うつ病がなかなか改善しない原因は?

WHO(世界保健機関)は日本のうつ病患者を300万人と推計していますが、実際はその倍以上が潜在的にいると考えられています。
実態として精神科を受診している人は100万人で、その他にも未治療の状態でいるのです。

問題は未治療だけではありません。
診断がついてもうまく治療ができていないことが多いのです。

うつ病と診断されて治療を受けていたとしても、慢性の経過をとってしまって一向に改善に向かわない方が一部にいらっしゃいます。
『難治性うつ病』『薬物抵抗性うつ病』と言われ、抗うつ剤を3剤以上使っても改善に向かわないのです。

難治性うつ病を分析すると、そこには3つ問題があるといわれています。

うつ病と診断されているが、実は『双極性障害』

双極性障害とは一般的に「そううつ病(躁うつ病)」と呼ばれている疾患です。
双極性障害では、そう状態とうつ状態が交互に起こります。

明らかなそう状態になれば、周囲から見てもおかしなテンションになっていますのですぐにわかります。
しかし、軽度のそう状態となるとなかなか見分けがつきません。

「うつ状態が改善されてきた」と思ってしまうからです。

医師でさえ見誤ることが多く、事実その診断は専門医を悩ませるところです。

患者自身も「今日は調子がいい」と思い込みますので薬を自己判断で中止することもあります。

双極性障害には抗うつ薬とは少し違った薬のアプローチになります。
詳しくは以下の記事が参考になります。

うつ病に他の障害を合併している!

不安障害

うつ病に多く合併しているのが不安障害です。
不安な感情は誰にでもあります。

正常な不安ではなく、病的に不安になり日常生活にも支障をきたすようになるのが「不安障害」なのです。
不安障害には、症状によって『社会不安障害』『パニック障害』『全般性不安障害』などに細かく分類されます。

不安障害を合併しているとうつ症状以外に「頭痛」「腰痛」などの痛みを伴いがちです。

発達障害

うつ病に発達障害を合併しやすいというよりはむしろ逆で、発達障害があるためにうつ症状を合併しやすいのです。

発達障害には有名なものにアスペルガー症候群や注意欠陥多動性障害ちゅういけっかんたどうせいしょうがい(ADHD)などがあります。
ADHD、大人の発達障害などは以下の記事が参考になります。

難治性うつかもしれないときは?

難治性うつ病のケースで治療していても改善の兆しがみられないときは、主治医と相談をして「セカンド・オピニオン」(主治医以外の専門医の意見を聞いてみる)をとるのも良いでしょう。
上記の通り双極性障害や不安障害、発達障害などうつ病以外の病気によるものである可能性を疑ってみる必要があります。

また、現在先進医療として「光トポグラフィを用いたうつ病の診断補助」が行われています。今まで、うつ病の診断は医師の主観に頼るしかありませんでした。「光トポグラフィ」という画像診断技術は、脳の血流の活性化を調べることでうつ病の診断の精度を高め、確かなうつ病治療につなげるものです。

当院では光トポグラフィー検査を実施しておりますのでお気軽にご相談ください。

難治性うつ病に対する治療法

うつ病治療ではしっかり休養をとりながら、抗うつ薬を十分な量(なるべく少ない量が良いと思いがちですが十分な量です)、十分な期間服用することが必要です。
早期に抗うつ薬を減らしてしまったり、飲むのを止めてしまったりすることが意外と多く、それでは症状が改善しないまま慢性化してしまうことがあります。

先に説明しましたように、正しく抗うつ剤を服用しても効果が期待できないことがあります。

抗うつ薬による治療で症状が改善する方は約50%、寛解かんかい(症状がなくなること)する方は全体の約30%といわれています。
1種類の抗うつ剤で反応しない場合、これに複数の抗うつ剤をあわせて使用することもあります。

抗うつ薬の増強療法

抗うつ薬による適切な治療を行っても改善しない難治性のうつ病は、治療抵抗性うつ病と呼ばれています。
この場合、抗うつ薬と非定型抗精神病薬を組み合わせる治療法がうつ病ガイドラインでも示されています。

ただし、必然的に内服する薬の量が増えるため副作用が問題になることが多々あります。

磁気刺激治療(TMS治療)

磁気刺激治療(Transcranial Magnetic Stimulation;TMS)は、MRIなどで使用す磁気と似た磁気刺激を脳に当てることで脳の機能を改善させ症状を改善させる方法です。
2008年に米国ではFDAが承認し、欧米では難治性うつの治療法の1つとして採用されているものです。

特筆すべきは副作用がほとんどないことと、薬で治療ができなくても症状を改善させることができます。

当院では薬物治療はもちろん、このTMS治療を行うことができます。

TMS治療について


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