ジェイゾロフト(ジェネリック医薬品:セルトラリン)を減量したり中止したりするときに「離脱症状」が起こることがあります。
離脱症状ではさまざまな症状が起こるのですが、有名な症状は耳鳴りが「シャンシャン」と鳴り、 頭にビリっと電気が走ったような感覚がきたり、手足が「ビリビリ」としびれる事から俗に「シャンビリ」とも呼ばれています。
その多くは「独断で勝手にお薬を減らしてしまった」「自己判断でお薬を中止してしまった」という例ですが、飲み忘れや、中には医師の指示に従って正しく減薬したとしても、離脱症状が生じてしまうこともありえます。
離脱症状の特徴は再度元の量にお薬を戻せば改善することにあります。
ジェイゾロフトによる離脱症状について、対策や起こってしまった場合どれくらい続いてしまうのかなど解説します。
Contents
離脱症状とは
ジェイゾロフト(ジェネリック医薬品:セルトラリン)を減量したり中止したりするときに「離脱症状」が起こることがあります。
離脱症状とは抗うつ剤の血中濃度が急に下がったことに身体が対応しきれずに生じる反応です。
離脱症状ではさまざまな症状が起こるのですが、有名な症状は耳鳴りが「シャンシャン」と鳴り、 頭にビリっと電気が走ったような感覚がきたり、手足が「ビリビリ」としびれる事から俗に「シャンビリ」とも呼ばれています。
離脱症状は、ジェイゾロフトの減量で必ず生じてしまう反応ではありませんが割と高率に起こります。
その多くは「独断で勝手にお薬を減らしてしまった」「自己判断でお薬を中止してしまった」という例です。
しかしもちろん中には医師の指示に従って正しく減薬したとしても、離脱症状が生じてしまうこともありえます。
離脱症状でよくあらわれる症状
基本的には減薬して3日以内にありとあらゆる症状が出現します。
- 耳鳴り
- 電気が走るような感じ
- めまい
- 発汗
- 吐き気
- 震え
- 不安
- ソワソワ感
正式には中断症候群
実は「離脱症状」というのは正式な名称ではありません。
論文などでは「中断症候群」と呼ばれています。
抗うつ剤からの離脱で起こるという意味では非常にわかりやすいのですが、「離脱」という言葉は「依存」や「中毒」を想定しており、アルコールや依存性のある物質(麻薬など)からの「離脱症状」と同義になってしまいます。
「抗うつ剤の離脱症状」という呼び方から、「抗うつ剤は依存性・中毒性があるもの」という誤解が生じないように、「中断症候群」として区別はしているのです。
ここではわかりやすく「離脱症状」として説明させていただきます。
離脱症状が生じる理由
離脱症状は、 抗うつ剤の血中濃度が急激に下がったことに身体が対応しきれない結果として生じます。
私たちの身体は急な変化に弱いのです。
そもそもジェイゾロフト(セルトラリン)は飲み始めてすぐに効果が出る薬ではありません。
だいたい2-4週間服用して徐々に抗うつ効果や抗不安作用を発揮してくるのです。
ちょうどお薬になれて副作用がおちついてくるころに作用するのです。
ところが、この慣れてきた段階からジェイゾロフトの量が急に減ると、神経から神経に情報を伝えるために増やした神経伝達物質「セロトニン」の量も急に変化してしまいます。
すると神経系のバランスが崩れて、その結果として離脱症状が生じてしまうのです。
身体をびっくりさせないようにするためには、ジェイゾロフトの血中の濃度変化は急激ではなく、徐々に減らすようにしないといけません。
実際、離脱症状は、減薬のスピードをゆっくりにすればするほど生じにくくなり、生じたとしてもその程度が軽いのです。
離脱症状が生じたときの対策 -いつまで続くの?-
※必ず主治医と相談の上、主治医の指示に従って行ってください。
ジェイゾロフトで離脱症状が生じてしまうのは「ジェイゾロフトの量を減らしたり中断してしまった場合」「飲み忘れてしまった場合」です。
減薬や中止は独断で行えばもちろんですが、医師に従って行った場合でも起こりえます。
ゆっくり減らしても起こるときは起こってしまうのです。
抗うつ剤というのは「出来れば飲みたくないもの」ですから、少し調子が良くなると「やめてみよう」「減らしてみよう」と考え、自己判断で中断してしまう方がいらっしゃいます。
そして中止した翌日くらいから、徐々に離脱症状が出現してきて、「変な症状が出る」とか「再発してしまった」と相談されるのです。
特に高用量からいきなり中止(100mg⇒0mgなど)した際はほぼ離脱症状がでてしまうことでしょう。
この場合、ジェイゾロフトを再開すれば離脱症状はすぐに(早ければ再開して数時間以内)改善していきます。
もしこのまま我慢したとしたらいつまで続くのでしょうか?
基本的には少なくとも1か月は続きます。
個人差がありますし期待値が上がりすぎると不安にもなってしまいますので私は「2-6か月」と伝えております。
医師の指示のもと減薬がうまくいかない場合
では、主治医の指示のもとに慎重に減薬していたのに離脱症状が起こってしまう場合はどうでしょうか?
減らしたいのに減らせないことになってしまいますよね?
一般的には次のような対処法が取られます。
減薬をいったん見送る
一旦ジェイゾロフトを元の量に戻して離脱症状を落ち着けます。
その後、数週間~数か月後に減薬を再挑戦すると不思議とうまくいくことがあります。
今度は大丈夫なのかと不安になることもあるでしょう。
もちろん減薬スピードの調整はかけた方がよいでしょうが、しかし時期をずらすのはしばしば有効な手立てだと思っています。
減薬のペースをより落とす
離脱症状の対処法の基本は「ゆっくりと減薬する」ことです。
ゆっくり、というのはジェイゾロフトの内服する「量」と「期間」の2つに対してです。
例えば、ジェイゾロフト100mg/日からを75mg/日に減薬したときに離脱症状が出てしまったとします。
一旦ジェイゾロフトの量を100mg/日に戻して離脱症状を落ち着けたのちに、75mg/日まで一気にへらすのではなく、87.5mg/日までにしてみてこの量で離脱症状を起こさないことを確認してから75mg/日に減薬するといった具合です。
そして減薬の「期間」ですが、一般的には2週間ペースくらいで(だいたい次の外来で様子をうかがって)減量していく事が多いです。
しかしそのペースで離脱症状が出るのであれば、もっと期間を延ばして1か月してから減らすなど時間をかけてで減らしてみるのが良いでしょう。
他剤に切り替えてみる
理論的には正しいのですが、他の抗うつ剤にシフトするときにも離脱症状が起こりうるのであくまでひとつの策ということになります。
要は離脱症状を起こす頻度が低めの抗うつ剤に切り替えるということです。
もちろんジェイゾロフトもSSRIの中では離脱症状は少ないお薬ではあるのですが・・・。
離脱症状が生じにくい抗うつ剤としては、以下のようなお薬があります。
<離脱症状を起こしにくいお薬>
-
リフレックス・レメロン(一般名:ミルタザピン)
-
ドグマチール(一般名:スルピリド)
-
トレドミン(一般名:ミルナシプラン)
ただし、抗うつ剤を切り替えれば済むという問題でもないことがあり、そもそもジェイゾロフト自体をやめたことで離脱症状が出ることがあるので私はあまりこの手法を行いません。
離脱症状はうつの再発ととらえられやすいことに注意!
抗うつ剤を減量して離脱症状が出現すると、「うつが再発してしまった・・・」「一生薬を飲み続けるしかない・・・」と落ち込んでしまう方がいます。
離脱症状として認識していればまだ良いのですが、うつの再発としてとらえて主治医に相談してしまうと「まだうつがよくないのですね」と元の量に戻されるのならまだしも、他のお薬と併用になったりさらに増量されてしまうケースすらあります。
「離脱症状」と「病気の再発」は別です。
離脱症状は、減薬・中止から3日以内、再発はもっと時間をかけて症状がでてくるものと認識しておいてください。
ジェイゾロフトは離脱症状を起こしやすい?
ジェイゾロフトは、離脱症状を起こす可能性のある抗うつ剤の1つではあるのですが、基本的に作用の強さも穏やかで、半減期も長めの抗うつ剤であるため、離脱症状が生じる頻度は他のSSRIやSNRIに比べて多くはありません。
離脱症状を起こしやすい要因は以下の要素である程度決まっています。
- 抗うつ剤の作用時間・半減期(長いほど起こしにくい)
- 抗うつ剤の強さ(作用が強いほど起こしやすい)
作用時間(≒半減期)が短く、作用が強い抗うつ剤ほど離脱症状を起こしやすいのです。
他の抗うつ剤と比較して
離脱症状はあらゆる抗うつ剤で生じ得ますが、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)で生じやすく、それに次いで初期の抗うつ薬「三環系抗うつ剤」でも生じうる事が知られています。
離脱症状を起こしやすい抗うつ剤
- SSRI(パキシル、ジェイゾロフト、ルボックス・デプロメール、レクサプロ)
- SNRI(トレドミン、サインバルタ、イフェクサー)
- 三環系抗うつ剤(トフラニール、アナフラニール、トリプタノール、ノリトレン、アモキサンなど)
※その他の抗うつ剤では頻度は少なくなります。
軽度なものも含めると約20%程度の頻度で生じると言われています。
前述の通り、離脱症状は抗うつ剤の作用時間(半減期)が短く、強いものほど生じやすくなります。
これは作用の強い抗うつ剤の方が、抗うつ剤の効果が減った時の反動が大きく、作用時間が短ければ血中濃度も変動しやすいからです。
お薬の血中濃度の幅が大きければ大きいほど、身体がそれに対応できなくなり可能性も高くなるのです。
抗うつ剤の強さが強いといっても少し語弊があります。
念のために申し上げますと、抗うつ効果が強いお薬というのは漠然とした表現で、実は最初に処方される抗うつ薬(SSRI・SNRI・NaSSAに属する抗うつ剤)はガイドライン上すべて同等の抗うつ作用を持つと考えられています。
でなければ、一番作用の強い抗うつ剤しか世の中に存在できません。
各製薬会社が、こぞって副作用の少ない効果の高いお薬を出そうとしているのですからガイドライン上ではこのように示すのは当たり前です。
それでもジェイゾロフトが所属するSSRIというクラスの抗うつ剤の中では、それでも明らかにパキシル(パロキセチン)は切れがあり作用が強い(ということは副作用も多い)印象を多くの医師は持っていることでしょう。
それゆえジェイゾロフトよりもパキシルの減薬時の方が、個人的には多く離脱症状を認めていると感じています。
また作用時間についてはお薬の「半減期」という値が参考になります。
半減期はお薬の血中濃度が半分になるまでの時間の事で、そのお薬の作用時間ともとらえられます。
抗うつ剤の種類 | 抗うつ剤 | 半減期 |
---|---|---|
三環系 | トフラニール | 9-20h |
三環系 | トリプタノール | 18-44h |
三環系 | アナフラニール | 21h |
三環系 | ノリトレン | 18.2-35.2h |
三環系 | アモキサン | 8h |
四環系 | ルジオミール マプロチリン | 46h |
四環系 | テトラミド ミアンセリン | 18h |
SSRI | パキシル パロキセチン | 14h |
SSRI | ルボックス デプロメール | 8.9h |
SSRI | ジェイゾロフト セルトラリン | 22-24h |
SSRI | レクサプロ | 24.6-27.7h |
SNRI | トレドミン ミルナシプラン | 8.2h |
SNRI | サインバルタ | 10.6h |
SNRI | イフェクサー | 9.3h |
NaSSA | リフレックス レメロン | 32h |
その他 | デジレル レスリン | 6-7h |
その他 | ドグマチール スルピリド | 8h |
ここで分かる「半減期の短さ」に加えて「作用が強い」SSRIやSNRIが離脱症状を生じやすい抗うつ剤という事になります。
具体的に言うと「パキシル(一般名:パロキセチン)」は離脱症状が多めの抗うつ剤になります。また「サインバルタ(デュロキセチン)」もパキシルほどではありませんが離脱症状はやや多いと感じます。
まとめ -ジェイゾロフトの離脱症状―
- 離脱症状は、ジェイゾロフトの血中濃度が急に変化したことに身体が対応できない事で生じる
- 離脱症状はSSRI、SNRIに多く認められ、三環系抗うつ剤でも時折認められる
- 離脱症状は「作用の強い」「作用時間の短い(半減期)」抗うつ剤で生じやすい
- 内服の自己中断が原因の離脱症状は、内服を再開すればすぐに改善する
- 経過をそのままみる場合には2か月~6か月つづくこともある
- 減薬の過程で離脱症状が出現した際は、減薬を延期したり、減薬ペースを緩めたり、他剤に切り替えるなどの方法が有効である
- 離脱症状は抗うつ剤の副作用であり、病気が再発・悪化したわけではない
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