エビリファイで吐き気がでてしまったら

エビリファイによる吐き気

エビリファイは抗精神病薬に属するお薬で、統合失調症をはじめうつ病、双極性障害、発達障害の易刺激性に対して適応があり汎用性に優れたお薬です。

しかしながらエビリファイによる副作用がでてしまうことがあり、中でも吐き気は頻度の高い副作用です。
単純な吐き気だけの症状から、重症度の高い処置の必要なものまであります。

エビリファイによる吐き気について解説したいと思います。


エビリファイによる吐き気とは?

吐き気の副作用頻度

エビリファイの承認時や統合失調症以外の疾患に対する適応拡大のための臨床試験のデータをもとに、どの程度の頻度で吐き気が出てしまうのか確認してみましょう。

  • 統合失調症:743例中27例(3.63%)
  • 双極性障害における躁症状の改善:192例中17例(8.85%)
  • うつ病・うつ状態:320例中18例(3.85%)
  • 小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性:64例中6例(8.82%)
  • Total:980例中68例(4.56%)

割合としては数%ですが、飲み始めの初期には胃腸症状は比較的多く認められる印象です。

なお抗精神病薬と言えば副作用の比較的少ない非定型抗精神病薬が処方されることが多いですが、非定型抗精神病薬にはエビリファイをはじめいくつかの抗精神病薬があります。
そしてそれらの種類によっても副作用を起こす頻度は違うのです。
どんな種類があるのか全体像を見てみましょう。

非定型抗精神病薬には大きく3分類あります。

<非定型抗精神病薬の種類>

  • セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)
    • リスペリドン(リスパダール)
    • ペロスピロン(ルーラン)
    • ブロナンセリン(ロナセン)
  • 多元受容体標的化抗精神病薬(MARTAマルタ
    • オランザピン(ジプレキサ)
    • クエチアピン(セロクエル)
    • クロザピン(クロザリル)
  • ドパミン受容体部分作動薬(DSS:Dopamin System Stabilizer)
    • アリピプラゾール(エビリファイ

上記に示す通りエビリファイはドパミン受容体部分作動薬と呼ばれるお薬で、これ以外にもリスペリドン(リスパダール)などのセロトニン・ドパミン拮抗薬、オランザピン(ジプレキサ)などの多元受容体標的化抗精神病薬(MARTA)があり、これらの抗精神病薬の中でも最もエビリファイが吐き気を起こしやすいことが言われています。

参考文献
Khanna P, et al. Aripiprazole versus other atypical antipsychotics for schizophrenia. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Feb 28;(2):CD006569.

エビリファイで吐き気が起こる理由

エビリファイが吐き気を起こしやすいのは、そもそも吐き気がなぜ起こるのかというところに関係しています。

抗精神病薬はそもそも神経伝達物質であるドパミンを抑えるのが一般的です。
例えば統合失調症ではドパミンが過剰になって幻覚や妄想症状が出ると考えられていますので、そのドパミンを受け取る受容体じゅようたいがブロックされれば症状が改善する方向に向くのはなんとなくお分かりいただけるでしょう。

しかしダイレクトにドパミンを抑えるだけではドパミン不足に陥って、今度はかえって手の震えや手足の動かしづらさなどのパーキンソン症状の副作用がでてしまいます。

エビリファイはそういった抗精神病薬の独特な副作用を減らすためにドパミン受容体(D2受容体)をブロックする本来の精神病薬の特徴を持ちつつも、ドパミンの伝達が低下しすぎた状態では今度は作動薬として作用する特徴を持つのです。
それゆえドパミン受容体部分作動薬と呼ばれるのです。

しかしエビリファイの持つドパミンを作動させる作用が、脳の吐き気の中枢(嘔吐中枢おうとちゅうすう)や胃腸などの消化管の運動を抑えてしまうため吐き気がでてしまうのです。

少し話はそれてしまいますが、がんの患者さんでは実に40-70%に吐き気や嘔吐が生じると言われていますがこれはイメージとしても持ちやすいと思います。。
もちろんがんの患者さんの場合の吐き気の原因は様々な要因(薬、腸閉塞など)がからみますが、そのがん患者さんに使用される吐き気止め(制吐剤せいとざい)にはドパミンをブロックするお薬を使用するのです。
このことからも、ドパミンを刺激してしまうことは吐き気につながることがわかります。

エビリファイによる注意が必要な吐き気もある?

非定型抗精神病薬は糖尿病の発生率を増加させる副作用があります。
エビリファイでは血糖が少々することは極めてまれであると考えられてはいるのですが、海外では急激に高血糖になり死亡した例が報告されています(通常の糖尿病は慢性の経過なのでそれ自体で死亡することはほとんどありませんが、急激に高血糖になった場合には昏睡状態など危険な状態に陥ることがあります)。
このような状況では初期に吐き気がでることがあります。

また、抗コリン作用といって腸の動きを弱めることから慢性的に便秘気味になり、最悪の場合「腸閉塞(イレウス)」といって腸がほとんど動かず閉塞してしまうことがあります。
腸が動かなければ、当然胃腸の圧が上昇し吐き気を誘発します。
これは国内の臨床試験でも極少数で認められています。

エビリファイによる吐き気への対策

上記で吐き気に関する重篤な場合を紹介しました(糖尿病性ケトアシドーシスや腸閉塞)。

糖尿病性の昏睡にしても、いきなり吐き気がでるというより最初はだるさや頻尿、のどの渇きから徐々に進行していきます(日本でのエビリファイによる報告はありません)。
腸閉塞に関しても慢性便秘から始まり、お腹の張りが強くなっていくという経過をとります。

しかしほとんどの場合でドパミンの部分作動による症状のはずです。
以下はこれら重篤な場合ではなく、頻度の高いエビリファイのドパミン部分作動によると思われる吐き気への対処法です。

様子を見る

吐き気は飲み初めだけ問題になることも多く、1-2週間で落ち着いてくることもあります。
ですので薬を自己判断で中断してしてしまうのではなく、耐えられるものであれば少し経過をみるのもありでしょう。

日常生活や仕事、家事に支障が出る場合には以下の対策が考えられます。

吐き気止めを使う

基本的に薬の副作用に薬で対抗していくとどうしても薬の量が増えていく傾向にあるので積極的なものではないのですが、吐き気が強く日中の仕事や家事に支障が出てしまう場合に有効です。

エビリファイによる吐き気の原因のほとんどはドパミン部分作動による作用です。
つまりドパミンをブロックしてあげる方向に作用させれば改善させられるのです。

よく使用される吐き気止めにドパミン(D2)受容体拮抗薬といって、メトクロプラミド(プリンペラン錠)やドンペリドン(ナウゼリン錠もしくは坐薬)があります。

減薬もしくは他の抗精神病薬に変える

先にもお話しましたが、非定型抗精神病薬の中ではエビリファイは吐き気の副作用の頻度が高めです。
どうしても吐き気が強く、吐き気止めも効かない場合にはお薬を減らすか変更するしかありません。

エビリファイ以外の抗精神病薬で吐き気が出ないわけではありませんが、この場合エビリファイでは少な目な副作用(糖尿病、眠くなりやすい、太りやすい、高プロラクチン血症による男性なら女性化乳房・女性なら無月経)が問題になることもあります。

まとめ「エビリファイによる吐き気」

エビリファイは非定型抗精神病薬の1つです。
通常、抗精神病薬はドパミンをブロックすることで統合失調症などの陽性症状(幻覚や妄想など)をコントロールしています。

エビリファイは純粋なドパミン(D2)のブロック作用ではなくドパミン部分作動といって、ドパミン伝達が低下しているときにはブロックではなくて逆に作用する新しいタイプの抗精神病薬です。
しかしドパミンを刺激する方向は、腸の動きを抑制させたり嘔吐中枢に作用してしまうことから吐き気の副作用が出やすくなってしまいます。

エビリファイは非定型抗精神病薬の中では吐き気が出やすいのですが、基本的には飲み始めの初期だけということが多く経過をみるだけで大丈夫です。
日常生活に支障が出てしまう場合には吐き気止めや他の抗精神病薬に切り替える必要があるかもしれません。


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