抗コリン作用とは【精神科のお薬で起こる副作用症状】

抗コリン作用による口渇

精神科のお薬(向精神薬)で生じる副作用の1つに「抗コリン作用」があります。

「抗コリン作用」は口喝(口の渇き)や便秘、動悸など不快な症状を引き起こします。

精神科のお薬と抗コリン作用は切っても切り離すことができませんので、飲まれている方は抗コリン作用について十分な知識を持っておくことが望まれます。

抗コリン作用とはどのような機序で生じる副作用で、具体的にどのような症状が生じるのでしょうか。また対処法としてはどのようなものがあるのでしょうか。


抗コリン作用とは

「コリン」とは「アセチルコリン」のことで神経伝達物質(神経と神経の間をやりとりする物質)です。

つまり抗コリン作用とは「アセチルコリンに拮抗する作用」という意味で、アセチルコリンのはたらきをブロックする作用のことをいうのです。

アセチルコリンは主に副交感神経(自律神経の1つ)の神経伝達物質として知られています。

副交感神経はゆったりくつろいでいる時や休んでいる時、眠っている時などに活性化します。

副交感神経が活性化すると、身体全体がリラックスモードに向かいますので、以下のような身体の変化を起こします。

副交感神経(アセチルコリン)が働くと・・・

  • 瞳孔が小さくなる
  • 呼吸がゆっくりになる
  • 心拍数がゆっくりになる
  • 血圧が下がる
  • 唾液が出る
  • 胃腸が活発に動く
  • 尿道がゆるむ

副交感神経は自律神経ですから私たちの意識とは無関係に活動します。

私たちは普段「心拍数を下げよう」「胃腸を動かそう」などと意識しなくても、心臓や胃腸は勝手に適切に活動してくれます。

ちなみに自律神経には副交感神経の他に反対の「交感神経」もあります。

交感神経は副交感神経と全く逆のはたらきをする自律神経で、緊張や興奮状態を作り出す神経になります。

抗コリン作用とはすなわち副交感神経の働きを抑える側ですから、逆に交感神経が活発になるのです。

アセチルコリンがはたらけなくなれば副交感神経が活性化されず交感神経が活発になるので・・・

  • 瞳孔が開いて視界がぼやけてしまう(霧視)
  • 眼圧が上がる(緑内障)
  • 呼吸が速くなる
  • 動悸や不整脈が生じる
  • 血圧が上がる
  • 唾液が少なくなり口が渇く
  • 胃腸の動きが悪くなり胃部不快感、吐き気や便秘が生じる
  • 尿が出にくくなる(排尿困難、尿閉)

これらの症状、すなわち交感神経機能が過度に働いた症状が抗コリン作用です。

抗コリン作用を持つお薬

抗コリン作用を持つ向精神薬について紹介させていただきましょう。

Ⅰ.抗うつ剤

抗うつ剤とは神経伝達物質の1つである「モノアミン(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン)」を増やす作用を持つお薬です。

これらの神経伝達物質を増やす事で感情を安定させるのが抗うつ剤です。

しかしノアミン以外の物質も増減させてしまう事があり、この余計な作用が抗コリン作用としてあらわれることがあります。

抗うつ剤の中でも抗コリン作用を起こしやすいお薬はあり、特にもっとも古い抗うつ剤である「三環系抗うつ剤」で生じやすい傾向があります。

反対に新規抗うつ剤と呼ばれる比較的新しい抗うつ剤では頻度は少なくなっています。

Ⅱ.抗精神病薬

抗精神病薬は、脳のドーパミンのはたらきをブロックする事によって、幻覚・妄想といった精神病症状や興奮を抑えるお薬です。

主に統合失調症や双極性障害の治療薬として用いられています。

抗精神病薬も基本的にはドーパミンのブロックが主な作用なのですが、同時に抗コリン作用を起こすことがあります。

抗精神病薬には、古い第一世代抗精神病薬と比較的新しい第2世代抗精神病薬があり、このうち抗コリン作用が生じやすいのは古い第一世代抗精神病薬の方になります。

また第一世代も第二世代もどちらも「ドーパミンのみを集中的にブロックするお薬」と「ドーパミン以外にも様々な物質をブロックするお薬」がありますが、後者の方が様々な効果が得られる反面で、抗コリン作用などの副作用の頻度も多くなります。

Ⅲ.抗不安薬(精神安定剤)、睡眠薬

抗不安薬、睡眠薬のうち「ベンゾジアゼピン系」に属するものには多少の抗コリン作用が報告されています。

抗コリン作用は実はそこまで強くはありませんが、抗コリン作用によって眼圧上昇を引き起こす危険性が指摘されており、「緑内障」の方への投与は禁忌となっています。

Ⅳ.花粉症薬やパーキンソン治療薬も注意

精神科のお薬以外にも、抗コリン作用を持つお薬はあります。

有名なものでは抗ヒスタミン薬が挙げられます。

抗ヒスタミン薬はアレルギー症状を引き起こす原因物質の1つであるヒスタミンをブロックする事でアレルギー症状を和らげるお薬で、蕁麻疹や花粉症などといったアレルギー性疾患に用いられています。

ヒスタミンとアセチルコリンは構造的に似ているようで、ヒスタミンをブロックするために作られた抗ヒスタミン薬はなんとアセチルコリンもブロックしてしまい、これによって抗コリン作用による副作用が生じてしまいます。

またそれ以外にも「治療薬」として抗コリン作用を持っているお薬(抗コリン薬)もあります。

その他の抗コリン薬

  1. パーキンソン治療薬
  2. パーキンソン病とは脳のドーパミンが少なくなってしまう疾患ですが、抗コリン薬によってアセチルコリンのはたらきをブロックすると相対的にドーパミンのはたらきが強まるため、症状の改善が得られます。

  3. 胃腸薬
  4. 胃腸の動きが活発になりすぎて腹痛や下痢が生じている場合は抗コリン薬を服用する事で胃腸の動きを落ち着かせる事が出来ます。

  5. 過活動膀胱治療薬
  6. 頻尿となってしまっている方に抗コリン薬を投与すると、尿は出にくくなる方向にはたらくため、排尿回数が減って頻尿が改善するという効果が期待できます。

抗コリン作用というのは一概に悪者ではなく、疾患によっては治療薬としても用いられています。

抗コリン作用の各症状の対処法

向精神薬の投与によって抗コリン作用が出てしまったら、どのように対処していけばいいのでしょうか。

まず原因となっているお薬の中止・変更を一番に考える必要があります。

原因となっているお薬をやめれば抗コリン作用もなくなります。抗コリン作用は不可逆性の副作用ではないため、原因薬が中止されれば速やかに改善していきます。

それでは症状に応じた対処法を紹介します。

Ⅰ.口渇(口の渇き)

口の渇きは口の中を潤してくれる唾液だえきの分泌量が減る事によって生じます。

サリベートという人工唾液のスプレーもあります(保険適応外)となります。

Ⅱ.便秘

便秘は胃腸の動きが低下する事で生じますので、胃腸の動きが活発になる生活習慣を取り入れる事が出来れば、便秘の程度も和らぐはずです。

まずは生活習慣の改善を試みるべきですが、それでも効果が得られない場合は下剤などお薬を検討するのが良いでしょう。

Ⅲ.排尿困難・尿閉

抗コリン作用によって排尿困難や尿閉が生じてしまった場合は、これは生活の工夫で改善するのは難しいため、原則は原因薬の中止・変更になります。

やむを得ず中止・変更できない場合は、アセチルコリンのはたらきを強める事で抗コリン作用を打ち消すようなお薬が検討されますがお薬の副作用にお薬で対処は原則控えたいところです。


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