エビリファイ(アリピプラゾール)の効果と副作用。双極性障害やうつ病への適応について

エビリファイの特徴

エビリファイ錠(一般名:アリピプラゾール)は2006年に大塚製薬から発売された抗精神病薬(統合失調症の治療薬)です。

ただしその効果は統合失調症のみにとどまらず、ドーパミンを適切にコントロールするそのユニークな作用から統合失調症以外にも使用され、双極性障害やうつ病、最近では自閉症スペクトラム障害での易刺激性に対して使用されます。

様々な病態に対する使用感、副作用、離脱症状などについて解説します。


エビリファイの効果と特徴

適応疾患

エビリファイの適応疾患としては以下のものがあります。
いわゆる精神科領域の3大疾患いずれにも適応があります。

エビリファイの適応疾患

  1. 統合失調症
  2. 双極性障害における躁症状の改善
  3. うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
  4. 自閉症スペクトラム障害での易刺激性

エビリファイは、脳のドーパミン量が多すぎる時は少なくし、ドーパミン量が少なすぎる時には多くしてくれるというドパミンの調整をしてくれるお薬です(ドパミン・システム・スタビライザーといいます)。

そのため、様々な疾患に用いることが出来るのです。

よく「エビリファイが処方されたのですが、私は統合失調症なのですか?」と聞かれますが、エビリファイはこのように精神科の3大疾患いずれにも有効ですから、「エビリファイ=統合失調症」ではありません。

「統合失調症はドーパミンの過剰がひとつの原因である」と考えられていますので、統合失調症に対してエビリファイはドーパミン量を適正に抑えて少なくしてくれます。

双極性障害の躁状態も、ドーパミンが多すぎることが関与していると考えられているため、エビリファイがドーパミン量を適正にコントロールしてくれるのです。

統合失調症、双極性障害の躁状態に有効

ドーパミンの異常によって起こると考えられている統合失調症の陽性症状(幻聴や妄想など)、陰性症状(うつ症状、感情鈍麻)を改善します。

双極性障害の躁症状に対しては、統合失調症に対する作用機序と同様に、過剰なドーパミン神経系をコントロールすることで効果を示します。

エビリファイは世界の各種ガイドラインにおいて双極性障害の躁症状の第一選択薬として推奨されている薬剤です。

エビリファイはドーパミン量を安定させるお薬

エビリファイの作用機序はDopamine System Stabilizer(DSS)といって、ドーパミン量を安定させるお薬です。

これゆえ、統合失調症以外にも様々な病態に効果を発揮します。

また、DPA(Dopamine Partial Agonist:ドーパミン部分作動薬)と呼ばれる事もあります。

ドーパミンが多い時は減らして少ない時は増やすと、部分的に作用するという意味になります。

他の抗精神病薬が一方的にドーパミンをブロックするだけなのに対して、エビリファイは調整する作用を持っているのです。

他の抗精神病薬における位置づけ、作用機序の詳細はこちら

エビリファイのよくある副作用

エビリファイのよくある副作用に関しては、承認時の臨床試験データでは以下のような結果になっています。


  • アカシジア:28.1%
  • 体重増加:10.1%
  • 振戦:9.4%
  • 傾眠:9.0%
  • 不眠:7.3%
  • 便秘:5.6%


アカシジア

アカシジアと聞くとピンと来ないかもしれませんが、「静座不能症」とも言われ、足がむずむずしてじっとしていられなくなるという副作用です。

エビリファイの特徴としてアカシジアを起こしやすい点が挙げられます。

足がむずむずして落ち着かないため、貧乏ゆすりのように足を動かしたり足ふみしていたり、ウロウロと歩き回ってしまうようになります。

また足のむずむずとともに、不安、焦り、イライラ、そわそわ、不眠などの症状が出現することもあります。
一見、精神症状のように見えますが、とにかく足がむずむずする点において精神症状とは異なります。

また精神症状なのかアカシジアなのかは、お薬が関連しているかで区別が可能です。

アカシジアの多くは投薬・増薬をして数日以内に出現するため、あるお薬を始めてから症状が出たのであればアカシジアの可能性が高くなります。

アカシジアへの対処法
  • エビリファイを減薬する
  • 他の抗精神病薬に変薬する
  • 副作用止めのお薬を使う

体重変化「太るの?痩せるの?」

結論から言えば、たしかに太ることはあります。
そして、エビリファイで痩せるという事はほとんど経験しません。

絶対に太るわけではありません。

体重が変わらないという事も珍しい事ではありませんし、体重が増えたとしてもほとんどの場合、軽度にとどまると考えてよいでしょう。

一般に、ほとんどの抗精神病薬は副作用として太ります。

ただエビリファイはその程度は他の抗精神病薬と比べると軽度なのが特徴なのです。

基本的に抗精神病薬は太る!最悪の場合「糖尿病」に!

抗精神病薬で太るのは、主に抗ヒスタミン作用と代謝抑制作用が原因だと考えられています。

神経伝達物質「ヒスタミン」には食欲を抑えるはたらきがありますが、このヒスタミンがお薬によってブロックされてしまうと、食欲を抑える働きが弱まって過食傾向になるのです。

また同時に代謝を落とす方向に作用して、同じ量だけ食べていたとしても太りやすい体質になってしまうのです。

さらに、血糖値を上げて糖尿病を引き起こしたり、脂質を上げて高脂血症を引き起こす原因にもなります。

ただしエビリファイは抗ヒスタミン作用やその他太りやすい作用(セロトニン2c受容体ブロック作用など)が弱く、抗精神病薬の中でも太りにくいのが特徴です。

添付文書に体重減少の記載があるけれど痩せないの?

確かに服用中に痩せたという方はいます。
しかしそれは多くの場合以下の状況で起こります。

一つは他の抗精神病薬からエビリファイに切り替えた場合です。
この場合、他の抗精神病薬の方がエビリファイよりも相対的に体重増加の程度が強いため、切り替えた事で体重増加の程度が弱まり、体重が減少するということはよく経験します。

もう一つは副作用によって吐き気や食欲低下、下痢によって一時的に痩せた例です。

このように特殊な状況下で一時的に痩せることはあります。

太ってしまった時の対処法 

基本的に、エビリファイ服用中は太りやすい方向に作用しますので、以前と同じ量を食べていても太ってしまうことがあるのです。

食事量に気を付けつつ、落ちた代謝を取り戻すのに適度な運動は重要です。

その上で以下のような対処法が有効です。

減薬する

ただし、減薬したからと言って元の体重に戻るわけではありません。

お薬を変える

エビリファイは抗精神病薬の中では太りにくいお薬ですので、他の抗精神病薬に変更しても改善は得られない可能性もあります。

「太りにくい」という観点で見れば候補に挙がるのは、SDAのパリペリドン(商品名インヴェガ)、ペロスピロン(商品名:ルーラン)、ブロナンセリン(一般名ロナセン)です。

手の震え(振戦)などの錐体外路症状(EPS)


錐体外路症状:5%以上

錐体外路症状すいたいがいろしょうじょうとは、身体が勝手に動いてしまう症状を言います。

振戦(手先のふるえ)
筋強直(筋肉が硬く、動かしずらくなる)
アカシジア(足がムズムズしてじっとしてられなくなる)
ジスキネジア(手足が勝手に動いてしまう)

実は、アカシジアも錐体外路症状の1つですが、エビリファイでは頻度が高いため先に取り上げました。

身体は、全身の筋肉の絶妙なバランスをとって調整しています(じっと止まる動作は実は無意識に脳が頑張って行っている)。その筋肉の調整の命令をしているのはもちろん脳で、そこに神経伝達物質「ドーパミン」が関連しています。

エビリファイによってドーパミンを減らす方向に調整されてしまうと、その絶妙なバランスが取れなくなってじっとしていられない症状が出てくるのです。

エビリファイはドーパミン・システム・スタビライザーですから少なくなりすぎれば上げる方向に自動調整はしてくれるので錐体外路症状は起こりにくいとされていますが、アカシジアや振戦はときに認められます。

これらの副作用が生じた場合は、まずはエビリファイの減薬が試みられます。

病状的にどうしても減薬ができない、というケースでは、他の非定型抗精神病薬への変更も検討されます。

エビリファイも錐体外路症状を起こしにくいお薬ですが、他に錐体外路症状を起こしにくい抗精神病薬にはMARTA(商品名セロクエル、ジプレキサ)が挙げられます。

抗コリン薬と呼ばれるお薬で、錐体外路症状の副作用を改善させることができます。そのためエビリファイと一緒に処方されていることも多いのが抗コリン薬というお薬です。

ただし、お薬によって起こった副作用をお薬で治す、というのはあまり推奨されている方法ではありません。


<錐体外路症状に有効な抗コリン薬>

  • ビペリデン(商品名アキネトン)
  • プロフェナミン(商品名パーキン)
  • トキヘキシフェニジル(商品名アーテン)

抗コリン薬によってアセチルコリン神経の活性を抑制してあげると、ドーパミン神経の活性が相対的に上がります。するとドーパミン濃度が増えるため、錐体外路症状に効果があります。

お薬の量がどんどん増えてしまいますし、抗コリン薬にだって別の副作用があるからです。

眠気で日常生活に支障が出ることも

眠気:5%以上

エビリファイで眠気を起こすことはあります。

抗精神病薬はすべて眠気を起こすのですが、ただ、その中でエビリファイは眠気を起こしにくい方ではあるのです。

なぜ眠気を起こすの?

花粉症やアレルギーで処方されるお薬に「抗ヒスタミン薬」と呼ばれるものがあります。
抗精神病薬にも神経伝達物質「ヒスタミン」をブロックする作用があり、アレルギー薬を飲んだときのように眠くなってしまうのです。

また、α1受容体遮断作用という、アドレナリンに関連した神経をブロックする作用も眠気の原因となることがあります。

エビリファイは抗ヒスタミン作用・α1受容体遮断作用がとても弱く、このために他の抗精神病薬に比べ眠気は起こしにくくはあるのです。

眠気が出たらどう対処する?

・・・様子を見る
飲み初めの場合には、1-2週間で身体が慣れて眠気が改善することがあります。

内服時間を変更する

意外に有効な手です。

エビリファイは添付文書には以下の記載があります。

  • 統合失調症は1日1~2回の服用
  • 双極性障害、うつ病・うつ状態は1日1回の服用

エビリファイは半減期(血中濃度が半分になるまでにかかる時間)が61時間と長く、実は1日1回服用でも血中濃度はそこまで下がりにくいのです。

そのため、眠気を軽くするなら1日1回眠前もしくは夕食後を提案することがあります。
血中濃度のピークは3.5~4時間後にくると報告されているため、寝る前にエビリファイを服用すれば、一番眠くなる時にはちょうど睡眠時間になります。

量を調整する

エビリファイは以下の用量で開始します(いずれも1日1~2回に分けて服薬)。


  • 統合失調症へは、1日6~12mg(最大30mg)
  • 双極性障害の躁症状の改善には、1日12~24mg(最大30mg)
  • うつ病・うつ状態には、1日3mg(最大15mg)

用法通り少量から開始しても強い眠気が出てしまう事はあります。

この場合、量を調整することが有効です。
主治医の先生には相談するか、難しければ必ず事後に報告するようにしましょう。

例えばエビリファイ1日3mgから開始して眠気が強すぎるのであれば、1日1.5mgに割ってみてもいいでしょう。

1~2週間様子をみてから3mgに戻せば眠気の程度も軽くなります。

不眠になることも・・・

不眠:5%以上

特にエビリファイの開始初期で起こりやすい副作用です。

エビリファイは


  • 鎮静力が弱い
  • ドーパミン受容体を部分刺激することでドーパミン量を調整する

という特徴があります。

病態が落ち着いていない段階で、十分な鎮静がかからなかったり、飲み初め初期にドーパミン受容体を刺激してドーパミンを増やしてしまうことで、かえって精神状態を不安定にしてしまうことがあります。

飲み初めはかえって、そわそわして不安感が強まったり、不眠になったりすることがあるのですが、多くは自然と改善していきます。

他の抗精神病薬とエビリファイの副作用比較

エビリファイの副作用を見てきました。
最後に、他の抗精神病薬と比べた副作用の比較をしてみましょう。

他と比べて少ないのがわかると思います。

抗精神病薬EPS
高PRL血症
体重増加ふらつき性機能障害眠気便秘・口渇
リスパダール
(SDA)
+++++++++±
インヴェガ
(SDA)
++±
ロナセン
(SDA)
+++±±±±
ルーラン
(SDA)
++±
ジプレキサ
(MARTA)
+++++++++++++++++
セロクエル
(MARTA)
++++++++++++
シクレスト
(MARTA)
++±
エビリファイ
(DSS)
++±±±
レキサルティ
(SDAM)
±±±±
セレネース
(定型)
++++++++++
コントミン
(定型)
+++++++++++++++++++++++
*EPS・・・錐体外路症状
*高PRL・・・高プロラクチン血症

エビリファイの減薬・断薬と離脱症状

お薬を減薬したり断薬した時に生じる様々な症状を「離脱症状」といいます。

エビリファイは離脱症状を起こしやすいお薬ではありませんが、急な減薬や断薬を行うことで生じる可能性はあります。

そもそも離脱症状は、以下の条件によって発生しやすくなります。


  • 効果・作用が強い
  • 半減期が短い
  • 服薬期間が長い
  • 服薬量が多い

エビリファイは効果も穏やかであり、半減期も約60時間と非常に長いため、離脱症状を起こすことは稀です。

服薬期間が長く、服薬量も多いとそれだけお薬が身体に慣れているため、お薬が無くなった時の反動が大きくなります。

症状の種類

エビリファイを急激に減薬・断薬した場合、ドーパミンやセロトニンの濃度が変化することによって以下のような症状を起こすことがあります。

エビリファイの離脱症状に特異的な症状ではありません。


  • 精神不安定(不安・ソワソワ、イライラ)
  • 消化器症状(吐き気・下痢・腹痛など)
  • 不眠
  • 興奮
  • 発汗

対処法

原則、離脱症状が疑われたら一旦減薬・断薬前の量に戻します。

急な断薬・減薬が離脱症状の原因ですから、量を元に戻せばすぐに離脱症状は治ります。

自己判断せずに減薬・断薬は必ず主治医と相談して行いましょう。

医師の指示の元でも離脱症状を起こすことはあります。
この場合よりゆっくり減薬したり、持続注射剤に切り替えてやめていくのも有効です。

エビリファイのうつ病に対する有効性「増強療法について」

エビリファイは、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)に対して使用されていますが、実は「うつ病・うつ状態」に対しても効果を認めます。

エビリファイは統合失調症のお薬というイメージが強く「うつ病なのになぜエビリファイが処方されたのでしょうか?統合失調症なのでしょうか?」と聞かれることがよくあります。

エビリファイは2006年に発売され、2013年に「うつ病・うつ状態」に対しての適応が認められました。

ただし、抗うつ薬のようにすべてのうつ病・うつ状態に処方されるわけではありません。

うつ病におけるエビリファイの位置づけ

添付文書でみる「効能/効果」

うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)又はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)等による適切な治療を行っても、十分な効果が認められない場合に限り、本剤を併用して投与すること。

添付文書の記載の通り、「既存治療で充分な効果が認められない場合に限って」使用することが出来るという位置づけです。

既存治療というのは、SSRIやSNRI、NaSSAといった第一選択の抗うつ剤による治療です。最初からエビリファイを使うことは認められていませんし、あまり有効ではないでしょう。

また、うつ病にエビリファイを使用するときは単独ではなく、抗うつ剤に対してエビリファイを「併用」することが原則になります。

うつ病・うつ状態におけるエビリファイの位置づけというのは、抗うつ剤で効果が不十分であった時に追加を検討する「増強療法」のお薬ということになります。

エビリファイをうつ病に処方するのはどんな時?

基本的にエビリファイは、うつ病に対して最初から用いるお薬ではありません。

作用機序も添付文書上でも不明とされていますが、たしかに有効な例が多いのです。

エビリファイをうつ病に用いる判断は、公式には作用機序は不明のため医師によってそれぞれ考え方があります。

「こういったうつ病にはエビリファイが効く!」と決まったものはありませんが経験的なものを紹介します。

Ⅰ.増強療法として

うつ病に対しての薬物療法を行う場合は抗うつ剤から始めるのが原則です。

しかし、抗うつ剤をいくつか試してみても十分な効果が得られない場合もあります。

この場合、「増強療法(Augmentation therapy)」と言って、抗うつ剤に少量の抗精神病薬や気分安定薬、甲状腺ホルモン剤などを併用する方法があります。

エビリファイは抗精神病薬ですので、この増強療法に使われます。 

Ⅱ.快楽・楽しみに対する効果を期待して

エビリファイの特徴は「ドーパミンを調整する作用がある」ことです。

脳のドーパミンが少ない部位ではドーパミンを増やしてくれ、ドーパミンが多い部位ではドーパミンを減らしてくれます。

うつ病で楽しみを感じられない状況では、脳のドーパミンが少なくなっていると考えられますから、エビリファイはドーパミンを増やす方向に働いてくれるでしょう。 

非定型うつ病・新型うつ病に対して

非定型うつ病や「新型うつ病」と呼ばれる疾患は、一般的なうつ病と比べてセロトニンよりドーパミン系の問題が大きいと考えられています。

実際にこれらのうつ病にはSSRIなどのセロトニン系を増やすお薬があまり効果がないことが昔から知られています。

第一選択の抗うつ剤は主にセロトニンに作用しますがドーパミン系に作用するお薬というのは少ないのです。

そこで補完するようにエビリファイは主にドーパミンに作用して抗うつ剤に反応しにくいタイプの抗うつ薬に作用するのです。

双極性障害や統合失調症の疑いもある例に

「最初は一見落ち込んでいて、うつ病のように見えていたけど、経過中に急に躁状態になって双極性障害が疑われる」

診断が変わったかのように見えますが、このように最初はうつ病のように見えつつ実は双極性障害のうつ状態だった、など紛らわしいケース、あいまいな例は多々存在します。

エビリファイは使用する用量によって、統合失調症・双極性障害・うつ病に対してそれぞれ効果を認めますので、診断ははっきりと確定できない場合に有効性を示すことがあります。

自閉症スペクトラム(発達障害)に対する使用は衝動性のコントロールに

自閉スペクトラム症の患者数は約10万人おり、かんしゃく、攻撃性、自傷行為などの行動障害(易刺激性)を示すことがあります。

治療は行動療法が行われますが実際これだけでコントロールすることは難しい例もあり、行動障害については、神経伝達物質ドーパミンが関連していることがわかっています。

2009年に米国で「エビリファイ」が小児自閉症スペクトラム障害への承認を取得し、その流れを受けて日本でも2016年に承認されたのです。

有効なのは、衝動性をコントロールできないという症状に対してであることがポイントです。

自閉症スペクトラムとADHDは併存(合併)することがあり、実際にはいわゆる発達障害の中で衝動性が認められる例に有効です。

このお薬が登場してから、子供の成長過程の範疇ととらえられられるものに過剰診断されている例、処方されている例が見受けられます。

さらに発達障害かもと自己判断してこのお薬を飲んだらどうかと考える方もいらっしゃいます。

普通の人・健康な人が飲むとどうなりますか?

まれに「普通の人が飲んでも良いか?」聞かれます。

エビリファイの添付文書「効能・効果」にある「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」を意識して、「大人の発達障害」に対して有効かどうかということです。

結論からいうと、普通の人に処方している例は多々あると思っています。

精神科・心療内科に来院する方の中で、病名が確実に診断されないまま出されている例はかなりあります。

その中に、うつ病でも統合失調症でもない俗にいう「大人の発達障害」と言われる正常圏にある方がエビリファイを処方されているのです。

実際、ほとんど効果がない例、怒りは静まったとおっしゃる方、眠くて困るという方様々です。

まず普通の人が飲んでもほぼ効果はないばかりか、副作用が目立つことの方が多いです。
何らかの効果があったとしても、私はプラセボ効果が大きいと思っています。

エビリファイの半減期

半減期とは、お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、効果時間・作用時間を知るひとつの目安になります。

エビリファイは、服薬してから3.5~4時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約61時間と報告されています。

エビリファイの添付文書には、半減期について次のように書かれています。

エビリファイ6mgを空腹時に単回投与した時の半減期:約61時間
エビリファイ3mgを食後1回、14日間投与を続けた時の半減期:約64.59時間

エビリファイの半減期は2日以上と長く、1日1回の投与でも十分に効果が持続します。

抗精神病薬半減期(h)
リスパダール
(SDA)
4h
インヴェガ
(SDA)
20h
ロナセン
(SDA)
12h
ルーラン
(SDA)
2h
ジプレキサ
(MARTA)
28.5h
セロクエル
(MARTA)
3.5-6h
シクレスト
(MARTA)
17h
エビリファイ
(DSS)
61h
レキサルティ
(SDAM)
53-67h
セレネース
(定型)
24h
コントミン
(定型)
2.5h

エビリファイの剤型と薬価

エビリファイは錠剤をはじめ、OD(口腔内崩壊錠)、散剤(粉薬)、液剤、持効性注射剤と様々な種類があります。

剤型によって大きな効果の差は認めないため、剤型は「飲みやすさ」を基準に選択します。

内用液は頓服・頓用としてよく使用されていますが、「内用液の方が即効性がある」と誤解されている方もいます。

液体の方が早く吸収されそうだからという感覚からでしょうか、薬物動態的にはそんなことはありません。

錠剤・散剤・OD錠・液剤のどれも同じような血中濃度の推移をたどります。

どの剤型であっても服薬してから3~4時間くらいで血中濃度が最大となり、半減期は約60時間程度です。

剤型によるメリット・デメリット

OD錠(口腔内崩壊錠)

OD錠とはOrally Disintegrating Tablet(口腔内崩壊錠)のことで、唾液で容易に溶けて飲み込みやすい仕様です。

【メリット】
・水がなくても服用できる
・24mg錠がある(通常錠剤は最大12mg錠まで)

【デメリット】
・溶けやすく作られているため、もろい
・他の錠剤と一緒に一包化してもらうことが出来ない
・溶けるため、味を感じやすい。苦手な味であった場合イヤがる方も

エビリファイ散(粉薬)

粉薬ですので、量を細かく調整できます。

エビリファイで細かい調整が必要になることは少ないのですが、お薬を少しずつ減らしていきたい時、例えば依存性のあるお薬で離脱症状が出ないように少しずつ減らしたい場合などで、粉薬はとても役立ちます。

【メリット】
・安い
・微細な調節がしやすい

【デメリット】
・服薬に手間がかかる

エビリファイ内用液

液体のお薬で一包ずつ包装されています。

それゆえ薬価が高く、日常用というよりは主に頓服として使用されます。

オレンジっぽい味がしますが、味的には飲みやすくはないです。

【メリット】
・水が不要
・手軽に飲める(飲ませることができる)
・すぐ効きそうな印象がある(実際は他剤型と同じ)

【デメリット】
・薬価が高い
・パッケージになっている
・一包化できない

エビリファイ持続性注射剤

エビリファイには注射剤があります。
肩かお尻に1カ月に1度、左右を入れ替えたりしながら筋肉注射します。

エビリファイ持続性注射剤は飲み忘れがなくなり、副作用も少な目です。
減薬時にも徐々に血中濃度が下がることから離脱症状のリスクが減ります。

 <メリット>
服薬忘れがなくなる
副作用が軽減する
減薬での身体の負担が少ない

 <デメリット>
注射しなければならない
薬価が高い

エビリファイの薬価

  • エビリファイ錠1mg:29.5円/錠
  • エビリファイ錠・OD錠 3mg:66.9円/錠
  • エビリファイ錠・OD錠 6mg:127.3円/錠
  • エビリファイ錠・OD錠 12mg:241.1円/錠
  • エビリファイOD錠24mg :499.2円/錠
  • エビリファイ散1%:136.4円/g
  • エビリファイ内用液0.1%:66.60円/包
  • エビリファイ持続性水懸筋注用300mg:37266円
  • エビリファイ持続性水懸筋注用300mgシリンジ:37275円
  • エビリファイ持続性水懸筋注用400mg:45156円
  • エビリファイ持続性水懸筋注用400mgシリンジ:45155円

エビリファイのジェネリック医薬品(後発品)

エビリファイの後発品は、先発品の特許が切れた2017年に「アリピプラゾール」として多数の製薬会社から販売されています。

最大の特徴「薬価が安い!」

例えばよく使用されるエビリファイ6mg錠は127.3円、12mg錠なら241.1円ですが、ジェネリック(アリピプラゾール)なら6mg:42.2円、12mg:55.5円と半値以下です。

薬効、副作用に関して微妙に違う

またジェネリック医薬品(アリピプラゾール)は、先発品(エビリファイ)と同じように試験をクリアしていますが、コーティング剤が異なり、個人レベルではエビリファイからアリピプラゾールに変えることで副作用や薬効に微妙に差が出ることがあります。

また、アリピプラゾールの適応は「統合失調症」のみで、「双極性障害」「うつ病」「小児の自閉症スペクトラム障害」への使用は公式には承認されていません(もちろん有効ですが保険適応してはいけません)。

剤型も豊富なラインナップがある

先発品で存在する剤型はほとんどカバーしています。

逆に液体のお薬は、先発品「エビリファイ内用液」は0.1% 1ml(1mg)しかないのですが、後発品「アリピプラゾール内用液」には0.1% 3ml/6ml/12mlが存在します。

エビリファイの注射剤はまだ後発品が存在していません。

抗精神病薬における位置づけ

エビリファイはさまざまな病態に効果がありますが、もともと抗精神病薬というのは統合失調症に対するお薬です。

抗精神病薬には多くの種類があります。その中でエビリファイはどのような位置づけになっているのでしょうか。

まず、抗精神病薬は大きく「第1世代」と「第2世代」に分けることができます。第1世代というのは「定型」抗精神病薬とも呼ばれており、従来の抗精神病薬を指します。

第2世代というのは「非定型」とも呼ばれており、最近の抗精神病薬を指します。
エビリファイは通常、第二世代の非定型抗精神病薬に該当します。

第1世代として代表的なものは、セレネース(一般名:ハロペリドール)やコントミン(一般名:クロルプロマジン)などです。これらは1950年代頃から使われている古いおくすりで、強力な効果を持ちますが、副作用も強力です。

特に錐体外路症状と呼ばれる神経症状の出現頻度が多く、これは当時大きな問題となっていました。また、悪性症候群や重篤な不整脈など命に関わる副作用が起こってしまうこともあったのです。

そこで、副作用の改善を目的に開発されたのが第2世代の抗精神病薬です。

第2世代は第1世代と同程度の効果を保ちながら、副作用を少なくすることに成功したお薬です。

第2世代として代表的なものが、SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)であるリスパダール(一般名:リスペリドン)やMARTA(多元受容体作用抗精神病薬)と呼ばれるジプレキサ(一般名:オランザピン)、DSS(ドーパミン部分作動薬)と呼ばれるエビリファイ(一般名:アリピプラゾール)などです。

現在では、まずは副作用の少ない第2世代から使用することがほとんどであり、第1世代を使う頻度は少なくなっています。

第1世代が使われるのは、第2世代がどうしても効かないなど、やむをえないケースに限られます。

第二世代の非定型抗精神病薬

非定型抗精神病薬


SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)
【該当薬物】リスパダール、ロナセン、ルーラン
【メリット】幻覚・妄想を抑える力に優れる
【デメリット】錐体外路症状、高プロラクチン血症が多め(定型よりは少ない)


MARTA(多元受容体作用抗精神病薬)
【該当薬物】ジプレキサ、セロクエル、クロザピン
【メリット】幻覚妄想を抑える力はやや落ちるが、鎮静効果、催眠効果、抗うつ効果などに優れる
【デメリット】太りやすい、眠気が出やすい、血糖が上がるため糖尿病の人には使えない


DSS(ドーパミン部分作動薬)
【該当薬物】エビリファイ
【メリット】上記2つに比べると穏やかな効きだが、副作用も全体的に少ない
【デメリット】アカシジアがやや多め


エビリファイ以外の非定型抗精神病薬は全て、ドーパミン受容体をブロックすることが主なはたらきです。

しかし、エビリファイはドーパミン量を適正化するお薬ということで、他の抗精神病薬とは作用機序が異なります。

そのため第3世代の抗精神病薬とよばれる事もあります。

エビリファイの作用機序はDopamine System Stabilizer(DSS)といって、ドーパミン量を安定させるお薬です。

これゆえ、統合失調症以外にも様々な病態に効果を発揮します。

また、DPA(Dopamine Partial Agonist:ドーパミン部分作動薬)と呼ばれる事もあります。

ドーパミンが多い時は減らして少ない時は増やすと、部分的に作用するという意味になります。

ドーパミン調整役として新薬「レキサルティ」登場

同じくドーパミン調整薬として、まだ統合失調症に対してのみの承認ですが「レキサルティ(一般名:ブレクスビプラゾール)」が2018年4月に、エビリファイと同じく大塚製薬から発売されました。

レキサルティのエビリファイとの違いは、エビリファイに比べて強力なセロトニン系への作用を示すところにあります。

体重増加、高脂血症や糖尿病などの代謝性障害やアカシジアを含む錐体外路系症状の軽減、陽性症状・陰性症状・認知機能障害を改善することが期待されています。

おそらく今後、新たな適応疾患が増えてくることでしょう。

【参考】エビリファイの作用機序の詳細

抗精神病薬はドーパミンはたらきを遮断(ブロック)するのが主なはたらきです。具体的にはドーパミンが作用する部位である「ドーパミン受容体」をブロックすることで、ドーパミンがはたらけないようにします。どの抗精神病薬もこのはたらきを持っています。

統合失調症は脳のドーパミンが過剰に放出されることが原因だという説があり、これは「ドーパミン仮説」と呼ばれています。ほとんどの抗精神病薬はこのドーパミン仮説に基づき、ドーパミンの放出量を抑えるはたらきを持ちます。

しかしエビリファイは抗精神病薬の中で唯一、ドーパミンをブロックするのではなくドーパミン量が適正になるように調整するといった作用を持ちます。つまり、ドーパミン量が過剰な時にはブロックし、ドーパミン量が少なすぎる時には反対にドーパミンの分泌を促すというはたらきを持っているのです。

これは非常に画期的な作用機序です。

なぜこんなことが可能なのでしょうか。

ちょっと専門的な話になりますが、エビリファイはドーパミンを出す神経のシナプス前部という部分のドーパミン受容体には作動薬としてはたらく一方で、ドーパミンを受け取る神経のシナプス後部という部分のドーパミン受容体では、ドーパミンが多いと遮断薬としてはたらいてドーパミンが少なければ作動薬としてはたらくという非常に面白い作用をするからです。

その他にエビリファイは、


  • セロトニン1A受容体作動・・・抗うつ作用
  • セロトニン2A受容体遮断作用・・・錐体外路症状の改善、陰性症状の改善

などのはたらきを持っています。

また、他の抗精神病薬は、これらの作用以外にもヒスタミン受容体、アドレナリン受容体、アセチルコリン受容体など様々な受容体に作用しますが、エビリファイはドーパミン受容体と一部のセロトニン受容体のみに選択的に作用します。

そのため、余計な副作用が出にくいのです。他の抗精神病薬は、様々な受容体にも作用してしまいますが、これは


  • ヒスタミン1受容体のブロック:体重増加、眠気
  • アドレナリン受容体のブロック:ふらつき、性機能障害
  • アセチルコリン受容体:口渇、便秘、尿閉

  • などを起こすため、主に副作用として患者さんを困らせてしまいます。

    しかしエビリファイはDSSという種類に属し、ドーパミン受容体・セロトニン受容体に対する選択性が高いため、これらの副作用が起こりにくいのです。

    これは「副作用が少ない」と良い反面で、抗ヒスタミン作用がないため、眠気や鎮静が起こらず、興奮している患者さんには効果が乏しかったりというデメリットにもなることもあります。