしてしまうと、急速に耐性・依存性が形成されてしまいます。
また、アルコールとの併用も危険です。
アルコールと睡眠薬を一緒に使うと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。
そしてマイスリーがないと眠れないと思って「漫然と飲み続けない」ことも大切です。
睡眠薬はずっと飲み続けるものではなく、本当は不眠の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです。
医師も、患者さんに言われるままに処方してしまいがちなのですが本当は漫然と長期間内服を続けてはいけません。
飲まずに眠れるかどうかは常に検討しておく必要があるのです。
あくまでお守り替わりですね。
Ⅲ.もうろう状態、一過性前向性健忘
マイスリーを内服したあと、自分では記憶がないのに、いつのまにか出歩いたり人と話したりする事があります。
そして本人は全く記憶がないのです(健忘症状)。
これはマイスリーでは本当にまれな副作用です。
もっと強力な睡眠薬ではしばしばみられますが、非ベンゾジアゼピン系のマイスリーも、健忘を起こす可能性は0ではありません。
睡眠薬はまれに中途半端な覚醒状態にしてしまう事があり、この中途半端な覚醒状態が
「もうろう状態」「一過性前向性健忘」の正体です。
一過性ですから、すぐに改善します。
前向性というのは飲んでからの記憶という意味でとらえてください(過去の記憶がないわけではありません)。
マイスリーでも多くの量を内服すると起こるでしょう。
マイスリー単独では通常量で起こることはないでしょうが、万が一マイスリーでこれらの症状が起こってしまったら、一緒に飲んでいるお薬やアルコールを飲んでいないかチェックしましょう。
参考:注意すべき副作用(概要)
ふらつき、眠気、頭痛、倦怠感、残眠感、悪心、γ-GTP上昇、LDH上昇、肝機能障害、一過性前向性健忘
添付文書に記載されている副作用
承認時までの臨床試験では、1,102例(統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症を含む)中、副作用(臨床検査値の異常変動を除く)は190例(17.2%)に報告され、主な副作用は、ふらつき44例(4.0%)、眠気38例(3.4%)、頭痛31例(2.8%)、倦怠感31例(2.8%)、残眠感29例(2.6%)、悪心23例(2.1%)等であった。臨床検査値の異常変動は、ALT(GPT)上昇1.5%(12/778)、γ-GTP上昇1.1%(8/702)、AST(GOT)上昇1.0%(8/777)、LDH上昇1.0%(7/700)等であった。
市販後の調査等では、4,485例中、副作用(臨床検査値の異常変動を含む)は、230例(5.1%)に報告され、主な副作用は、眠気21例(0.5%)、ふらつき18例(0.4%)、肝機能障害18例(0.4%)、ALT(GPT)上昇17例(0.4%)、γ-GTP上昇16例(0.4%)、AST(GOT)上昇12例(0.3%)、一過性前向性健忘10例(0.2%)、LDH上昇9例(0.2%)等であった(再審査結果通知:2016年3月)。
1.重大な副作用
1).依存性、離脱症状:連用により薬物依存(頻度不明)を生じることがあるので、観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し慎重に投与する。また、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、反跳性不眠、いらいら感等の離脱症状(0.1~5%未満)が現れることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行う。
2).精神症状、意識障害:譫妄(0.1~5%未満*)、錯乱(0.1~5%未満)、夢遊症状(0.1~5%未満*)、幻覚、興奮、脱抑制(各0.1%未満)、意識レベル低下(0.1%未満*)等の精神症状及び意識障害が現れることがあるので、患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には投与を中止する。
3).一過性前向性健忘、もうろう状態:一過性前向性健忘(服薬後入眠までの出来事を覚えていない、途中覚醒時の出来事を覚えていない)(0.1~5%未満)、もうろう状態(0.1~5%未満*)が現れることがあるので、服薬後は直ぐ就寝させ、睡眠中に起こさないように注意する(なお、十分に覚醒しないまま、車の運転、食事等を行い、その出来事を記憶していないとの報告があるので、異常が認められた場合には投与を中止する)。
4).呼吸抑制:呼吸抑制(頻度不明)が現れることがある。また、呼吸機能が高度に低下している患者に投与した場合、炭酸ガスナルコーシスを起こすことがあるので、このような場合には気道を確保し、換気をはかるなど適切な処置を行う。
5).肝機能障害、黄疸:AST上昇(GOT上昇)、ALT上昇(GPT上昇)、γ-GTP上昇、Al-P上昇等を伴う肝機能障害(0.1~5%未満*)、黄疸(頻度不明)が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
*:市販後の調査等における頻度。
2.その他の副作用
1).精神神経系:(0.1~5%未満)ふらつき、眠気、頭痛、残眠感、頭重感、眩暈、不安、悪夢、気分高揚、(0.1%未満)錯視、*しびれ感、(頻度不明)振戦。
2).血液:(0.1~5%未満)白血球増多、白血球減少。
3).肝臓:(0.1~5%未満)ALT上昇(GPT上昇)、γ-GTP上昇、AST上昇(GOT上昇)、LDH上昇。
4).腎臓:(0.1~5%未満)蛋白尿。
5).消化器:(0.1~5%未満)悪心、嘔吐、食欲不振、腹痛、(0.1%未満)下痢、(頻度不明)口の錯感覚、食欲亢進。
6).循環器:(0.1~5%未満)動悸。
7).過敏症:(0.1~5%未満)発疹、そう痒感[発現した場合には、投与を中止する]。
8).骨格筋:(0.1~5%未満)倦怠感、疲労、下肢脱力感、(頻度不明)筋痙攣。
9).眼:(0.1~5%未満)複視、(頻度不明)視力障害、霧視。
10).その他:(0.1~5%未満)口渇、不快感、(0.1%未満)*転倒[転倒により高齢者が骨折する例が報告されている]、(頻度不明)味覚異常。
*:市販後の調査等における頻度。
マイスリーと酒・アルコールを併用するのがダメな理由
睡眠薬と酒・アルコールは一緒に飲んでも大丈夫なのでしょうか?
もちろん、極力飲酒すべきではありません。
しかしこの質問が来るときは、たいていその方にお酒をやめることができない理由があるからです。
実際、マイスリーを飲んでいてもアルコールを飲んでしまうのでしょう。
マイスリーの添付文書には以下のように記載されています。
精神機能・知覚・運動機能等の低下が増強することがあるので、できるだけ飲酒を控えさせること。
アルコールはGABA-A受容体に作用すること等により中枢神経抑制作用を示すため、
併用により相互に中枢神経抑制作用を増強することがある。
アルコールとマイスリーの併用は「禁忌(=絶対にダメ)」にはなってはいませんが、あたりまえの文言である「できる限り控えること」とは書かれています。
理由は「相互に作用を増強すること」「中枢神経抑制作用があること」です。
つまり併用すると、睡眠薬とアルコールのお互いの作用を強めあってしまう可能性があるのです。
それならよく眠れそうと考えてしまいますよね?
違います、大きな問題を引き起こします。
一番問題となるのは「耐性や依存性形成」です。
アルコールにもマイスリーにも耐性や依存性があります。
耐性とは、ある物質を摂取し続けると次第に身体が慣れてきて強くなってくる事です。
アルコールは耐性形成が非常に強く、飲酒を続けていると(アルコールに弱くない人なら)だんだん少しの量では酔えなくなりますよね?
マイスリーもアルコールと同じように、耐性形成は起こります。
依存性とは、ある物質を摂取し続けていると次第にその物質なしではいられなくなる現象です。
問題は、耐性も依存性もアルコールと睡眠薬を併用する事で急速に形成されやすくなるという事です。
睡眠薬とアルコールを一緒に飲んでいると、アルコール依存症や睡眠薬依存症になりやすくなるのです。
アルコールも睡眠薬も摂取する量が多ければ多いほど、急速に耐性・依存性が形成されます。
アルコールと睡眠薬は相互に作用する事でお互いの血中濃度を強くしてしまう可能性があり、実際より多くの量を摂取したのと同じ状態にしてしまうため、急速な耐性・依存形成が起こるのです。
睡眠薬と酒・アルコールを併用すると、互いの血中濃度を高めてしまうため、併用しない事が望ましい。
睡眠薬やアルコールに対する耐性・依存性が急速に形成され、アルコール依存症にもなりやすくなるのです。
マイスリーと酒・アルコールを併用したら・・・
マイスリーとお酒を一緒に飲んでしまうと耐性・依存性以外にも以下のような問題が起きます。。
まず翌朝の眠気やだるさが強くなります。
また普段よりもアルコールや睡眠薬の抜けが悪くなるため、寝坊・遅刻してしまったり仕事に集中できなくなったりします。
ときに健忘やせん妄も起こりやすくなります。
内服後に自分では覚えてない行動(歩いたり、ものを食べたり、人と話したり)とする可能性が高くなります。
そして長期的には、先ほど説明した通り、耐性や依存性が形成されやすくなります。
睡眠薬にもすぐに耐性が形成されてしまい、効かなくなります。
それでも併用を続けていると、次第にどの睡眠薬も効かなくなり、
不眠の症状で非常に苦しむ事になります。
マイスリー服用中にどうしても酒・アルコールを飲みたくなったら
当たり前のことですが、どうしてもという時は逆にマイスリーを服用しないでください。
眠りの悪い方にとって、睡眠の質を落とす飲酒はしないことが望ましいのですが、本当にどうしてもやむを得ない事情があってお酒を飲まなくてはいけない事もあるかもしれません。
その際は、その日の睡眠薬は内服しないでください。
睡眠薬がない分、寝付きも悪くなるかもしれませんし、眠りも浅くなるかもしれません。
お酒を飲むのであれば、その代わりその日の睡眠状態が悪化する事は了承した上で飲酒が好ましいでしょう。
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